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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇女王ユメ◇

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夢の紙型

ユリとリラは集中して何かを作るらしい。

とりあえずタマゴサンドは作ってくれるけど、お店にはたぶんこられないと言っていた。


イリスと注文を聞いて回り、今日もシフォンケーキはよく売れていた。

三種盛りがあるのに、大きいシフォンケーキを三種類頼む人はあとをたたなかった。

みんなそんなにもシフォンケーキが食べたいのか?

そういう人は、マンゴープリンももれなく注文する。


注文されたものを取りに厨房へいったら、ものすごく玉ねぎ臭かった。よくこの中でユリやリラは平気だなぁと思いながら、シフォンケーキに生クリームをかけていたけど、そのうち目が痛くなってきた。


「目に染みるにゃー」


生クリームをかけ終わったので、急いで退避した。

これ以上あそこにいたら泣いてしまう。

他のものは取りに行くだけですむけど、シフォンケーキは生クリームをかけないといけないので、厨房に居る時間が長くかかる。


店に戻ると質問された。


「黒猫様、どのケーキがおすすめですか?」

「マンゴープリンがおすすめにゃ! シフォンケーキは、レモンがおすすめにゃ」

「それなら、マンゴープリンを二つお願いします」

「持ってくるにゃ」


急いで取りに行った。


「ユメ様、シフォンケーキは他の味もあるのですか?」

「他の味にゃ?」

「先日は野菜味だったと聞きました」

「ユリ言ってたにゃ。思い付くものなら大体ケーキにできるのにゃ」

「成る程!素晴らしいですね」


次々と質問されるけど、答えられるものは答えておこう。


「黒猫様、先日の、コーンクリームコロッケはいつ食べられそうですか?」

「ユリからは予定を聞いてないにゃ」

「ユリ・ハナノ様に直接伺わないとわからないのですね・・・」

「そのうち作るって言ってたにゃ」

「それがいつになるかわからないと、なかなか毎日は来られないのです」

「ユリ呼んでくるにゃ?今日は忙しいって言ってたのにゃ無理だったらごめんなのにゃ」

「はい。お願いします」


とりあえずユリに聞きに行ってみた。


「ユリ、何作ってるにゃ?」

「明日出す、クリームコロッケ各種よ」

「忙しいにゃ?」

「割りと忙しいわね。何かあった?」

「ユリが暇だったら話したい客が居るにゃ」

「世間話なら忙しいと断りたいけど」

「聞いておくにゃ」


店に戻って説明した。


「ユリ、やっぱり忙しそうにゃ。クリームコロッケを作ってたにゃ。明日売るのにゃ」

「おおー!」「明日なのか!?」「絶対来るぞ!」

「黒猫様、ありがとうございます!明日楽しみにしてます!」


気がすんだらしい。

数人から笑顔でお礼を言われた。


「黒猫様、鶏と野菜の炊き込みごはん、筑前煮、野菜スープをください」

「甘いものは要らないのにゃ?」

「あとで注文します!」

「炊き込みご飯と、筑前煮と、スープ持ってくるにゃ」


取りに行くと、野菜スープは朝飲んだスープだった。

これだったのか!


今日はホットサンドやポットパイを頼まれることなく、持ってくれば良いものばかり注文された。

午前中に残ったグラタンは、開始早々にイリスが注文されていたので、既に無い。

筑前煮もほとんど売り切れ、軽食は残らなかった。


お店が終わり厨房へ行ってもまだユリたちはクリームコロッケを作っていた。

いつのまにか、ソウとマーレイも手伝っていて、それでも終わらないみたいだった。


「私も手伝えるかしら?」

「形作るのは手伝えると思うにゃ」


イリスが手伝いたいみたいなので、洗い物を片付けたあと一緒にコロッケを手伝った。


形作りはほとんど終わっていて、衣をつける段階だったらしく、小麦粉、溶き卵、パン粉を用意したらユリに誉められた。


ユリはそれを二つに分け、少し作ったあと、片方のパン粉に刻んだパセリを加えていた。

そういえば、ユリの書いていたメモにそんなことが書いてあった。


ソウが粉をつけて、ユリが卵をつけて、私がパン粉をつけて、冷蔵庫にしまった。

リラが粉をつけて、マーレイが卵をつけて、イリスがパン粉をつけて冷蔵庫にしまっていた。

リラとマーレイは途中交代していたけど、他の人は交代しなかった。


みんなで作ったのでなんとか終わり、冷蔵庫がクリームコロッケでいっぱいになった。



夕飯はチキンカレーで、鶏肉が柔らかくてビックリした。骨がついてるのにどうやって食べるのかな?と心配したけど、要らない心配だった。


「今日はお疲れさまでした。クリームコロッケをみんなに手伝ってもらって本当に助かりました」

「面白かったにゃ!」

「あのプルプルを油で揚げると、トロッとするのですね。リラはもう作れるの?」


イリスはリラにきいていた。


「たぶん作れると思うよ、お母さん。でも家では油の温度が難しいかな」


イリスが、えー。といいながらショックを受けていて少し笑ってしまった。


「5種類も作るなんて、ユリは凄いよなー。2~3種類を複数作ると思ってたよ」

「え、・・・」


ソウがうっかり余計なことを言って、ユリが言葉に詰まっていた。気が付いたらしいソウが慌ててお弁当の話を始めた。


「ユリ、今日のお弁当、ものすごく美味しかった!仲間にもすごく好評だったよ!」

「それは良かったわ。店でも売れ過ぎて大変だったのよ」

「3(ぶん)の1を沢山売ったのにゃ」

「1/3?」

「大きいココットに入れてでも持って帰りたいと言われたのにゃ」

「へぇー。それで1/3なのか」


「何か、持ち帰りに適した容器ってないかしらね」

「紙製のどんぶり買ってこようか?」

「それ使っても良いの?」

「構わないよ。受け取った方も燃やして処分できるし、害にはならないよ」

「そう?」

「プラの蓋さえなければオーパーツにはならないだろう?」


大分無理がある気がするけど、ユリが納得したなら良いや。

それより明日のデザートはどうするんだろう?


「ユリ、明日のデザートはどうするにゃ?」

馬拉糕(マーラーカオ)と、肉まんを作ろうと思ってるわ」

「まーらーかお?」


リラが聞き返していた。


「んー、麻婆豆腐とか、九龍球とか、杏仁豆腐と同じ国の蒸しパンかしら」

「パンなんですか?」

「蒸しケーキかな。金額的に少し足りないからクルミでも乗せようかしらね」

「美味しそうにゃ!」


干しブドウが乗ったものは食べたことがある気がするけど、クルミはないと思う。


「食べ終わったら今日は解散しましょう。遅くまでありがとうございます」


ユリがみんなにお礼を言って、笑顔で解散した。



マーレイ一たちが帰ったあと、ソウがユリにシフォンケーキの型が届いたと話していた。

この後ナイフも揃えるらしい。

ソウは話すと2階に行った。


ユリはまだ何かするみたいなので、手伝えることはあるかな?と見ていた。


「ユメちゃんは戻らないの?」

「ユリはまだ何かするにゃ?」

「明日の用意を少し・・・」

「手伝うにゃ」


ユリは一瞬迷ったような顔をしたけど、すぐに笑顔になってお礼を言われた。


「ユメちゃん、ありがとう」

「ユリはもう少し人に頼るのにゃ」

「うん、頑張る」


頑張りすぎるのが問題なのに。


「頑張らない方向に、頑張るのにゃ」

「難しそうね。ふふふ」


やっと頼ってくれるようになったみたいだ。


「それで、何をするにゃ?」

「マーラーカオの型をね、作ろうかと思って」

「型を作るのにゃ?」


型って作れるの?


「昔マーラーカオを作っていたときは、ケーキの型を使ったり、ステンレスの裏ごし網を使ったり、大きい型で作っていたのよ。お店で出すのはそれでも良いけど、持ち帰る人が多そうだから、一人前サイズで作った方が良いと思ってね」

「どうやって作るにゃ?」

「ソウが買ってくる牛乳やジュースの紙パックを切って丸めて、ホッチキスで止めて輪にするだけよ」


一つ先に作ってもらい、真似して沢山作った。

本当にただの輪っかだった。


「これをどうするにゃ?」

「このまま蒸し器において、中に、食品用の剥離紙カップ入れて使うわ」


この大きさなら、大きいココットとあまり変わらないと思った。


「大きいココットはダメだったのにゃ?」

「作れなくはないけど、底が有る型だと蒸し上がりが軽くならないのよ」

「成る程にゃー」

「小さいものなら底があっても大丈夫なんだけどね。500☆相当だからね。上にクルミも乗せるの」


値段の兼ね合いは難しいなぁ。


「明日楽しみにしてるにゃ」

「ユメちゃん、どうもありがとう」


ユリと一緒に階段を上がった。

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