第5章14話
第5章14話
「先程入って来た話しだがな、笹美城の領主の容体が悪化した上に陰陽師の長である頼田一漸が笹美の国を出たそうだ」
「別に領主が死のうと我々には関係無いですし、陰陽師の親分は金が無くなったのでクビにしたか国が見捨てられたか知りませんが、どうでも良いじゃ無いですか」
「哲司殿、そうは言うが私達にも影響は有るだろう」
「無いです。水郷境と水郷城は、ほぼ自給自足してますし笹美城の陰陽師の親分は時空間に穴を空けるだけが特技のカタワです。美嶺の国に攻め込んだ時に証明してますよ。我々に完敗ですから」
「それは確かにそうだが……」
「奴等が攻めて来ないなら放って置きましょう」
依能さんが来てから、畜産業も伸びつつあるし他所の相手などしてられ無い。
「そうか……」
「水神様、そう言えば正月用の草履とカバンを皆さんで作りません?」
「な、何! 良いのか?」
水神様、宣姫さんの顔色が変わった。
「依能さんやスミさんも、まあ何時もの顔ぶれですが」
知世さんと善姫さんが飛んで来た。
「ヤヤさんも誘ってね。一眼姫はカバン持てるか? 引きずるぞ」
「どうせ作って貰うのなら何とかなりますよ」
善姫さんがにこやかに一眼姫を膝に乗せている。
「呉服屋の近くの草履屋に言ってあるから。一人3組みで」
水神様を誤魔化すには、この手が一番だ。今は政治的に動く時では無い。
女性陣は大急ぎで草履屋に飛んで行った。
呉服屋の時と同じで水神様は生き生きしている。先程までの不安に満ちた顔は消えていた。
表の城の掘り沿いの屋台で、味噌おでんをつまみにビールを飲んでいると天狗さんが現れた。
「また、散財しているのか?」
「着物や草履をいくら買っても、使い切れない程笹美城から貰いましたから」
「確かにそうだな。そう言えば、分け前を沢山有り難う」
先程聞いた笹美城の情報を伝えると天狗さんも納得した。
「哲司の言う通りだ。水神が口を挿むと話しが面倒になる」
俺の味噌おでんを一本取ってビールを頼んでいる。
「出来れば今の体制で居て欲しいのですが……崩壊すると面倒だなと思って」
「何、放置すれば良いさ。我々には関係の無い事だ」
「ですよね。風の精霊さんの体調は?」
『心配してくれて有り難う。とでも良くなったわ』
『良かったです』
直接風の精霊さんが応えると思ってなかったので驚いてしまった。
「天狗さん幹部会はサボらないで下さいよ」
「俺が行くと水神はもっと優柔不断になる」
「俺だけはズルいですよ」
「話は変わるが、哲司のあの屋敷はいくらだった?」
「ヤマコの里?」
「そうだ」
「2500金貨だったかな。凄く安かったですよ」
「良いな」
「買うの」
「あの部屋に、あれを吊しておくと水神がうるさくてな」
「あの女の人は納得しているの」
「行き場所が無いので面倒見ている」
「それでヤマコの里に移住させる訳?」
「笹美の国では何処に行っても捕まるらしい」
「小さい家ならサンリン町でも1000金貨だから、家を買って1000金貨やって好きにさせれば?」
「2000金貨を稼がないとな」
「そこの道具屋で数珠を買って、サンリン町の道具屋で売っただけで最低2~3倍に売れるよ」
天狗さんがソソクサと道具屋に消えて行った。
『風の精霊が怒ったのだと思うぞ』
水美が面白そうに話し出した。
『俺もそう思う』
日当たりが良いので、田楽を追加で頼んでビールを楽しむことにした。
知世さんが善姫さんと来た。
「急に今月のが始まってしまいまして……」
知世さんが言い辛そうにしている。
「じゃ、この後はヤヤさんと一緒に城に5日くらい泊まったら? 俺は善姫さんと母上の捜索に行くよ」
「旦那様、申し訳有りません……」
「知世さんは痩せているので、大事にした方が良いよ。捜索もそろそろ行かなくてはと思っていたし」
善姫さんも楽にしてあげないとマズい頃だ。
「有り難う御座います」
知世さんが草履選びに戻る前に10金貨程小遣いにあげると固辞している。
「俺達はヤマコの里に行っているので、栄養の有る物を宣姫さんや一眼姫と食べて。ピョコリ瓢箪も居るし」
知世さんも納得してくれた。
「私の我が儘ばかりで……」
知世さんはションボリして草履屋に戻って行った。
草履屋からは水神様と依能さんの笑い声が聞こえて来る。
一眼姫とピョコリ瓢箪が来た。
「また捜索に行くのか?」
「うん。あれも続けないとな。留守は任せたぞ」
「任せろ」
「良い草履が見つかった?」
「儂の足に合わせて作ってくれるそうだ」
「良かったな」
嬉しそうに頷くと一眼姫とピョコリ瓢箪が田楽を食べ始めた。
「もう選んだのか?」
「終わった。水神様だけ決まらない」
相変わらずだった。
1時間くらいで水神様も草履を選び終わり、善姫さんとサピカ村の家に飛んだ。水美が部屋の温度を上げて、保温用に光球を出した。
善姫さんは楽な格好になってホッとしているようだ。この家を買って本当に良かった。来た途端に善姫さんの元気が良くなる。
「20日くらいはゆっくりと出来ますよ」
サンリン町のリブズの店に行って服を見せた。
「奥さんならこれが良いよ」
ダボッとしたワンピース風の服を見て、その場で着てみている。
「旦那様、似合います?」
善姫さんなら何を着ても良く見える。着て無くても捕まらないと知り大胆になったようだ。人前で堂々と着替えている。
『常識を覚えさせねばならないのに、どんどん外れて行くな』
『水美が二人になっちゃった』
『こっちに居る時は大目に見てやれ』
『……そうだね』
20年近くこれで生きていたのだから仕方無いと言えば仕方無い。
せっかくヤマコの里に来たのだから光の精霊の所で妖術の練習をしてから治療をする。
「私も治療を飛ばしても良いですか?」
少し向上心が出て来たようだ。善姫さんと一緒に治療をしていると大分上手くなって来た。
善姫さんの治療が顔に当たるようになって来ている。初日にしてはとでも上手だ。
「大分老けて来ているので、少し戻らないかと思って」
「依能さんと風の精霊さんもやっているけど、効果が上がって無いようだよ」
「やはり疲れから出ているのかも知れないですよね。でも風の精霊さんは綺麗なままでしたし……精霊さんによるのでしょうか」
『善姫より遥かに年寄りだし元が悪い。あんな物だと思うぞ』
水美の冷たい一言で納得してしまった。




