第7章03話
第7章03話
「舞花さん、良かったら奥の部屋を専用にして使っていて良いですよ。依能さん達も皆、1室占拠してますので」
「良いのですか? 嬉しいです! 最近実体化してダラダラしているのが好きになりまして」
風の精霊さんが笑って話している。
「ここだと仲間も居るし安全ですよ。依能さんに部屋を案内して貰って決めて下さい」
「最近は休み時間なんかも来てるの。4倍の時間を使えるので昼寝も出来るし。林弧なんか疲れた時は殆どこっちで寝ているのよ」
依能さんが説明しながら舞花さんを奥に連れて行った。
「哲司、済まんな。精霊は人前に出ない生活が長くなると仲の良い仲間が欲しくなるようだ」
天狗さんの説明に納得してしまった。
『人前に出る精霊も増えているな』
『水美も出る?』
『その気は無いな。風の精霊は哲司の前に出てしまって、善姫や依能達と仲良くなったので元に戻れなくなったのだろう』
『でも生き生きしているよね』
『この家を買って良かったな』
水神様から呼び出しが入った。正月早々の面倒事は面倒だと思ったが仕方無いので行く事にした。
謁見の間に行くと既に天狗さんが来ている。
「旦火の国と吾蔵の国が戦争を始めそうだ」
水神様がオロオロしている。話しに依ると国境に兵士が集結して完全に開戦寸前らしい。
「そこで旦火の国が水郷城に不介入を要求して来た」
渋い顔をして天狗さんが話した。
「水郷城と旦火の国なんて関わった事も無いのに今更何を言って来るんだろう?」
「旦火の国としては一神教国だから水郷城が吾蔵の国に加勢すると思ったのだと思う」
今、水を絞っているのに気が付いている臭い。
「で、見返りは?」
「何も言って来て無い」
「では無視しましょう。そもそも水神様の国に一神教国が要求して来る事自体変ですよ」
「それもそうなんだがな」
「水神様もすぐ弱気になる。笹美の国に旦火の国がなだれ込むより、吾蔵の国と戦争していてくれた方が好都合ですよ」
「それもそうだな……」
「大体、見返りも示さないで要求だけして来るのがふざけてます! 笹美の国と同じで神と人の差が分かって無い。何故怒らないのです」
「いや……それは」
「旦火の国全土の水を半分に絞ってしまいましょう」
「全土か?」
「今は雪が有るから問題は無いですよ。春に泣くだけです」
『水美。旦火の国に行って僧兵を捕まえて吾蔵城の屋根に乗せてから、お金の吸い上げやろうか』
『面白そうだな』
吾蔵の国も少し貧乏にしておかないと、旦火の国がすぐに負けてしまうと話しが面倒になる。
「絞っても良いが……」
「豊な国力を維持したまま吾蔵の国に占領されても面倒ですよ」
「そうだな……」
「俺は見返りを聞いて来る」
天狗さんが部屋を離れた。
「水神様。弱気と優柔不断は駄目ですよ」
「分かっておる!」
分かってねえよ。
天狗さんが戻って来た。
「何を聞いても水神様に直接でなければ、話さないと言うので城から叩き出した」
「下っ端に会う理由が無いですよ。良かったと思いますよ」
「水は今、絞っておいた」
水神様が気をしっかり持っていれば悪い方には向かわないだろう。
「知世さんは?」
「今呼ぶ。これから山の神に宣姫と使いに行く所だった」
「なら後で良いですよ。約束の時間が有るのでしょうから」
「済まんな」
謁見室から天狗さんと出る。
「天狗さん、吾蔵城の場所は知っている?」
「知っているぞ。国境地帯と吾蔵城に連れて行ってやるか?」
「うん、この展開だと知っておきたいな」
天狗さんが俺を連れて、街道の国境地帯に飛んだら既に戦闘中だった。
『凄い数だね』
『旦火の国が慌てている筈だ。吾蔵軍に押されているな。次は吾蔵城だ』
吾蔵城の近くに降りた。
「ここも金持ちみたいな国だね』
「大きな国だからな」
「連れて来てくれて有り難う。舞花さんならサピカ村の家に居たよ」
「済まんな」
天狗さんがサッサと消えた。
俺と水美は水の里に飛んだ。
『哲司。さっきの計画をやりに行くぞ』
水美が大量の皮袋を用意し始めた。
『旦火の国に行って僧兵を捕まえなくっちゃ』
『そうだな』
水美と透明化して旦火の国に飛んで、僧兵2人を拘束して吾蔵城の屋根に飛んだ。
屋根の上に陰陽師と兵士が6人くらい警戒していたので、そこに僧兵を放してやると、あっという間に陰陽師に討たれてしまった。
『雷撃』
俺が水系列の妖術を避けて雷撃を撃つと水美も雷撃を使って屋根の上を片付ける。
『雷撃』
『2人でやるぞ!』
水美に言われて手を繋いだ。
『『雷撃』』
簡単に一掃してしまった。水美がそのまま続けて始めた。
『『術解除』』
『『術解除』』
『『術解除』』
結構強い結界が張られていたが、2人で壊してしまった。
『『収集』』
『『収集』』
『『収集』』
凄い勢いで懐が重くなっていく。陰陽師が6人くらい屋根に現れ乱射して来る。何発か当たったが跳ね返してしまった。これ以上は面倒になって来たので、我々はサッサと退散した。
水の里に着いて皮袋を床に置き一休みしていると、水美が皮袋を確認している。
『金貨が6袋満杯と1袋の4分の3くらいだ。銀貨が34袋満杯と端数だな。数珠も沢山有るぞ』
『やはり金持ちの国なんだね』
『これで余裕も無くなるだろう』
『軍を引くのかな?』
『キレて一気に行くかもしれないが、長くは持たないだろう。略奪しまくるだろうが。どの道我々には暫くは関係無い』
水美の言う通りだと思う。金が無ければ戦争は続けられない。
『ところで哲司も強くなったな。撃たれても跳ね返していたぞ』
『水美がくれた数珠のお陰だよ』
『元々持っている能力を上げる数珠だ。哲司が強くなっている』
少し嬉しかった。
『哲司。銀貨用の皮袋を出せ』
やっと半分くらいにしたのを取り上げられ、銀貨満杯の皮袋を渡されてしまった。
『金持ちなのだ。頑張って使え』
数えるのが大変だから、せめて大銀貨も使わせて欲しいなと思った。




