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第一話

1年生編から物語のスタートです

 入学式当日、式は当然だが何事もなく終了し最初のホームルームの時間になった。席は真ん中あたりの一番中途半端な位置で、当然だが前後左右知らないやつしかないない。

 自己紹介では無難なことを言ったつもりだったが少し引かれているようだ、正直に「好きなものはありません。嫌いなものは自分です」と答えただけなんだが。

 その後、教科書などを購入し、クラスでのレクリエーションなど最初の授業日までの予定を渡され解散した。



思えばあの時の自己紹介が今の結果を招いたのだろう。もうすぐ夏休み前の学園祭の準備に入るというのにいまだに友人と呼べるものはいない。運動神経は悪くないが部活には入っていないのも原因の一つだろう。

夏野君はなんか話しかけにくい雰囲気、というものができあがってしまった。今となっては仕方がないので今日は商店街の肉屋でコロッケを2つ買って帰った。



そんなこんなで学園祭の準備期間に入り、学校中がざわつき始めた。出し物の決まりは特にないが、1、2年生は出店や教室を利用したカフェなどで学園祭の雰囲気に慣れたり楽しんだりして3年生はダンスやバンドなど派手な思い出になるものをやる傾向がある、というかそういう暗黙のルールがあるようだ。

「学級委員の大野です。今日はカンナ祭の実行委員を決めたいと思います。」

学級委員の大野 悟、学年に数人いるイケメンでスポーツタイプのリーダーシップあふれる人間だ。他にも保健委員の西田 悠乃、美化委員の山中 祐、図書委員の上田 香奈、そして風紀委員の神田 美崎。なんか男女の別れ方がテンプレすぎるがこれが現実だったりする。

話が逸れたが、今から実行委員が決まる。おそらく、ノリがよいムードメーカー的な存在である青山あたりが・・・

「僕は夏野君を推薦しようと思っています」

は?

「どうかな、正直このまま1年生の間この空気で接するのもなんだし。やってくれないかな。」

すごい笑顔で言ってくれますけど大野君、俺に一番任せちゃいけないでしょその役職。最初の学園祭が最悪の結果になるよ?

「うん、いいと思うよ。夏野君ってあんまり会話しないけど要所要所で気が利くもの。」

神田さん、それは気のせいだと思う。

「そうそう、バスケとかサッカーでもパスが天才的だよな、となりの藤岡がサッカー部見学してくれないかなって言ってたぞ。」

青山君、君はそんな関係のないこと言ってないで立候補してください。あと藤岡って誰だよ。

「いやでも俺この学校というかこの辺の風習とか知らないし・・・」

「大丈夫、1年生は先輩にいろいろ聞いてやれば失敗することはないって聞いてるから。」

大野君のその自信はどこから湧いてくるのだろうか。結局俺の拒否権は行使する前に実行委員に決まった。自分を慰めるためにここに来た頃に入ったコンビニでたべる牧〇アイスを買った。どうやらこのコンビニチェーンにしか置いてないらしい。レジの若いお姉さんが俺を見て一瞬ぎょっとしていたが何だったのだろうか。


もみじ荘では月に決められたお金を追加で払えば夕食を作ってもらえる。もちろん東野さん一人では無理なので商店街などにお弁当を発注する、なので支払いは月初めで一か月単位となる。俺は自炊ができるので自分で作っている。そしてなぜかたまに東野さんが共用の台所で俺が作っているところに顔を出しに来る。学校で優雅にソロを満喫しているのを心配されているのだろうか。

「学校は楽しい?」

「まあ、今のところは普通ですかね。」

これと似たような会話を結構な頻度でしていたりする。なぜかというと、俺が学校をほぼ一人で過ごしていることをなぜか知っている(だろう)からだ。しかし、クラスのほとんどが地元の知り合いどうしだったり、他地方でも普通にコミュニケーションができるやつしかいない中で友達を作るほうが無理ってもんだ。だからそろそろ俺が作るタイミングに合わせて来なくていいですよ。

「これ、余りなんです。食べますか?」

「ありがとう」

いや、もしかするとこっちが目当てなのかも。



カンナ祭、カンナとは情熱や快活といった花言葉の花でこの学校の校章のデザインのもとにもなっているらしい。そんな学園祭の準備初日の放課後、実行委員会の初回の日に事は起きた。


「今年もみんなと一緒にカンナ祭を盛り上げていきましょう!」

実行委員会の委員長である2年の太田先輩の」挨拶が終わり、今年のメインイベントを決める会議へと移行する。

「みんなで意見を出し合って決めよう。1年生もどんどん意見を出してくれ。」

1年は5クラスあって、それぞれのクラスから2人の計10人の実行委員がいる。ちなみに俺のもう一人の役員は浅田 真由さんだ。

そしてテンプレのような意見の出し合いが始まった。どれもこれも安定している、誰もが想像できる、失敗するほうが難しいものばかり。

だから言った。

「意見いいですか。」

「おっ、1年生から意見が出るのか。いいね、いってくれ。」

事が起きた、否、俺が起こしていた。

「この中で過去のカンナ祭で出なかった意見ってありますか。」

空気が砕け散る音が静かに響き渡った

「出たことがあるのに今までやらなかったものは候補として書くだけ無駄だし、過去にやったものでもここ2年くらいのものならやっても2,3年生には意味のないものになる。意見を出す前にそのあたりを整理してからやったほうがいいと思いますよ。」

ここまで出たメインイベント案は、例えば『1,2年生学年合同演劇を一般にも公開』や『3年生にサプライズダンスパーティー』、『男女対抗クイズ大会』などいろいろある。しかしどれもこれも凡庸で、もしくは実現が難しいものだ。某テーマパークみたいなパレードとか出来るわけないだろ。

「いや、こういうのは意見を出すことにも意味があるもので・・・そうだ、君こそ意見はあるのか?」

「はい、もちろんです。題するなら・・・」



はい、終わったー。もうダメ。さんざんかっこつけた俺が悪いけどマジでどうしよう。

「題するなら『夏の定番料理クラス対抗試験』です」

採用されちゃうかぁ

「クラス別の対決で、それぞれの学年優勝者で総当たり戦とかやれるとさらにいいと思います。」

なんて細かいとこまで説明してんなよ過去の俺ぇ・・・。そして今日に限って出てこない東野さん、嫌味か。

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