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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇女王ユメ◇

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夢の薬味

馬車がお店に近づいて気がついた。

あまり揺れなくなった。


そうか、この辺は整地してあるから揺れないのか。

パープル邸に向かう方向は、すべて整地してあるので気にしなかったけれど、これは凄いことだ。

ソウが指示したのだろうか?


お店に到着して馬車を降りると、リラが、馬車が違うと荷馬車も揺れないんですねと言っていた。

なるほど、あれでも揺れない方なのか。


先に到着していたソウの馬車は、すでに荷を下ろしていた。

ユリが、借りていたらしい冬箱に何か入れて持ってきていた。


食事に誘われた花梨花たちは、帰りが遅くなるからと断っていた。

馬車を置いて、人だけ送ってもよかったのだけど、道を覚える目的なのだからと思って、そのまま帰した。



「ご飯みんなで食べましょうか?」

「手伝います!」「お手伝い致します!」


ユリが声をかけると、リラが名乗り出ていた。

マーレイも名乗り出ていたけど、ユリに断られていた。


「マーレイさんは、今日一番仕事したんだから、休んでください」

「作るのは参加しませんがお手伝いします!」


マーレイを見たイリスが代わりにと名乗り出て、マーレイが座り直していた。


「何か手伝う?」

「大根おろし、各種薬味のみじん切り、どれが良い?」

「全部やっておくよ」


ソウも手伝うらしいので、一緒にすることにした。


「なにすれば良いにゃ?」

「大根おろし、生姜すり下ろし、大葉と茗荷は千切り、小ネギは小口切りかな」

「大根おろすにゃ」

「オー頼んだ。俺、畑から持ってくる」

「にゃ?」

「大根以外畑に有るぞ?」

「一緒に見に行くにゃ!」


ソウと畑に見に行くと、大葉と、小ネギはすぐ見つかったけど、生姜と茗荷はわからなかった。

ソウが何かを引っこ抜くと、下に生姜がくっついていた。

あと茗荷は?


西側に回り、月桂樹のそばに置いてある大きなプランターに、さっき引き抜いた生姜に少し似た葉っぱが生えていた。

それをよけると、茗荷があった。

そばまで見に行くと、ちょこんと土から生えていた。

黄色の花も咲いていた。


「何でこれだけ植木鉢にゃ?」

「畑に植えると、増えすぎるらしいよ」

「ビックリにゃ」


野菜としては見たことがあるものも、生えている所は見たことがないものなんだなと思った。


厨房に戻り、生姜や茗荷をよく洗って、ソウに渡した。

予定通り、大根をすりおろし、そのままのおろし器で受け皿だけ変え、生姜もすりおろした。

ソウが、大葉と茗荷と小ネギを切っていた。


なんか良い匂いがする。お腹が空いたー。


イリスが皿を用意していたので、ユリがすぐに盛り付けていた。

みんなで席につき、食べ始めた。


「あちらで説明していた刺身の食べ方ですが、生の魚のなかでも鰹はハードルが高いので、無理しないでください。食べてみたいならどうぞ」


マーレイとイリスは、やはり生魚は厳しいようで、全く手を出さなかった。なのに、リラは食べるらしい。

さすがに皿に少量をとっていた。

皿4つ分に、ソウが大根おろしなどの薬味を盛り付けてくれた。


席を立ったユリが、小皿にマヨネーズと醤油を入れ渡してくれた。


「生臭みが消えるから一切れだけ食べてみると良いわ」

「試してみるにゃ」


ユリがすすめるのだから試してみようと思い、一切れ食べてみた。


「本当にゃ!鰹の血の味がわからないにゃ!」

「サラダのマヨネーズに鰹の刺身を落としてしまった漁師のかたが発見した食べ方らしいわよ」


ユリは本当に色々よく知っている。


「鮪の赤身食べてるみたいにゃ」

「そんな感じよね」


食べやすいけど、鰹らしさは無くなっちゃうなぁ。


「ユリ様!私も食べてみて良いですか?」

「どうぞ。醤油と生姜も、醤油とマヨネーズも、全部試してみたら良いわ」


リラはマヨネーズを取りに行ったらしい。

本当にリラはチャレンジャーだ。


「さあさあ、マーレイさんとイリスさんは、唐揚げと、かき揚げを食べましょう。唐揚げはそのままか、マヨネーズをつけて、かき揚げは、この温かい天つゆにつけて食べてみてくださいね」

「すみません・・・」

「なぜ謝るの? 苦手なものをわざわざ食べる必要はないわ。食事は美味しく楽しく食べるものよ」


ユリはいつも言う。

食事は美味しく食べるものだって。

嫌いなものは無理して食べなくても良いと言う。

でも、無駄にするのはよしとしないので、工夫して食べやすいようにするのが、私の仕事なのよ!って。

そんなことを言う人は、今まで居なかった。

好き嫌いをせず食べなさいと、不味いだなんてわがままだと、そう言われてきた。だからピーマンを避けてくれたとき、衝撃的だった。



「かき揚げ旨いなぁ。ホタテと何が入ってるの?」

「今日は、玉ねぎと茗荷と三つ葉ね。三つ葉は大根と一緒にもらったのよ」

「あれ?三つ葉?あんまりわからないな?」

「ソウが苦手なのは、生の三つ葉だと思うわ。お吸い物のときは食べていたもの」


へぇ、ソウは、火を通した三つ葉は食べられるのか。

ピーマンも違う料理なら食べられるものもあるのかなぁ。



マーレイとイリスがかき揚げを食べたらしく、美味しいと感激していた。

鰹の唐揚げも食べやすかったらしく、たくさん食べていた。


あれだけ望んだリラは、まだ鰹の乗っけ盛りを食べていなかった。

どうして食べないんだろうと見ていると、ユリが声をかけていた。


「リラちゃん、それもらってあげるから、好きなものを乗せて食べたら良いわ」

「はい!ありがとうございます」


自分で乗っけ盛りを作ったリラは、小ネギを乗せなかった。どうやら苦手らしい。

ソウが、苦笑いしていた。大根おろしの次に多いのが小ネギだった。


「なんかよくわからないけど、色々な味がして美味しかった!」

「食べられるなら好きなだけどうぞ」


リラ凄いな。刺身いけるんだ。しかも鰹からだ。

ぜひ、寿司を食べさせたいなぁ。


リラが食べているので、マーレイとイリスも少しだけ試したようだけど、無理矢理飲み込んでいるのがわかって少し気の毒だった。

すぐに、唐揚げを食べて口直しをしていた。

かき揚げは美味しくて、すでに食べ終わっていたらしい。


みんなが食べ終わり、ユリが蜜柑をたくさん渡していた。

リラがすごく喜んでいた。

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