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第7章07話

第7章07話


 正月休み中にサピカ村別宅の池を2度造り直している。どうしても水が澱んでしまう場所が出来てしまうのだ。


「これを解決しないと開拓村の湖や水郷境の池も水が澱んでしまう場所が出来てしまい、湖底に沈殿物が堆積する事になります」


 要するにヘドロが溜まる可能性が有るらしい。


「今回のは対流がゆっくり、大きくなるように改造したのですが……」


 最初のと2度目のは、少し速い速度の対流を起こすようにしてあったのだが、逆にゆっくりになるように池底を改造した。


「じゃ、また水を張ってみよう!」


 湧き水の流れを、また池に持って来る。


「これが一番時間を食いますよね」


 善姫さんの言う通りで、待っているのが退屈だ。1週間の正月休みがこっちに来るとほぼ1カ月の休みで、後半皆が退屈だったので仕事がはかどったのが幸いしている。

 知世さんが差し入れにヤヤさんの五目寿司を持って来てくれた時、全員で働いているのを見て驚いていた程だ。


「これで上手く行って欲しいな」


「でも、御屋形様が今回別宅と山を買ったので事前に設計を試す事が出来て助かってますよ」


 林弧ちゃんは上手く行くまでテストを繰り返すつもりらしい。


「4時間くらいですかね」


 ブリュネちゃんが水の具合を見て計算している。


「妖術で満杯にしたらまずい? 俺出来るよ」


「待つのが面倒です。やりましょう!」


 依能さんの一言で決定した。


『水美、頼むよ』


『水なら任せて』


 水美があっという間に池を満杯にしてくれた。


「後は水の流れと排水ですね」


 ブリュネちゃんが空から見ている。湧き水が徐々にゆっくりと流れを作って排水溝に流れている。


「上手く行ってますね」


「雨を想定して流水量を増やしてみる?」


「出来ます?」


 水の精霊を舐めてはいけない。水美が倍くらいの流水量にした。林弧ちゃんが空から見てチェックしている。


「御屋形様。問題無いです」


 林弧ちゃんが頭の上で両手で円を作ると、思わず全員から拍手が上がった。


「風呂で汗を流してから、母屋の1階で宴会にしよう」


 天狗さん達は離れの風呂を使って貰う。


「旦那様、2階の風呂は先程用意しておきました」


 善姫さんと2階の風呂を使う。


「この風呂が出来ただけで過ごし易いのに池のお陰で本当に身体が楽になりました」


 善姫さんの言う通りで本当に呼吸が楽になった。


「風呂の後、浄化してから湯を抜かない方が良いのかも知れないね」


「私もそんな気がします」


 水の中に出来る石は水に浸けておいた方が効果が高いようだ。


 風呂に入ってから1階に行くと皆、既にビールを飲み始めていた。


「天狗さん達は、まだ?」


「ゆっくりしているようですよ」


 宴会用に保存袋から寿司やウナギを出していると皆が集まって来てワイワイやっている。


『池のお陰で本当に皆が仲よくなったな』


 水美が言ったのが正しいと、俺も思った。



 明日から仕事始めなので、晩御飯を食べながら打ち合わせをした。


「経験が生きているうちに、開拓村の湖を造ってしまおうよ」


 全員が賛成したので、簡単に決まってしまった。


「あそこでニジマスの養殖したいのですが」


 ブリュネちゃんが言って来た。


「良いよ」


「有り難う御座います。大量の水が流れ込むので、水温も養殖に適しているのですよ」


「じゃ、水郷境に造っている池も、それなりに規模が有るから全ての池で養殖をしようか」


 依能さんも乗り気のようだ。


「出来ると嬉しいな。特産物が増えるもの」


「淡水エビも育ちますよ。天ぷらや塩焼きなんかも美味しいですし」


 ブリュネちゃんが言い出した。


「出来る事は全部しようよ。食料の自給率も上がるし」


「とりあえず、開拓村の湖は大きいですからニジマスと淡水エビの両方をやりましょう」


 俺は依能さんの提案を全て受け入れた。


「必要な機材は、どんどん買って良いよ。全部、俺に請求してね」


『銀貨の良い使い道が出来たな』


 水美が笑っている。



 正月休みが終わった8日の朝、久しぶりにヤヤさんの朝食を全員で食べてすぐに開拓村に向かった。


「哲司さん、例の緑色の低質鉱石はまだ有ります?」


「有るよ」


 皮袋ごと依能さんに渡した。

 ブリュネちゃんと林弧ちゃんの3人で浄化石と混ぜ合わせてレンガみたいな物を造って湖底の所々に埋めている。


「魚と淡水エビを養殖するので、水質を改善するのに使うんです」


 湖底の形を少し変えている。


「湖底の水が流れ易くしないと、ヘドロが溜まりますから」


「適当なところで水を張ってしまおうよ。俺がやるからさ。その方が早いよ」


「スミマセン。お願いします」


 空から見ながら暇つぶしをしていると、依能さんのOKが出た。


『水美、頼むよ』


 2人で手を繋いで水張りを簡単に終わらせる。

 空から見ていると徐々に流れが出来て来ているのが良く分かる。

 依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんが水面を見ながら飛び回っている。


「抜くとき言ってね」


「はーい」


 林弧ちゃんが明るく返事をして来た。3人で何やら相談して言って来た。


「御屋形様。抜いて下さい」


「あいよ」


 また、水美と一緒になって水抜きをした。2人でやると本当に負担が少ない。

 3人が湖底の形をちょこちょこと変えている。


「魚やエビが隠れる所も必要ですので」


 湖底に岩を入れたりして仕上げをしていた。


 結局、サピカ村別宅の時と同じで3回目で成功した。

 上空から見ていても、水の流れがスムーズになっているのが良く分かる。


 全部終わっ頃に水神様が見に来た。


「良く出来ているな」


 水神様なんだから、水の張りと抜きくらい手伝えと思った。



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