夜の入れ替わり
ここは…どこだ?
目の前を見ると、真っ暗な部屋の天井が見える。
とりあえず、電気をつけてみる。
すると、ぬいぐるみが置いてあったり、教科書や本や鞄などがきれいに並べてある机があったりする、いかにも女の子らしいような部屋にいた。
…ということは、僕は…。
女の子になっていた。
寝付けないなあーとか思いながら、ちょっと目を覚ます。
すると目の前には、裸でうろついている男性がたくさんいた。
私は思わず叫びそうになり、口をふさいで、目をぎゅっと閉じた。
何が…何が起こっているのだろうか。
まず、ここはどこで、自分が誰なのかをはっきりしたい。
近くに女子の制服があったので、生徒手帳をのぞいてみる。
<H市立K中学校 二年三組 真木美琴>
なるほど。
K中学か…。
僕もちなみに同じH市に住んでいて、中学校こそ離れているが、近しいと言えば近しいかもしれない。
とりあえず、親を探した。
部屋を出ると、それに感づいた母が出てきた。
「美琴!?まだ起きてたの!?明日早いんでしょ?早く寝なさい!」
そう言って、戻ってしまった。
この子、けっこう早寝なんだなあ。
しょうがない…とりあえずまた寝てみる。
ベットに入り、目を閉じた。
時刻は、九時四十一分であった。
私は、ずっと、目を閉じても寝付けなかった。
しかし、目を開けてはいられなかった。
自分についているこの肉体が耐え切れなかった。
落ち着け、美琴。
私はさっき寝たはずなんだ。
これはきっと夢だ。うん。
でも、こんなにはっきりとした明晰夢があるだろうか…。
私はとにかく意識をなくした。
起きたら、先ほどまでいたスーパー銭湯の中にいた。
なるほど、夢を見ていたのか。
父はサウナへ行っていて、一人で入っていたのだ。
そして、入る場所を変えた。
今度は、お湯が流れている椅子へ座った。
そしてまた、安心したのか、すとんと眠りに落ちた。
また、起きた。
さっきの夢は…少し恐かった。
しかし、消しておいた部屋の電気が点いていた。
電気をつけっぱにすることはまずないので、不審に思った。
部屋を見まわしてみる。
すると、異変に気付いた。
制服の中に入れてあった生徒手帳が、机上に出ていた。
お母さんでも入ったのかな?と思い、お母さんのもとへ行ってみる。
「美琴?あんたさっきも起きてきたよね?いったいどうしたのよ」
「え?さっき?」
「なんかふらーっと起きてきて、お母さんが早く寝なっていったらまたふらーっと戻っていったじゃない」
「え?じゃあ、私が寝てから部屋に入ったのって…」
「え?誰も入ってないよ?」
「えええー。じゃあ、だれが…?」
「とりあえず寝なさい」
「わかった。おやすみ」
そしてまた、自分の部屋に戻り、目を閉じた。
僕は、また目を覚ました。
先ほどの女の子の部屋があった。
また電気は消えていて、さっきと変わらない光景であった。
机上の生徒手帳はなくなっていて、もう一度制服から出してみた。
やはり先ほどと同じ名前があった。
時計を見ると、眠りに落ちた時間の、五分後くらいだった。
こんなことって…偶然過ぎる…
生徒手帳をしまい、電気を消した。
横になっても、名残惜しいような気がして、なかなか寝付けなかった。
この子の長い髪が首を伝い、くすぐったい。
いろいろなことを我慢しながら、寝た。
また、先頭の中にいた。
今度は、椅子のようなものに座っていた。
背中にはお湯が流れていて、おなかのあたりが寒かった。
こうしていると、さらにこの体についているあらゆるものが誇張されて、気持ち悪くてとにかく嫌だった。
なぜさっきと同じ男の子になっているのだろうか。
この男は、だれなのか。
遠くから、だれか歩いてきた。
そして、私の隣に座った。
じっとこちらを見ている。
何?何?怖い、え、誰?
「明澄、大丈夫か?」
話しかけてきた!!!
ちょっちょっちょっ無理無理無理怖い怖い!!!
「お父さん今サウナ行ってきたよ」
あ、この人こいつのお父さんなんだ。
だからと言って私は話すこともできず、とりあえず無視して寝たふりをした。
そしたらすぐにすとんと寝てしまった。
僕が共催後に目を覚ましたのは、やはり銭湯の中だった。
その後僕は先頭を出て、牛乳を飲んで、夕飯を食べて、アイスを食べて、帰った。
先ほどの夢のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。
その日に布団に入って寝たときは、もうそのような夢は見なかった。