夢の葡萄
今朝6時台に、昨日の分を投稿しておりますので、先にお読みいただけると幸いです。
木製容器の店につくと、店員の男性が出てきた。
ユリに話しかけていた人だ。
「ユリ・ハナノ様!ようこそいらっしゃいませ!」
「見学に参りました」
ユリは挨拶をしたあと、店にあるものを尋ねていた。
「これはなんですか?」
「それは、磨いただけの器です。他に、加工したものが色々ございます」
店内の柱に看板がついていた。
「ココナツ食器店」
あーココナツの器なんだ。
ユリは店員に案内されて色々説明されているようなので、好きに見て回ることにした。
ソウが横にいるから危険もないだろう。
螺鈿細工も扱っているらしく、装身具や食器も、キラキラしているものがたくさんある。
その中に、猫のシルエットが描いてある皿があった。
桜の花びらのような形で、キラキラな縁取りと、木と猫がデザインしてある。
欲しいな。買ってもらえるかな?
ユリを探した。店の奥で、店員と話しをしている。
「ユリ、この器買って良いにゃ?」
「ユメちゃんにお給料払うとなると物凄い金額だから、何買っても問題ないわよ?」
「お、螺鈿細工か!」
「猫の柄が素敵ねー」
買っても良いらしい。
ソウが尋ねてくれた。
「これはいくら?」
「こちらは国民旗のデザインで、10000☆でございます」
10000☆かぁ。結構するけど、これだけキラキラだからしょうがないかな。
「全部で61000☆かしら?」
「60000☆でございます」
再びソウが質問する。
「国民旗ってなに?」
私も知らない。
「王国旗は、四角い紺色の中に、白抜きのこんな形のその中に、金縁に緑色の世界樹様ですが、実際の国土は、長細いこの皿の形らしいです」
店員は、両手の親指と人差し指で、ハートの形を作りながら説明していた。
王国旗かぁ。私が決めた旗と、少し変わったのかな。
昔は幟のような縦長の旗だったはずだけど、そういえば、城には横長の旗が飾ってあったなぁ。
ユリがなにか交渉したあと、紙袋をうけとり、帰ることになった。
帰りは、自力で自分の部屋に転移した。
買ってもらったキラキラの器を飾り、少し眺めたあとリビングに行った。
ユリもソウもいなくて、下から声が聞こえる。
階段を降りると、ユリは何か作るらしく、秤と粉の入った袋を用意していた。
「ユリ、なに作ってるにゃ?」
「フレーバーをつけたラムネよ」
「ラムネにゃ! 手伝うにゃ!」
あのお菓子は、なんだかあとを引く。
「そう?なら、計量してもらえる?」
「任せるのにゃ!」
「粉糖50g、コーンスターチ10g、クエン酸小さじ1/4、重曹小さじ1/2、これを4回ね。重曹は混ぜないでね」
「わかったにゃ!」
この袋は粉糖だったのか。
クエン酸と重曹は、色違いの瓶に入っている。ユリが蓋に中身を書いてくれたので、間違うこともない。
ユリは何か煮ていた。良い匂いがする。
鍋の火を消してボールに移し、冷ますために氷水に浮かべていた。
私が量った粉糖の袋に、ユリは何かを入れていた。
「2g位かしらね・・・あ!ドバっと入っちゃった。うわー5g・・・。ま、取り除けないしこのまま作りましょ」
「ユリ大丈夫にゃ?」
「ちょっとイチゴが入りすぎちゃった」
珍しい。ユリが失敗してる。
袋のまま水分を入れて混ぜていた。
「うわー、水いれたらイチゴ色が濃くなった。真っ赤だわ」
「イチゴの色にゃ!美味しそうにゃ!」
「そう?ユメちゃんが美味しそうなら、それで良いわ」
袋の中身を網で濾してから、最後に重曹を混ぜて、袋を振っていた。
「丸くするのにゃー!」
「ソウに計量スプーンを用意してもらったから、有るわよ! はいどうぞ」
「ありがとにゃ!」
私がイチゴラムネを丸めている間、ユリはさっき煮ていたもので、ラムネの素を作っていた。
それを渡すと、次も煮ていた違う色のものでラムネの素を作っている。
4個目は、黄色い粒を、イチゴのように、袋の中で粉々にしていた。
袋を開けたら薫ったのでわかった。柚子らしい。
少し疲れて休んでいたら、ユリが柚子味は、型に入れて押していた。
ふと見ると、ブドウと言って渡された。ラムネが、明るいピンク色になっていた。
「ユリ、ブドウは何で、桃色にゃ?」
「え?紫色じゃない?・・・あ!重曹入れ忘れたかも!」
「食べられないにゃ?」
「シュワっとしないだけで、美味しいわよ」
「ならそのままで良いにゃ」
「せっかく量ってくれたのにごめんなさい」
食べられるなら問題ないかな。
「いつ食べられるにゃ?」
「明日、早くても今日の夜かしら」
「楽しみにゃ!」
また、リラに分けてやろうかな?
「ユリ、ちょっと良い?」
ユリは、ソウに呼ばれていた。
ユリがそばに行くと、オーブンを設置していた人が、ソウに何か言っていた。
「ソウ君、ちゃんと紹介してくれるかな?」
ソウは少し嫌そうな顔をしたあと、仕方ないと言わんばかりの紹介をしていた。
「ユリ、こちら、何でも屋のカナデ・サエキ、こちらマッドサイエンティストのリツ・イトウ」
マッドサイエンティストって職業なの?
その後、本人たちが自己紹介していた。
ソウはあまりユリと話させたくないんだろうなぁ。と思い、何か食べさせたら良いかなと思って、お茶の用意をした。
「ユリ、これ出すにゃ?」
「ユメちゃんありがとう!」
予想通り、ユリのパウンドケーキを食べると、その美味しさに黙って食べ出した。
ソウが私だけに見えるように、片手をあげて感謝を表していた。
でも、パウンドケーキが欲しいと言って、通うようになったら、御免なのだ。




