夢の辛味
黒猫クッキーがいっぱい売れてしまい、残りが少なくなった。ユリに作ってもらおうと思い、厨房へいったらユリはいなかった。
「ユリはどこにいったにゃ?」
「ユリ様は粉を作りにいきました」
「粉にゃ?」
「はい」
「黒猫クッキー作ってもらいたかったのにゃ」
「私が作っておきます」
「リラ、頼むにゃ!よろしくにゃ!」
リラが作っておいてくれれば、ユリが焼いてくれるだろう。私は安心して任せたけど、何度か厨房に顔を出しても、ユリは戻ってきていなかった。
「ユリまだ戻らないにゃ?」
「ユリ様はまだ戻ってきてないです。クッキーは今焼いていますよ」
「リラ、焼けるのにゃ!?」
「はい。朝、リラの華も自分で焼きました!」
「リラ、凄いのにゃ!」
「凄いのは、オーブンかな。ユリ様が教えてくれた通りの数字に合わせるだけで、きれいに焼けました」
「リラは偉いのにゃ!」
「ユメちゃん、ありがとうございます!」
お店に戻り、少しするとユリから呼ばれた。
「ユメちゃん、クロ猫ッカンお願いできる?」
「わかったにゃ」
ユリはお店に残るらしく、入れ替わりになった。
「ユメちゃん、黒猫クッキーもうすぐ焼けると思います。クロ猫ッカン手伝いますか?」
「ありがとにゃ!お願いするにゃ」
リラにパイを伸してもらい、パイカッターで細かく切り分けた。
ユリが戻ってきて、リラにブラックスワンシューを頼んでいた。
リラはブラックスワンシューを作るので、手伝えなくなり、一人で作ることにした。
すぐにユリは店から呼ばれて戻っていった。
パイカッターで切ると、切り口がなみなみになる。
リラはブラックスワンシューをつくって、店に持っていき、すぐに戻ってきた。
黒猫型も作り、玉子を塗って、仕上げてから冷蔵庫にいれた。
「ユリ、できたにゃー」
「ユメちゃん、ありがとう! あ、そうだ、ユメちゃん、夕食、餃子作ったら食べる?」
何で?ランチのメニューは食べないの?
「餃子にゃ?何餃子にゃ?」
「え?焼き餃子の予定だけど、水餃子が良ければ変えるけど」
水餃子と、蒸し餃子しか食べたことがないけど、ユリが作るなら美味しいと思う。
「焼き餃子は食べたことがないにゃ食べてみたいにゃ」
「そうなの?」
「楽しみにしてるにゃ!」
ユリと場所を交代し、店に戻った。
しばらく普通にお店を見ていたら、再びユリが呼びに来た。
「ユメちゃん、餃子包むのやってみる?」
「少しだけ作ってみるにゃ!」
すぐに厨房へ行くと、イリスもあとからついてきた。
なんと!ソウが作っていた。
少し驚いた。
リラに作り方を教えてもらうと、意外とソウが上手なことに更に驚いた。
ユリがイリスにパウンドケーキの残りを聞きにきた。
リラから、簡単な方法と言うのを教わり、作ってみたけど、リラみたいに上手に包めなかった。
イリスは器用にすぐ覚え、5個くらい作ると、店に戻ってしまった。
私も頑張って、5個は作った。
ソウを見ると、10個くらい作ってあって、ソウもどこかへ戻るらしい。
「リラ、残りは頼んだ!」
「はーい。お父さんにも頼んで良いですか?」
「マーレイ、リラを手伝ってくれ!」
ソウがマーレイに頼み、階段を上がっていった。
「店に戻って、ユリと交代するにゃ!」
「はーい」
店に行くと、ユリがお客と話していたので少し待ってから声をかけた。
「戻ったのにゃ!」
お店は、ほとんど帰る人ばかりなので、片付けものをするくらいだった。
最後だろう客に生チョコを売り、冷蔵庫の生チョコは10個くらい残っていた。
店までユリが聞きにきた。
「ユメちゃん、ご飯どうする?ピビンパ丼を食べる?ビコールエクスプレスを食べてみる?」
びこー?もしかして昼間ユリが食べてたのかな?
「それ昼間のにゃ?」
「あ、そうそう。豚肉とシシトウのココナツミルク煮だった」
「少し食べてみて考えても良いにゃ?」
「一口サイズに作っておくから、食べられそうならおかわりしてね」
「ありがとにゃ!」
試したいことがユリに伝わったようで、少しだけだしてくれるらしい。
片付けながら厨房に行き、少しだけいれてもらった皿の中身を食べてみた。
あれ?ピーマン臭くない。
確かに、ピーマンの味がする気はするけど、苦味がなくて、臭くないから食べられるような気がする。
「今食べたのは食べられるにゃ。でもいっぱいは、判らないにゃ」
正直に言ってみた。
「半盛りにしておくからおかわりしたら良いわ」
「そうするにゃ!」
ご飯が揃うと、ユリが餃子の説明を始めた。
「さあ、食べましょう。餃子はね、醤油か、醤油とお酢か、醤油とラー油か、醤油とお酢とラー油か、醤油と柚子胡椒か、ポン酢か、ポン酢と柚子胡椒か、柚子胡椒のみか、まあ、好きなもので食べてください」
リラはユリにおすすめを聞いていたけど、私はどうしようかな。
水餃子と蒸し餃子は、酢とラー油で食べていた気がする。
ユリは、小皿を2枚ずつ配っていた。
「少しずつ作って色々試してみたら良いわ」
とりあえず、酢を皿に入れ、他はどうしようかなと考えていた。
「んー!柚子胡椒美味しくできてるわ!」
「売ってるのよりしょっぱくないな!」
「塩分ギリギリにしてるからね」
ユリとソウが先に食べ、柚子胡椒が美味しいと言っている。
リラと二人、目があった。
柚子胡椒を取らなかったのは、私たち二人だけなのだ。
イリスもマーレイも気に入ったらしく、誉めていた。
「少し食べてみるにゃ!」
「私も!」
リラも食べてみるらしい。
「少しだけつけると良いわよ」
ユリから瓶を渡されたので、少しだけとって、ものすごく少量を餃子につけ食べてみた。
「辛いけど、大丈夫にゃ!」
「ほんとだ!辛いけど、食べられるくらいだ!」
私とリラが食べられると言ったら、ユリがものすごく喜んでいた。




