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第7章02話

第7章02話


 案の定、家に帰って新しくなった風呂に皆の興味が行き、取り敢えず風呂に入る事になった。

 依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんが1階の風呂で、俺と善姫さんが2階の風呂を試している。


「旦那様、全然違った風呂みたいですね。景色は良いし、広いです」


「屋敷の風呂には負けてますよ」


「あれは別物です」


「依能さん達も気に入ってくれていれば良いけどね」


「あの方達のお陰でここも居やすくなりました。この大きな家に1人で居ると寂しくなっていたのですが、最近は息抜きに来ても誰か彼かに会いますのでサピカ村にも来やすいです」


 善姫さんの精神的圧迫感を取る為に買ったような家なので、居やすくなったのは喜ばしい事だ。


「確かに誰にも邪魔はされないけど、1人で2階の部屋にポツンと居るのも寂しいよね」


「1階に誰か居るだけで安心感みたいのが出ます」


 善姫さんが少し社会性を持って来たようだ。以前は周りに人が居るのが嫌だったのだが。


 外が暗くなって来たら水美が光球を林に出したようだ。日本の高級旅館みたいな光景だ。


「綺麗です!」


 余りゆっくりしてしまっても、やる気が無くなるだけなので1階に行くと3人とも居間で涼んでいた。


「御屋形様、あの風呂は良いですね」


「私もサピカ村に居るのを忘れてしまいました。こっちは実用的というか無粋なものしか無いですから」


 どうでも良いけど、俺が居る時は何か羽織るかしてくれないだろうか。言っても無駄だけど。


 天狗さんと風の精霊さんが、いきなり来た。


「済まんな騒がせて」


「私が来たいとゴネまして」


 実体化した風の精霊さんが舌を出している。


「舞花さんなら大歓迎ですー」


「サンリン町の屋台を見に行くのですが舞花さんも如何です?」


 林弧ちゃんも善姫さんも風の精霊さんを名前で呼んでいる。何時の間に仲良くなったのだろう。


「行きます!」


「さあ、サンリン町の見物に行くよ」


 全員そのまま透明化しただけだった。自由になりに来ているのだから仕方無いのだけど。


「男が2人で歩いているように見えるね」


「全員が現れたら捕まるだろう」


「残念ながらヤマコの里には裸で歩くのを禁止する法が無いらしいよ」


「本当か?」


「本当、後で良い店に連れて行くよ」


 天狗さんが信じられないといった顔をしている。

 あちこちで、お菓子やサンドイッチを買ったりして屋台を見て歩く。保存皮袋が食べ物だらけになっている。

 屋台の種類が少ないので、すぐ飽きて来た。


「こんなに人が居るのに商品が少ないですよね」


「これがサンリン町ですよ。昔から変わらないです」


 善姫さんに依能さんが応えていた。


「旦那、久し振り過ぎるよ」


 リブズの店に行くと文句を言われてしまった。

 善姫さんが現れて挨拶している。リブズは普通に扱われるので善姫さんが大好きだった。


「旦那、これ」


 数珠の売り上げらしい。


『3万金貨程入ってるよ。次の売らせてくれよ』


 飛翔枝とか移動数珠みたいのを売らせてあげている。最近物凄く値上がりしているらしく信じられない程の売り上げになるらしい。


『有り難う。次のはこれね』


 移動数珠を15本と飛翔枝を2本渡してあげた。


「これが売り易いのだろう」


「助かるよ旦那」


 俺は売り上げの半分貰える。拾った数珠ばかりだからボロ儲けだ。


「リブズ。今から、あのレストランに7席予約出来る?」


「旦那。リブズに任せな」


 善姫さんが凄く喜んでいる。


「じゃこれから行くよ」


「リブズさんは行かないの?」


「善姫さん。あそこは私用の店じゃ無いですよ。皆さんで楽しんで下さい」


 俺と善姫さんが手を振りながら店を出た。


 レストランに向かって歩いていると、皆さん何処に行くか気になるようだ。


「素敵な店ですよ。美味しいですし」


 善姫さんが適当に説明している。

 レストランの入口には何時もの剣士が2人立っていた。


「これは御屋形様。連絡は来てますので、お入り下さい」


 中には支配人が待っていた。


「御屋形様、今年も御贔屓にしていただき有り難うごさいます。善姫様も一緒でしたか。相変わらずお美しい。さあこちらへ」


 中に入ると結構混んでいる。今日は8割くらいの女性が楽過ぎな格好だった。

 善姫さんが透明化を解いて歩いているので、全員現れた。

 いきなり4人が現れたので、少し声が上がったくらいだ。ここでは妖術使いは珍しいのだ。


「支配人さん、お勧めは?」


「新年の特別メニューを用意してあります」


「じゃそれね。俺はエールね」


「奥様方には発泡葡萄酒も有りますが?」


 依能さんと舞花さんが飲みたがるので、最初の一杯は女性陣は全員、発泡葡萄酒となった。


「ここは何なのです?」


 舞花さんが不思議そうに聞いて来た。


「サンリン町の超高級店です。周りのお客さんもこの町の幹部と奥様方とか、お金持ちの奥さんとか娘さんばかりで、服を着ているのが付き人だったり雇われている人達だそうですね」


「話に聞いた事は有りますが、本当に有るのですね」


 ブリュネちゃんがしげしげと周りを見ている。


「怪しい店じゃ無いですよ。ここでは昔から家の中は自由な格好が当たり前らしいので……昔は外出の時もそうだったらしく、外で服を着なければいけないという法律が無いのですよ」


 舞花さんと林弧ちゃんが感心して聞いていた。

 変な格好の弦楽器とペルーの五本くらい連なっている縦笛みたいので演奏が始まった。


 料理と酒が出て来た。シャンパンモドキを喜んで飲んでいる。

 料理は凄く大きな鳥の丸焼きとカナッペ類やサラダが出て来ている。


「これ、美味しいです!」


 舞花さんはカナッペ類が気に入ったようだ。林弧ちゃんは特大の丸焼きからボーイに肉を切り出して貰ってかぶりついている。


「なんか貴族になったみたいな気分です」


 ブリュネちゃんは雰囲気に飲み込まれている。


「私も旦那様に初めて連れて来て貰った時は驚いたものですよ」


 舞花さんがまた来たいようなので、天狗さんを支配人に紹介して自由に使えるようにして貰った。


「このシチューも美味しいです!」


「鳥をもう一羽」


 林弧ちゃんが丸焼きを注文している。俺が一切れ食べているうちに骨だけになっていた。


「サラダとカナッペも」


 依能さんはサラダが良いようだ。要するに2セットめに突入したようだ。

 周りのお客さんも我々の大食を楽しんで見ている。

 支配人さんはニコニコしながら注文を聞いていた。


「哲司、ここは幾らくらい掛かるのだ」


 天狗さんが興味津々で聞いて来ている。


「これだけ派手にやって寿司屋と変わらないくらいかな? せいぜい2金貨程だと思うよ」


「そんなに安いのか?」


「それが此処の物価なんですよ。皆さんに経済力が無いというか……」


 妖獣狼か猪の2頭くらい狩って来れば派手に遊べるのだが、余り妖術が使えない此処の人達はあの大きな妖獣を狩るのが大変なのだ。


 我々を見て町長さんが手を振っている。以前槍を寄付してから仲が良い。また武器の無心だろう。

 この店の中は新年らしく華やかだった。




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