第7章01話
第7章01話
元旦はお昼近くまで寝ていて、お雑煮を頂いたのが昼食だった。
「7日まで基本的に休みだから、ゆっくりしようよ」
「でも開拓村の湖が最近全然進んでないですし」
ブリュネちゃんが休み返上する気らしい。
知世さんの小屋に近い川の辺りを湖にする計画をして出来る寸前で放ってあるのが現状だ。何故なら水郷境の開拓地の溜め池を優先させていたのが原因だった。
「正月休みに俺達が働けばタマ左右衛門さん達や事務方の人達、開拓民も休み返上になっちゃうよ」
「そうですね……」
「水郷境の溜め池も春までにどうにかして欲しいしね。林弧ちゃんも来たから始めれば早いよ。ブリュネちゃんも設計の点検をしっかりやって、休み明けに頑張ろうよ」
開拓村も様変わりしている。守備の侍さんが10人くらいになっているし、松並村の宿とか蕎麦屋とか古着屋が移って来ていた。
「善姫さんの母上捜索もしないと、農閑期が時間が取れるしね」
「私も手伝いますよ。哲司さんの手伝いすると妖獣退治で稼げるし」
依能さんが言っているとブリュネちゃんと林弧ちゃんも手伝ってくれる事になった。
「皆でやった方が山賊退治も楽だしね。頼むよ」
3人とも攻撃妖術上げが目的みたいだ。現状だと善姫さんの方が上みたいだし。善姫さんは去年、俺と沢山退治しているので結構強くなっている。
「知世さんはもう少し水郷城で身体作りに専念した方が良いと思います。ヤマコの里は慣れるのが大変ですから」
依能さんに言われて知世さんも頷いている。
「本来なら私もヤマコの里で頑張らないといけないのですが……」
「依能さんは250年、善姫さんは13年掛けて身体を慣らしているのだから仕方無いよ」
昨夜も忙しかったので、知世さんを城に行かせて我々は休みを長く使えるようにサピカ村に飛んだ。
依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんは1階の奥の3室を自分の部屋にしてしまっている程ここに来ている。
とりあえず全員で居間に持ち込んだコタツでダラダラと予定を立てていると、庄屋さんがやって来た。
「御屋形様。明けましておめでとうございます」
庄屋さんが来たのは武器の無心と隣の家を買わないか聞きに来たのだった。
「槍を50本で良いのですね」
俺は槍を50本複製して、刀をオマケに10振付けてあげた。
「隣の家は幾らです?」
「古くなっているので1700金貨で買えますよ。土地は沢山付いてます。サピカ村で最後に残った百姓屋ですから」
隣の家も日本式に近い2階建ての家で、それなりの大きさが有る。何よりも土地が広いので、隣家との距離が離れるのが良い。早速1700金貨払って買ってしまった。
「見に行きましょうよ」
ブリュネちゃんが興味津々のようだ。
「再生すれば良い別宅になりますよ」
依能さんがやる気満々だ。
「来るかどうか知らないけど、客室にしても良いよね。母屋は我々専用にしてしまって」
「そうしましょう!」
善姫さんまでその気になっている。
「こっちは我々でやりますから、御屋形様は母屋の風呂を屋敷みたいに外が見れるようにできませんか?」
林弧ちゃんがリクエストして来た。どうやら全員そう思っているらしい。
「良いよ。改造するよ」
水美が2階の風呂からやると言うので、皆と別れて2階に行った。
『妾の思ったようにやっても良いか?』
『窓を大きく取るなら水美の力を借りるしか無いのだから、水美の好きなようにやって』
水美は手際良く窓を大きく空けて、継ぎ目の無いガラスみたいな物をはめ込んでいる。
『見晴らしが良いね。善姫さんが喜ぶよ』
『そうなるように頑張ったのだ』
少し殺風景だった風呂の壁も、木目になって落ち着いて見える。
『木は使って無いのだがな』
2階が上手く行ったので、1階の風呂も同じように改装した。解放感が増して凄く良い。
『夜は光球で林を照らせば相当美しく見えるね』
『それは良い考えだな』
皆に見て貰うのに呼んでみると、全員が飛んで来た。
「御屋形様、これ凄いです!」
「お屋敷みたいですね」
林弧ちゃんとブリュネちゃんが凄く喜んでいる。
「夜は外に光球を出してあげれば、景色が良くなるよ」
皆でワイワイやっているので、水美と新しい家を見に行くと、水美がいきなり外装を変えだした。
母屋と同じように日本式の外装で、少し武家造り風になった。
『百姓臭い所は全部消す!』
調理場を隔離して居間から囲炉裏を無くしとか好き放題やっている。
『居間はもっと広くしようよ』
『そうだな』
隣接する部屋を壊して居間にしてしまった。それなりに広い家なので部屋数に問題は無い。
依能さんが来て水美と話している。
『哲司、手伝え』
何のことは無い。3人の妖力で母屋の風呂を複製して持って来た。凄い妖力が必要だった。水美達も複製したのを反省しているようだ。
『このままだと妖力が足りんな』
水美が一度水の里に帰ってから、俺に妖力を足してくれた。精霊同士は妖力のやり取りが出来るらしく、依能さんにも与えている。
風呂は持って来たら楽で、もう一度水の里に帰って力十分の水美が家の大きさに合わせて伸ばしたり縮めたりしてはめ込んでしまった。
『残った仕事は明日以降にして、土壁を作るか御飯に行こうよ』
『御飯です!』
依能さんは腹が減っているようだ。
「皆、サネリちゃんの所に行くぞ」
サピカ村組は全員ビーフシチューモドキが大好きなので、簡単に話がまとまる。
「御屋形様、明けましておめでとう御座います。今日は大人数ですね」
「正月休みだからね」
「いいな。この村は新年に大騒ぎもしないので何時もと変わらないですよ。今日は何にします?」
「俺はハンバーグのビーフシチュー煮」
「私も」
俺と善姫さんだけ普通だった。
「ステーキとハンバーグのビーフシチューかけ」
「ステーキ2枚にビーフシチューかけて」
「ステーキのビーフシチューかけと林東村シチュー」
依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんの胃の大きさは凄いものだった。
「相変わらずですね。家は盛りが良いので有名なのに」
サネリちゃんが厨房へ注文とエールを取りに戻って行った。
「食べ終わったら土壁だけでも作ります? 囲ってしまえば、後は好きな時に作業が出来ますよ」
依能さんの提案には賛成なのだが、この顔ぶれでエールを飲み始めれば土壁なんて今日やれるとは思わないけど。
「今、お父さんに聞いたんだけど。新年の祝いはサンリン町に行けば夜店が出るそうよ」
料理を持って来てくれたサネリちゃんが教えてくれた。
「皆さんが期待しているような華やかなものでは無いですよ。水郷境や水郷城が華やか過ぎですから」
ブリュネちゃんがサンリン町出身者なのを忘れていた。
「食べ終わったら土壁をやってからサンリン町に行きませんか?」
善姫さんは見たいようだ。皆さんも賛成で夜にサンリン町に行くことになった。




