第6章14話
第6章14話
遂にこの日が来てしまった。恐怖の大晦日だ。
今日は夜8時から40000発の花火大会。それも花火が古いので、安全を見て全部妖力で打ち上げなのだ。
依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんはノリノリだが妖力との戦いだ。
11時から0時30分までは餅撒きも有る。水神様が目立てるのでゴキゲンが良い。
朝から餅付きで帳面所が大騒ぎになっている。代官所から加勢が来たので、碓と杵を5セット足して米蒸しも増やした。
「さあ、御神酒は飲み放題だけど仕事は続けてね」
和やかな雰囲気で、帳面所と代官所の交流になっている。
「今の代官所の呼び名は、何でしたっけ?」
「守備所です」
タマ左右衛門さんに睨まれた。
「午前中には開拓者に配る、伸し餅と食材は用意出来ます」
「もし、貧困層が居たら配れるように神社の入り口にでも置いて置けないかな」
「考えてます。貧困層には顔役を通じて配布しますが」
母子家庭とかに配るのを優先しているようだ。
「御屋形様はもう一度、大ナマズ様と話しておいて下さい」
「花火大会の件ね」
大ナマズさんの住処の近くに有る中州を使わせて貰うのだ。忘れないうちに挨拶に行く事にした。
「大ナマズさーん」
目の前の水面に大ナマズさんが現れた。
「御屋形様か。どうした?」
「今晩、花火大会でご迷惑を掛けるので改めて御挨拶です」
持って来た高級清酒と大型のおかず折り詰めを見せる。
松木の神様も現れた。
「いつも済まんのう。松木に渡してくれ。一緒に楽しむ」
「松木の神様にも持って来てますよ。一緒に飲むのなら、もう1樽必要ですよね」
俺は松木の神様に清酒3樽と、おかず折り詰めを2つ渡しておいた。
生き神様と神様が目を合わせてニコニコしている。
「後で係の者が餅を祠の方に持って来ますので」
「御屋形様になってから昔のように餅まで供えてくれるのが嬉しいのう」
話していると林弧ちゃんが大きなお供えを持ってピョコンピョコンやって来た。
「大ナマズ様、松木の神様。お供え物だよ」
「済まんな林弧。祠に頼むぞ」
林弧ちゃんが、お供え物を祠に置いて帰って来て大ナマズさんと話し始めた。
「今日は林弧も打ち上げるんだよ」
「偉いのう。楽しみにしているぞ」
神様達は林弧ちゃんに任せて帳面所に戻ると
侍達の奥様方まで手伝っていた。
「ひょっとして全員?」
「いえ、3人だけ正門の警備をしています」
タマ次郎さんが、たすき掛けと鉢巻きで応えてくれた。
「間に合いそう?」
「何とかします!」
「家のも出す?」
「知世様、善姫様、依能様、林弧様、ブリュネ様には神様への挨拶と供え物をお願いしております」
水郷境は神様達が移住しているので100柱を軽く越えている。
「おかず折り詰めは間に合う?」
「大丈夫です」
良く見ると一眼姫とピョコリ瓢箪は餅撒き用の餅を作っていた。
「御屋形様は時折顔を出すだけで良いです」
追い出されてしまった。
『哲司。水の里に行くぞ』
水の里で風呂に入って、夜の為に体調を整える。
『水郷城が静かだね』
『また、何処かの神でも来ているのだろう。宣姫も見ないからな』
水美の意見に賛成なので、俺は餅撒きまでは水神様に関わらないことにした。
少しゆっくりしてから屋敷に帰ると、2階の居間で浴衣を着てグッタリした集団が居た。
「どうしたの?」
「神様達にお供え物を配って、帰って来て風呂から上がってから凄い疲労なんですよ」
善姫さんが説明してくれた。
知世さん、善姫さん、依能さん、ブリュネちゃん、林弧ちゃんが居間でゴロゴロしている。
「神様にあたったね」
俺も神様の移住の時、これにやられた。1日に多くの神様に会うと、凄く疲れて回復しないのだ。
「7時に集合で打ち上げ準備ですから、回復させなくてはと思って皆で風呂に入って出て来たらグッタリしてしまったのです」
知世さんが困惑している。
「タップリ寝るしか無いよ」
俺は財布の中を調べると、回復の数珠が出て来た。兵隊が使う安物数珠だが結構効き目が有る。
「全員、これを付けて。兵隊さんが使う回復の数珠だよ」
数珠を配る。
「本当だ! 早速少し効いて来た」
ブリュネちゃんが、興味深そうに見ている。
「7時まで後4時間ぐらいしか無いから、全員でサピカ村に移動して昼寝しよう。半日寝ても時間が余る」
知世さんまで逆らわずに付いて来た。
サピカ村の1階の居間の温度を上げて、コタツを設置すると全員がゴソモソと入って来た。
ここの2階で使うのに俺が作った一辺に3人は座れる大型コタツだ。真ん中に光球を入れて暖をとる。
皆、あっと言う間に寝てしまった。
『コタツの威力は偉大だね』
『日本では一般的なのか?』
『冬の必需品だよ。普通は4人用だけどね』
『心地良い物だな』
水美も気に入ったようだ。俺は疲れてなかったので2階の部屋にもコタツを設置して、水美とゴロゴロしているうちに寝てしまった。
何故か10時間くらい寝ていた。やはりコタツは駄目人間製造機なのかもしれない。
1階に降りて行くと皆もダラダラと起き出している。
「食べよう」
おかず折り詰めとビールを出すと、皆が飛びついた。腹が減っていたらしい。
「御屋形様。あの数珠が凄く効いたよ」
「じゃ持っていて良いよ」
林弧ちゃんが喜んでいた。
食べる物を食べて、体力が付いたところで花火大会の会場に向かった。
飛ばす順番は花火師さんが決めてくれている。
「花火師さん達が導火線に火を点けてくれるから、我々は順番に打ち上げてれば良いらしいよ」
「火球を撃たなくて良いのですね」
善姫さんが楽になったのを喜んでいる。林弧ちゃんは狙い撃ちが出来なくなって残念そうた。
「打ち上げと火球の両方だと、妖力不足になるから諦めなよ」
8時になるとタマ左右衛門さんが来た。
「夜5つですので、御屋形様から一言」
川沿いに凄い人数が集まっている。
「要らないよ」
俺が打ち上げの1発目を上げた。導火線が火の道を作ってスルスルと空に上がって行き大輪の花が開いた。
「ドドーン」
凄い轟音が鳴り響くと川沿いから大歓声が上がった。
「花火大会の始まりだ! 皆、頼むぞ!」
「「「「「オー」」」」」
そこからはドンドン花火が打ち上げられ、河原は昼間のように明るくなっていた。
宣姫さんが手伝いに来てくれた。
「申し訳有りません。母が自慢したい一心で他の神を呼んでいるもので。餅撒きも自分中心に神々でやる気らしくて……」
「宜しいですよ。かえって助かります」
「申し訳無いです」
「そんな事より打ち上げましょー。予定より遅れているのです。10時に終わらないです」
40000発は凄い量だった。皆で必死で打ち上げて10時30分頃にやっと終わった。
皆さんが楽しそうに見てくれていたのが印象的だった。




