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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇女王ユメ◇

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夢の技術

「お詫びに、なにか持っていってくれ、なにか希望はないか?」

「お刺身の(さく)はありますか?」


ユリは刺身を食べたいのかな?

なにか白身とか有ると良いな。


「刺身か、(かつお)が少しあったかな?」


鰹かぁ。


「大根も少しわけてもらえますか?」

「鰹を大根と食べるのか?」


大根どうするんだろう?


「大根おろしと、大葉と、茗荷と、生姜と、小ネギをのせて、ポン酢醤油をかけて食べると美味しいのです」


それは知らないや。食べたことないけど、新しい料理なのかなぁ?

ユメが知らないだけで、カワイツバサの時代にもあった食べ方である。


ユリはポン酢醤油の作り方を説明していた。

鍋物と、おろしハンバーグにかける以外にも使い方があったんだなぁ。


「本当に料理人なんだな」

「あはは。他に、マヨネーズが良いんだけど、さすがにここで作るのは無理そうかな」


マヨネーズ?鰹に?


「それはなんだ?」

「なんにでも合う調味料のようなものですが、鰹の血生臭さがわからなくなります」


そうなの?

刺身にマヨネーズは、少し気持ち悪い気がするんだけど、私の時代にはなかった食べ方だと思うなぁ。

確かに、カワイツバサの時代には、あまり一般的な食べ方ではなかったので、知る人ぞ知る食べ方だった。


「百合さん!教えてください!」


桜子がユリに何か頼み込んでいた。


「マヨネーズですか?」

「はい。私、鰹の血の味が苦手で・・・」

「うーん。口頭で言っても、まず つくれなくて・・・」


パープルの所の料理人でさえ、実地指導するまでできなかったらしいからな。


「何を用意したらできますか?」

「卵黄1個、酢15ml、食用油150ml、塩少々と、泡立て器が必要です」

「全部あります!」


作る気満々らしい。


「ユリ様、私教えます!」


リラが名乗り出た。


「リラです!ユリ様の弟子です!」

「桜子です!リラちゃんお願いします!」


二人は、教えたい人と教わりたい人で目的が合ったらしい。


「では、教わりたい人にまとめて教えるので、場所と材料と道具を用意してください」

「はい!百合さんありがとうございます」

「花野さん、ありがとうございます」


柊も頭を下げていた。

ここで働いていて、苦手な魚があるのは大変なのだろう。

よし、協力してやろう!


「ユリとリラの道具持ってくるにゃ!」


転移して、ユリの泡立て器を取りに行った。

部屋に直接とび、厨房に行って揃えていると、ソウも来た。


「ユメ、持ちきれないだろう?」

「ボールと泡立て器と、あと何がいるにゃ?」

「ないかもしれないから、計量カップと計量スプーンも有った方が良いと思うぞ?」

「なるほどにゃー。なら、ソウに頼むにゃ。私はリラの実力がわかるように、クッキー見せるために持っていくにゃ」

「それが良いかもな」


ソウと転移で戻った。

建物の中は無理そうなので、入り口付近の人がいない場所にした。

建物に入り、早速クッキーを桜子に見せた。


「これは、リラが作ったのにゃ!」


桜子は、リラの華を見てとても驚いていた。

そのまま渡すにはユリにちゃんと聞いた方が良いよな?と思いユリに聞いてみた。


「ユリ、どうぞしても良いにゃ?」

「良いわよ」


ユリは笑顔で了解してくれたので、桜子に渡し、他の人たちには、黒猫クッキーを配った。

みんな、物凄く喜んでくれた。



移動することになってついていくと、花梨花がいて話しかけてきた。


「夢様、私にも黒猫クッキーをいただけませんでしょうか?」

「どうぞなのにゃ」

「ありがとうございます。家宝に致します」

「クッキーは、見たあとは食べるものなのにゃ」

「勿体のうございます」

「ユリの店に来れば売ってるのにゃ」

「成る程、かしこまりました。父上にお見せした後、食すことに致します」



集まったのは、すごい人数だったけど、参加するのは5人らしい。

私は花梨花と話ながら様子を見ていた。


ユリが全体に説明をして、リラが個人に教えていた。

ユリは余裕らしく、混ぜながら色々使い方の説明をしていたけど、混ぜている人はそれどころじゃないみたいで、メモを取っている人が数人いた。


「夢様、百合さんはよくしてくれますか?」

「ユリは優しいのにゃ。断っても最後までついてきてくれるのにゃ」

(わたくし)も、御供致しましょうか?」

「要らないにゃ。ソウが結界を張るにゃ。今回は成功すると思うにゃ」

「私に出来ることがございましたら何でも致しますので、どうかお声がけくださいませ」

「わかったにゃ」


疲れたのか、見学者の輪に声をかけている人がいた。


「誰か、代わってー」

「参加を希望した者は、最後まで責任をもちなさい」


花梨花が叱責すると、姿勢をただし再び頑張り始めた。


マヨネーズが出来上がると、胡瓜(きゅうり)が出てきて、みんなで食べてみることになったらしい。


「なにこれ!美味しい!」「旨ーい!」

「もっと頂戴!」「作る方に参加すれば良かったー!」


会場は大騒ぎで、みんなが喜んでいるようだった。


「参加したかった」


花梨花が呟いているのが聞こえた。


「作るのは大変だったけど、材料はすぐ揃いそうだからみんなも作ってみると良いわ!」


桜子が、騒ぎを納めていた。

提供していたマヨネーズを回収し、自分で持ってきた容器に詰め替え、自分で作ったものは、きれいな容器に詰めていた。

どうするのかと見ていたら、きれいな容器の方を花梨花に持ってきた。


「花梨花様、私が作ったものですが、よろしければお納めください」

「桜子さん、ありがとう!」


花梨花は、普段の威厳の有る態度ではなく、年相応の笑顔で受け取っていた。



「そうそう、七味唐辛子を混ぜたものを、お酒のつまみにつけて食べても美味しいですよ。炙ったあたりめとか」


ユリの何気ない発言に、それまで遠巻きで見ていた男衆が、騒ぎになっていた。

ユリに詰め寄り色々聞いたあげく、「うわー、参加すれば良かったー」と更に騒いでいた。


力仕事なんだから、むしろ何もなくても参加すればよかったのに。


色々ユリが受け取り、帰り支度をしていると、花梨花が話しかけてきた。


「百合さんのお店はどこに有るのですか?菊之助は見かけたことがないと申しておりましたが・・・」

「パープルのところから少し離れてるにゃ」

「場所を教えてくださいますか?」

「ついてきたら分かりやすいにゃ」


花梨花と菊之助もついてくることになった。

2台で走ったあと、パープル領に有る魔力ポイントに先に転移してもらい、そこからは花梨花の馬車に移った。面白がったリラもついて来たが、乗り心地の違いに驚いていた。


荷馬車としては、かなり揺れない方だったが、ソウの馬車に比べると、まるでおもちゃのようだった。

まあ、仕方ない。ソウの馬車は、未来の技術だ。


向こうの馬車を見ると、御者席にマーレイとイリスが仲良く座っていたので、客車はソウとユリだけのようだ。


こちらの馬車は、基本的には荷馬車なので、どこにいても、御者と話が出来る。

花梨花が、私とリラにユリの店でどんな料理が出るのかを聞いてきて、リラが一生懸命説明していた。


「美味しそうですね。今日は時間的に無理そうですが、そのうち食べに行きたいと思います」


菊之助が食べに来ると話していた。

あの店に女性客を見ないけど、花梨花は来られるのだろうか?


花梨花にそっと尋ねると、「もちろん男装して伺います!」と、とんでもない回答があった。


よし、ユリに黙っておこう。

たまにはユリを驚かすのも面白いと思う。

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