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塔の話

作者: 神水たゆら

北の方から、トンカラトンカラ音が聞こえてきた。

訪ねてみると一人の建築家が塔を建てている。

その塔は青い空にまっすぐ伸びていた。

なにを建てているのですか?と訪ねると、

結婚式をするための教会を建てているのです。と建築家は答えた。

国民の皆々が、幸せな人生の門出となるようなすばらしい建築を

建てたいと思っています。

まだまだ塔として未熟なそれは、スタンドグラスに太陽の灯を浴びながら上へ上へと伸びていた。



東の方から、トンカラトンカラ音が聞こえてきた。

訪ねてみると一人の建築家が塔を建てている。

その塔は青い空にまっすぐ伸びていた。

なにを建てているのですか?と訪ねると、

女が出産をするための病院を建てているのです。と建築家は答えた。

全てのこの世に生を受ける人間を最初に受け入れる、生まれたことを祝う、これからの人生を頑張って生きていける・・・そう思える建築を

建てたいと思っています。

まだまだ塔として未熟なそれは、白と淡い桃色を貴重とした外内装は全てを包みこむように上へ上へ伸びていた。



南の方から、トンカラトンカラ音が聞こえてきた。

訪ねてみると一人の建築家が塔を建てている。

その塔は青い空にまっすぐと伸びていた。

なに建てているのですか?と訪ねると、

ここは小中高一貫の学校です。と建築家は答えた。

生まれてきた子供たちには明るい未来があります。それらの可能性を最大限に引き出し、子供たちの未来に十分役立てるようなすばらしい学校になるように。そうなるような建築を建てたいと思っています。

まだまだ塔として未熟なそれは、ちょうど今時計台の大鐘が取り付けられるところだった。

鐘は太陽の光を反射し、時折心地よい音を響かせながら上へ上へと伸びていた。



西の方から、トンカラトンカラ音が聞こえてきた。

訪ねてみると一人の建築家が塔を建てている。

その塔は青い空にまっすぐと伸びていた。

なに建てているのですか?と訪ねると、

教会を建てています。と建築家は答えた。

人の死とは必ずに訪れるものです。生まれてきたからには必ず死が私たちの日常について回ります。そんな永遠の眠りを安らかに逝けるように、そんな建築を建てたいと思っています。

まだまだ塔として未熟なそれは、聖母の微笑みを受けながら上へ上へと伸びていた。



街の中央の方から、トンカラトンカラ音が聞こえてきた。

訪ねてみると一人の建築家が塔を建てている。

その塔は青い空にまっすぐと伸びていた。

なに建てているのですか?と訪ねると、

死刑囚を絞首刑に架けるための塔を建てています。と建築家は答えた。

罪人というものは、この世で消えることは消してない種です。

その者たちを戒めとして、国民全員の前で公開処刑します。

この街でもっとも盛り上がる場所になるように、

そんな建築を建てたいと思います。

まだまだ塔として未熟なそれは、絞首用の縄の太さを話合う声を受けながら上へ上へと伸びていた。






街のどこにいても

トンカラトンカラ音が聞こえる。


end 20100227

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