夢の決心
一週間過ぎてもソウは帰って来なかった。
「ユメちゃん、私、ソウを迎えにいこうと思うの」
ユリが迎えに行くと言い出した。いまのユリなら可能だと思う。でも、私は同行できない。
「私はもう結界から出られないにゃ」
「そうよね。でもだからこそ、早く通常に戻るためにもソウを連れ戻さないと」
ユリは、最大の問題をまだ知らない。
「ユリ、ソウがどこにいるか知ってるのにゃ?」
「全くわからないわ」
私の口から話して良いのか、本当は、ソウから話すべきだけれど、そのソウがいないのだからどうにもなら無い。なるべくユリが傷つかないことを願いながら話すことにした。
「案内人に聞くと良いと思うにゃ。ユリ、私の記憶がある内に言うにゃ。ソウはユリが大好きにゃ。決してユリを騙すつもりがあった訳じゃないのにゃ」
「うん? なんのこと?」
私も向こうの事情に詳しいわけではない。
真実を告げるには、情報が足りない。
「この国のトップとして、案内人に聞くと良いにゃ」
「良くわからないけど、わかったわ」
ソウは、私に、国のトップには言っても問題ないと話していた。なら、ユリも聞く権利があるはず。
ユリは、ソウの同僚らしい案内人に話を聞くことにしたらしい。
子供の成りをした私が同席していたのに、咎められなかった。つまり私の正体を知っていたと言うことだ。
案内人は、ユリの質問に最初はうまくかわしていたけれど、そのうち観念したのか、「ソウを恨まないでやってくれ」と言ってから話し始めた。
ソウは、向こうで拘束状態なのだろうと案内人は言っていた。この王国の扱いや、入植者の選定での重大な秘密を話してくれた。
どうやら、文化レベルが低いことのみ把握していて、ユリたちは、本当に実験の被験者だったようだ。
私はここがどこにあるか知っているけど、ソウ以外、正確には場所すら把握できていないようで、なのに、外との連絡手段だけはあったらしい。
衛星回線で、月に1度程度、連絡が繋がる日があるそうで、ソウがいない間も報告だけはしていたそうだ。
ユリはやはりショックを受け落ち込んでしまった。ユリにしてみれば、ソウに騙されていたわけだ。国家ぐるみのプロジェクトだったとは言え、ソウに騙されるとは思わなかったのだろう。
ソウはユリを騙すつもりだったわけではないことは、私は知っているけど、いまユリに言っても、聞き入れられるものではないと思う。
「初代様、花野さんを頼みます」
案内人は、私に挨拶をして帰っていった。
「ユリ、案内人帰ったにゃ」
ユリは顔をあげ、私を見た。
私に癒しが使えれば、ユリの泣き顔を直してあげられるのにと思い、ユリを抱き締めた。
しばらく動かなかったユリが、急に立ち上がり、力強く宣言した。
「ソウを迎えに行く!」
「ユリ、大丈夫にゃ?」
「もう大丈夫。ユメちゃん、ユメちゃんが知っていたのは、この国のトップだったからなのね」
「そうだにゃ。ソウは、守秘義務があって話せないって言ってたにゃ。ソウはユリが一番大事なのにゃ。それだけは信じるのにゃ」
「ユメちゃん、ありがとう! 頑張ってくるわ!」
ユリの瞳に力が戻っていた。




