夢の覚悟
ユリはすでにご飯の用意をしておいたらしく、最後の客が帰るのと同時に店に鶏丼やコーンスープをリラと一緒に持ってきた。
ソウとマーレイが帰ってきたけど、マーレイは元気がなかった。
どうしたんだろう?何かあったのかな?
「片付けは下げるだけにして食べてしまいましょう」
ユリが声をかけ、みんな食べ始めると、まずはコーンスープから飲んでみた。
思った以上に美味しい!これはおかわりをしないと!そう思って、席をたつと、リラも同じようにスープの器を持っていた。
リラと二人でおかわりを取りに行き、戻ってくるとイリスがユリに話をしていた。
「ユリ様、大根のビール漬けを販売してほしいと言うかたが数人いらっしゃいました」
「私も言われたにゃ!」
ユリに伝えないとと思ってたんだ。
ユリはその場でマーレイに注文をしていた。
「マーレイさん、蘿蔔って、注文できますか?」
「可能だと思いますが、クリサンセマムが来るのはMの日になると思います」
「あー、更に持ってくるのはその次の週なのね」
「はい」
「ユリ、どのくらい要るの?」
ユリが悩んでいるとソウがどうにかするらしく聞いていた。
「ユメちゃんとイリスさん、どのくらいの人から言われたの?」
「5人くらいにゃ」
「8人くらいです」
「あれ、切る前の状態を売ったら売れると思う?」
「売れると思うにゃ!」「売れると思います!」
イリスと返事が被った。
美味しかったし、評判も良いし、絶対に売れると思う。
「現在の漬物桶で漬けられるのはせいぜい大根4~5本です。足りないのは、桶とビールです。大根1本は1キロ前後あって、大根1キロにつき、ビール70ml必要です」
「桶もう2つとビールと大根10本くらい用意すれば良い?」
「粉の洋辛子もお願いします」
「今行って、注文してくるよ。マーレイ休み明けに受け取ってくれ」
「かしこまりました」
ソウとマーレイで用意してくれるみたいで安心した。ソウはそのまま部屋に戻って、大根を持って戻ってきた。まるで部屋にあったかのような早さだった。
「同時に漬けても困ると思って、先に4本もらってきた。未払いだけど、ここまで届に来るって言ってたから、払っておいてくれる? あと、パウンドケーキいくつかほしいって」
「あ、ありがとう」
受け取ったユリはすぐに加工するらしく、リラと一緒に半分に切っていた。私も手伝おうとしたら、ソウから呼ばれた。
「ユメ、ちょっと」
「なんにゃ?」
わざわざ2階に行って話があるらしい。
「ユメ、午前中、あちこち回ってきたんだ。イリスやメイプルの子供みたいなの、いっぱい居るらしい」
「にゃ!?」
「ユメは最後の月って言っていたけど、1か月後じゃ間に合わないんじゃないのか?」
「あの森は、月の最初の日にしか入り口が開かないのにゃ。行けば早くて当日、帰れなければ1か月後になるのにゃ。ユリにまだ何も言ってないのにゃ」
「貴族でも歴史を勉強している者は、すぐに帰れないと知っているんだろ? 話題に上がっているらしいぞ」
「私の時は、1か月かかったのにゃ。私的には1日だったのにゃ」
「5日後の来月の1日に行くつもりにした方が良いだろ?」
「そうだにゃ。ユリに話すにゃ」
「マーレイには俺から全部話すよ」
急いで厨房へ行くと、リラからユリが聞かれている最中だった。少し遅かったらしい。
「・・・お客さんから聞いたって、お店休みになるんですか?」
「ん? 何の事?」
「リラ、あとで話すにゃ。ユリちょっと来てほしいにゃ」
「え、うん」
リラに聞こえないようにユリと一緒に2階に戻った。
「ユリ、どうしてもついてくるって言ってくれてありがとにゃ。本当は、一月後の最後の月に行く予定だったのにゃ。でも、すでに不調が出てるのにゃ。メイプルの子供も、イリスもその影響だと思うのにゃ。予定より一月早く、来週の1日に出発するにゃ。一般に知られている参加者は、ソウだけなのにゃ。ユリはソウがいない間は里帰りしていることにするのにゃ」
「うん? 日帰りじゃないの?」
「日帰りにゃ。参加者的にはにゃ。待っている人は、1日かもしれないし、1週間かもしれないし、1か月かもしれないのにゃ」
「どういうこと?」
「ユリに分かりやすくいうなら、時空が歪んでるのにゃ」
「そうなのね。なら、なおさらついていくわ。待っているなんて性に合わないもの」
「私はユリと一緒にいるとリラには言うにゃ」
「わかったわ」
厨房へ行き、ユリがリラに説明した。
「リラちゃん、私も知らなくてごめんなさい。ソウが国の仕事で遠出するらしくて、その間私は里帰りすることになるらしいの。来月から予定では1週間だけど、ソウの仕事が終わって迎えに来てもらえないと私は戻ってこられないからね。その間なにか希望はある?」
「1週間お休みの予定ですか?」
「その予定よ」
「ユリ様がいなくてもお店に来て本を見たり勉強しても良いですか?」
「構わないわよ。1週間だけ、パープル侯爵邸の厨房に修行にでも行く?うちで色々覚えると、火加減が覚えられないでしょ?」
「明日行って、自分で料理長さんに頼んでみます」
「わかったわ。もし長引いて戻ってこないようなことがあれば、ここにある材料は何でも使って良いからね」
「え、戻ってくるんですよね?」
「戻ってくるわよ!もしもの話!」
「ユメちゃんはどうするんですか?」
「ユリと一緒にいるにゃ!」
「ユリ様・・・」
イリスが心配そうに見に来た。あー、午前中、イリスはこの事でうろたえていたんだな。
「さあ、もうお客さん来てるから張り切らないとね!」
「はい!」




