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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇女王ユメ◇

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夢の呼出

揚げ物を売るなら昼休みから作っていそうだなぁと思いながら早めに戻ってみた。

リラもイリスも同じように思ったらしく、早く来ていた。


ユリがおやつメニューの書いたものを見ながら説明してくれた。


「お持ち帰りはセットをおすすめしてください。単品も作りますが、その場合割り引きしません。持帰り袋は8個が限界のサイズです」

「同じのを8個欲しいと言ったら、割引無しで売れば良いのにゃ?」

「その通りです」



今日のメニューは、飲み物が凄く多い。その中にココアの文字を見つけ、少し懐かしくなった。

時間になり、店に行くと、まずは焼売とタマゴサンドと柿プリンの注文ばかりだった。

焼売はユリが皿にのせてくれたのを運ぶだけなので、忙しさもない。


最初の注文がだし終わる頃、ユリから声をかけられた。


「手が空いたら、ココアがあるわ」


リラがココアを知らなかったようなので、作るだろうとは思っていたけど、みんなの分も作ってくれたらしい。

お店が落ち着いたので厨房へ行くと、ココアを手渡された。


「ホットココアよ。正確には、ホットミルクココアね」


飲んでみると予想の味と少し違って、こくがあるというか、旨味が濃い。

不思議だなぁと思いながら、熱いので少ししか飲めずにいた。


「ユリ、これココアにゃ?なんか知ってるココアより美味しいにゃ」

「ミルクが入っているからかしらね?」


ミルクが入っているだけで、こんなに違うの?

そもそもなにか違うものなのかなぁ。


ユリに聞かれ、イリスが売れ行きを話していた。

確かに、今のところ、サーターアンダギーは売れていない。

イリスは飲み終わらないうちに店にいってしまったので、私も熱くて飲めないココアをおいて店に戻った。


「黒猫様、ハナノ様の新しいお菓子は美味しいですか?」

「新しいは、サーターアンダギーにゃ?」

「それです!名前難しいですね」

「美味しかったにゃ。冬箱無しで大丈夫にゃ」

「あ!そうですね。ならセットをお願いします。食べてみます」

「持ってくるのにゃ」


イリスも注文を受けたようで、皿に盛っていた。

作っていた一皿を分けてもらい、客に持って行った。

出すと、食べ方に困ったらしく、こっちを見るので、手に持って噛るなり、割って食べるなり好きなように食べたら良いと説明した。


「なにこれ、パウンドケーキとはまた違って、なんだか旨い。あーなにか飲み物がほしいな」

「なにかお持ちしますか?」


イリスが声をかけていた。


「おすすめはどれ?」

「先程、初めて飲みましたが、『ホットココア』というのが、娘が言うには、チョコアイスクリームの味だそうです。大変美味しかったです」

「なんだと!リラちゃんが言うチョコアイスクリーム味の飲み物があるのか! 是非それを頼む!」

「こっちも、よろしく!」「こちらもだ!」


同時にしゃべるので、聞き取れない。


「頼む人は手を挙げるのにゃ!」


私では見渡せないので、イリスが見渡すと、全員だった。


「注文して参ります。少々お待ち下さい」


イリスが注文を通しに行った。

ユリとリラが驚いていたそうだ。


少しして出来上がり、声がかかったので、イリスと手分けして運んだ。


「本当だ!チョコアイスクリームの味だ!」

「チョコアイスクリームが、ココア味なのにゃ」

「そうなんですか?」

「本物のチョコはもっと美味しいのにゃ」

「それは何時(いつ)か食べられるのですか?」

「ユリは作ると言っていたにゃ」

「楽しみに待ってますね。とりあえず、このお菓子の持帰りを先に頼んだ方が良いですよね?」

「揚げるから先だと助かると思うにゃ」


聞こえていたらしい回りからも注文をされた。

10セットだの、15セットだの、大口注文が多い。

イリスが集計し、まとめて注文を通してくれるらしい。


微妙に在庫で足りなかったようで、ユリが慌てていたらしく、イリスが心配していた。


「ユメちゃん、どのくらいのペースで何個くらいできるのでしょうか?」

「鍋1個で、1時間に100個くらいって言ってたにゃ。鍋3個で作るから300個だと思うにゃ」

「それを越えないように注文を受ければ良いですね」

「越えたら待たせれば良いのにゃ」


イリスと相談していると、唯一サーターアンダギーを頼まなかった客から声をかけられた。


「すまないが、預けた冬箱を持ってきてもらえるかね」

「わかったにゃ」


返事をすると、黒猫様?と呟いているのが聞こえた。


厨房に取りに行くと、リラが渡してくれた。


「ユメちゃん、これです」


重たい冬箱を持って店に行くと、イリスが会計していてくれたらしく、渡すとすぐに帰っていった。


「ユメちゃん、重かったですよね、気がつかなくてすみません」

「大丈夫にゃ」

「今の、柿プリンが32個入っていたそうです」

「32個にゃ。重いわけにゃ」

「歯が悪くて固いものが召し上がれないとお話しされていました」

「それで、柿プリンだけなのにゃ」

「お店でも、玉子サンドと、玉子スープと、柿プリンと、ココアでした」

「サーターアンダギーは、見た目ほど固くないけど、固そうに見えるのにゃ」

「そうですね。固そうに見えますよね」


客がキョロキョロしているのでそばに行くと質問された。


「黒猫様、甘くなくて、このお菓子に合うのはどれですか?」

「にゃー。ホットミルクか、紅茶が良いと思うにゃ」

「ホットミルクか。ならそれを4人分ください」

「待ってるのにゃ」


厨房に行き、ユリが忙しそうだなぁと思ったが、聞いてみた。


「ユリ、ホットミルクできるにゃ?」

「はい。いくつ要るの?」

「4つにゃ」

「ホットミルク4つ、了解です」


鍋で牛乳を温めて、すぐに作ってくれた。

こぼさないように運んで客に出した。


「ホットミルクなんて、久しぶりだなぁ」

「久しぶりなのにゃ?」

「子供の頃、寝る前に飲んで以来です」


そういうのがあるのか。

子供の頃、寝る前に何か飲んだ記憶はないなぁ。


ココアやホットミルクの注文が結構頻繁で、ユリが忙しそうなのが目に見えてわかるようになってきた。


「イリス、厨房忙しそうにゃ」

「ユメちゃんが厨房を手伝うなら、私はお店を頑張りますよ」

「ユリに声をかけられたら、イリス、頼むのにゃ」

「はい」


少しして、飲み物を取りに行ったとき、限界だったらしいユリから頼まれた。


「ユメちゃん、ほんの少しで良いからこっち入って、生地丸めてもらえないかしら?」

「わかったにゃ。イリスに言ってくるにゃ」


注文の飲み物を出したあと、イリスに店を頼んだ。


「ユリに頼まれたから、少し手伝ってくるにゃ」

「はい。お店頑張ります!」


しばらく手伝ったあと、店の客の入れ替わりでイリスが大変そうなので、店に戻ることにした。


代わりにソウでも呼んでおこう。


『お店忙しくてユリが大変そうなのにゃー!』


以心伝心を飛ばした。これでそのうち帰ってくるだろう。


持帰り用のサーターアンダギーを取りに行くと、ソウが戻ってきていた。

予想より早く戻ってきたので、今日は暇だったのだろうと思う。


少し冷たくなったココアを飲んでいると、ユリはソウとマーレイにもココアを出したらしく、ソウが「マシュマロ」と言って遠い目をしていた。

マシュマロをどうするんだろう?


柿プリンも持帰りが多いけど、サーターアンダギーは、ほとんどの人が持ち帰るから、袋が足りなくなるんじゃないかと心配になる程だった。


焼売がすべて売り切れ、柿プリンも残りわずかとなり、お店の最後の客が最後の注文をした。

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