第6章10話
第6章10話
林弧さんを連れて屋敷に帰って、ブリュネちゃんに作って貰ったペンダントを林弧さんに渡してあげた。
「こんなに高価な物を……凄いです! 水神様に上げて貰った以上に妖力が!」
「ブリュネちゃんに頼んで鎖の長さを調整して貰って。外れると面倒だから」
「はい!」
「依能さんの助手をお願いするからね。月に10金貨で契約金に100金貨を用意したから。屋敷に住んでヤヤさんの料理でも楽しんでくれ」
「ヤヤさんの御飯は美味いぞ」
依能さんも嬉しそうだ。
「御屋形様。林弧は全身全霊でお仕えします!」
タマ三郎が来て契約書に名前を書かせている。俺も槍と水美の皮袋と懐中時計をあげた。
現在、俺の回りだけでも24時間を採用している。
「依能さん。槍の使い方を教えてあげて」
「任せて下さい」
俺は時計を使って現代風の時間の概念を教えておいた。
必要な事が一通り終わったので我々は寿司屋に行った。
予想通りに水神様と宣姫さんも来ている。
『林弧は溶け込むのは早そうだな』
『依能さんとブリュネちゃんが居るから問題は無いだろう』
『妖力を得た林弧は強いと思うぞ』
『尻尾が別れた、お狐様が弱い訳が無いだろう。皆、林弧の外見に騙されるだろうけど俺より強いことだけは確かだと思う』
『妖術が使える者が少ない世界で、ここだけ妖術使いと精霊と神の使いが固まってしまったな』
『こんな物騒な所に誰も攻めて来ないのが目的だしな。それと俺の仕事が減って来る筈なんだけど』
林弧さんは寿司が気に入つたみたいで喜んで食べていた。
天狗さんも現れて林弧さんと話している。一応、御披露目は無事に終わった。
ブリュネちゃんが天狗さんにブレスレットを渡している。天狗さんが嬉しそうにブレスレットを付けているのが印象的だった。
『哲司殿。そろそろもう一度お願い出来ますでしょうか?』
風の精霊さんが直接言って来た。
『体調は大丈夫ですか?』
『はい、動き回れるようになって来ました』
『じゃ、後で依能さんと林弧さんにも手伝って貰ってやりましょう』
『皆さんにまで、御迷惑を掛けて……』
『光の精霊が悪いのです。気にしないで』
依能さんに事情を話して、後で林弧さんと一緒にヤマコの里に来て貰う事になった。
林弧さんが俺の側に来てクンクンしている。
『どうかした?』
『御屋形様の隣に風の精霊様がいらっしゃいますね』
『分かるの?』
『分かります。一寸失礼します』
林弧さんが、何処かに飛翔して行った。
『何だろうな?』
水美が気になっているようだ。
『お狐様は、長生きしているから知識は多いと思うよ』
30分もしないで林弧さんが帰って来た。
『何処に行ってたの?』
『薬草を集めてました』
何か分かっている臭い。
寿司屋での御披露目が終わって、サピカ村の家に行くと善姫さんとブリュネちゃんも来ていた。
2人供、妖力が強くなって来ているので頼りになる。
林弧さんの提案で1階の居間に行く。
林弧さんは真っ直ぐに風の精霊さんに向かって行き、話し掛けた。
『風の精霊様。この薬を飲んでください。四半時で効いて来ます』
「林弧さん。見えるの?」
「見えませんが、臭いで」
林弧さんが俺の質問に答えている。
「何か臭うの」
「こちらの世界に時折居る虫の出す臭いです。最近は減ってますが、妖獣のお腹に寄生しているのですよ。妖獣達は自分で薬草を食べて浄化するのですが……風の精霊様から臭うので」
風の精霊さんが現れた。
「どうも有り難う」
すぐに薬を飲んでいる。
「ヤマコから移ったのかな?」
「普通は人にも寄生しないので精霊様が持っているなら、弱っている時に大きめな成虫を飲まされた可能性が有りますね」
一寸目、可愛い子狐だが矢張り知識が凄い。依能さんが凄く怒っている。
30分待つ間、ビールを飲んだりして待つ。林弧さんはブリュネちゃんにメダルの鎖を調整して貰っていた。
「旦那様。先日いただいたブレスレットで、こちらでも身体が楽ですよ」
善姫さんが嬉しそうに伝えて来た。
矢張り効果が有ったようだ。
天狗さんが今後用に林弧さんから薬草を受け取り、扱いの説明を聞いていた。
「始めましょうか」
皆で裏庭に移動した。
「御屋形様、治療から始めて頂けますか?」
「じゃ、治療から浄化やって術解除?」
「はい、その後にまた治療やって浄化が宜しいと思います」
『それで構わんぞ』
水美も林弧さんに賛成している。
今日は俺と水美に天狗さん、依能さん林弧さんに善姫さんとブリュネちゃんで行うので妖力はタップリ有る。
「じゃ、始めましょう」
風の精霊さんを中心に置き、7人で手を繋ぎ集中する。施術人は水美だ。
表向きは俺なんだけど。水美は俺と依能さんが繋いだ手の後ろに居て、両手を俺と依能さんの肩に載せている。
「「「「「「『治療』」」」」」」
風の精霊さんが光る程の治療だった。
「「「「「「『浄化』」」」」」」
風の精霊さんのお腹が少し動いている。凄く苦しそうだ。
「「「「「「『浄化』」」」」」」
水美がもう1度、浄化を唱えると、よりいっそう風の精霊さんのお腹が動いて風の精霊さんが悲鳴を上げた。
「ギャー」
下半身から、白い大きめの蟯虫のような物がボタボタ落ちて来た。凄い悪臭がする。
「「「「「「『術解除』」」」」」」
風の精霊さんが上を向いて大口を開けて唸り声を出し始めた。
「ヴォォー」
尚もより大きな蟯虫が下半身から落ち続け、風の精霊さんが全身に力を入れているのが分かる。
「「「「「「『術解除』」」」」」」
今日はどす黒い煙りが風の精霊さんの口と下半身から出始めた。凄い量だ。
「「「「「「『術解除』」」」」」」
「ゲポッ、ゲポッ」
風の精霊さんが筋骨隆々に見える程自分で力を入れて、口からも蟯虫を吐き出しながら、一気に黒い煙りを吐いた。
「「「「「「『治療』」」」」」」
「「「「「「『治療』」」」」」」
「「「「「「『浄化』」」」」」」
「「「「「「『浄化』」」」」」」
『これ以上は風の精霊の体力が持たん』
水美が呟いて、依能さんと林弧さんは風の精霊さんの所に行って、蟯虫みたいなのを踏み殺している。
「今回は風の精霊さんの体力的に、これ以上は無理です。天狗さん、1階の風呂を使って」
天狗さんが風の精霊さんを担いで風呂に行った。
風の精霊さんの体液と蟯虫だらけの地面を、皆で浄化して終わった。
「もう一度だな」
「もう一度で終わりますよ。あの虫が居なくなれば呪いだろうが妖術だろうが、これだけの顔ぶれでやれば簡単ですよ」
依能さんと林弧さんの話しを聞いていると、俺もそんな気になって来る。
「それにしても凄い臭いですね」
ブリュネちゃんの言う通りで、この臭いは耐え難い。風を吹かせてなんとか散らす。
「疲れたからビールに行こう」
天狗さんに知らせてから全員でビーフシチュー屋さんに行った。




