三回目の「最初」
冬の終わり、中三の僕(夏野 廉太郎)は今住んでいる関西の田舎から離れるために関東の都会の私立高校を受験して無事に合格することができた。この前の卒業式は毎年恒例のように一部の後輩の不良が特攻服を着こみ軽い騒ぎになったが、教師たちもその対応には手慣れたもので卒業式自体は特に問題なく終了し、駅のロータリーで回りを眺めている。
「地元と比べるとすげー都会だな。駅の周りってビルがいっぱいあるほうが自然なんかな?」
新しい場所というものにはやっぱり、独り言が普通に口から出てくるくらいには過剰に反応してしまう。
「入学式まで数日あるしさっさと下宿先の荷物整理をして学校周辺をぶらついてみるか。」
それに知らない土地に来ると十中八九迷うから早めにこの呪いのような恒例イベントを消化しなくてはならないし。
最初の目的地である下宿先にはなんとか迷わずに到着した。その下宿先は学校が契約しているアパートの「もみじ荘」で、もう一つの女子用である「いちょう館」と道路を挟むようにして建っている。コンビニが近くて車の通りは少し多いけど、コインランドリーなど一人暮らしに助かるお店が近くに結構あるらしいのでかなりよい立地といえる。
「君が新しい住人の廉太郎君ね。私は〝東野 美穂〟って名前で、ここでもみじ荘といちょう館の管理人をしています。男子の新入生で下宿をするのは今のところ君一人だけだから、他のみんなは上級生だけになっちゃうけれど仲良くお願いしますね~。」
30代くらいの女性で穏やかな性格のようだ。
荷物の整理が終わって自分の部屋らしくなったところで同じ屋根の下の先輩方に挨拶をしようと思ったがどうやらみんな部活らしい、街に出て日々の買い物のための店の下調べにでもでよう。
迷った。ここがショッピングモールということはわかっているが俺は今どこにいる。なんでスーパーみたいに一階建てか高くても四,五階建てにしないんだ、いや理由はわかるからそれはいいや。
そうこうしているうちに30分ほど迷い、なんとか出口に到着した。よほどのことがない限り通りすがりに見つけた商店街で十分だろう。
帰りに寄ったコンビニで、働いているのがおばちゃんばっかりじゃなくて若い人が多いことに少し驚きと違和感を感じつつフライドチキンを一つ買った。
明日は入学式だ、次こそは悪い結果にならない選択をしよう。
最初は短いですが、次からは文字数増えます。