第5章09話
第5章09話
神様会議も終わって水郷城も平和になった。 全員帰って来て我が家も正常に戻り俺だけボロボロになっている。
『哲司。依能が会いたいと言っているぞ』
『行こう』
依能さんに会うと言ったら善姫さんも付いて来た。
何時もの食堂に行くと依能さんが待っていた。善姫さんと手を取りあって再会を喜んでいる。女子高校生みたいだなと思った。
「お呼びして申し訳御座いません。私は水郷城に入れないので」
「水郷城の登録をします? 良いですよ」
「宜しいのですか! 嬉しいです」
「余りお金にはならないけど、医者になりません? そうだな、月に10金貨とかタマ左右衛門さんが言っていたけど。家付きです」
「それ私なんかで良いのですか?」
「それだけ治療と再生を持っていたら文句無しです」
「それではお願いして宜しいですか」
「食べ終わったら水神様に申請しに行きましょう」
善姫さんがとても喜んでいる。
「こっちで生きて行くのも大変で……知人も余り居なかったのに若返ってしまって何故か疎遠になるし」
「ここ寂しい場所ですしね。妖怪も小物達も居ないし」
「そうなんです。それに私には追放地なので」
「それは言えてますね。追放地で解放されたようなものですよね」
ハンバーグモドキとエールが来た。
「食事もここの2品以外は塩味ばかりですし」
「稼いだお金は?」
「狩りも余り成果が挙がらなかったので、全部で500金貨くらいです」
「俺が両替してあげますよ」
「嬉しいです!」
善姫さんと依能さんで数えて、その場で両替して終わらせてしまった。
まだ30金貨くらい有るのは取っておくようだ。
「狩りは苦手ですか?」
「狩りが苦手より、貧しい感じの森や林に行くと気持ちが暗くなりまして。私は昔《豊饒の精霊》で、次が木の精霊になりましたので」
「それが原因くさいですね……ところで豊饒の精霊とは?」
「豊饒の精霊は良く実り、子が増えとかですね。開拓なども得意でした」
「素晴らしい能力ですね」
「精霊界の追放で何も残ってませんよ」
『だがな、実は精霊界の追放など聞いた事が無い。普通は消滅になる』
『そうなの?』
『豊饒の精霊が消滅して今誰も後継者が居ないなら分かるが、豊饒の精霊は何も起きて無い。 木の精霊は光の精霊の子分がなっだが、余りに勝手で主人の人間を無視して消滅させられた。100年近く前の事だそうだ』
『調べたの?』
『調べた』
「豊饒の精霊関係の能力が出せたら、医者より開拓の方で働いて欲しいな。月に15金貨くらい払えると思う」
「凄く私には魅力的な話ですが、力が奪われていて無理だと思います。医者だって経験無いですから」
「何故医者をしなかったの」
「御屋形様が治してくれるまで治療や再生も無かったのです」
『水美。治療したら治るの』
『可能性が出て来た』
『依能さんの力も使って3人で術解除やってみる?』
『依能はまだ持って無い』
『数珠で有るかも!』
『哲司。見た覚えが有るぞ』
『水の里?』
『そうだ。見に行って来る』
善姫さんが依能さんに寿司屋の話をしている。
「寿司は登録が終わったら行きましょう。また欲しがりの水神様が出て来るから登録が終わるまで話したら駄目だよ」
善姫さんに固く口止めをしておく。
水美が帰って来た。
『有ったぞ。2本も有った』
これで上手く行けば無任所の精霊を雇う事が出来る。
食べ終わったのでサピカ村の家に移動した。中庭に移動して依能さんは服を脱いで用意をしている。
「またやるから善姫さんは風呂を入れて。強い妖術使うから、中で待っていて下さい」
「はい」
水美と手を繋ぐので、善姫さんが居るとやり辛い。
『サッサとやるぞ』
立っている依能さんを俺と水美で囲み、依能さんに2本の数珠を付けて貰った。
俺と水美が依能さんを囲んだまま手を繋ぎ、依能さんが俺と水美が繋がっている手を握った。
集中を3人で高めていく。主導は相変わらず水美だ。
『『『術解除』』』
依能さんが、ものすごい握力で我々の手を握って来た。上を向き口をパクパクしている。
『『術解除』』
次の術解除で身体が震え、涙や鼻水、涎が流れて美人が台無しになっている。
『『術解除』』
「ギャー」
真上をむいて悲鳴を上げると身体が震え、座り込んだ。
水美が依能さんに一生懸命浄化をかけている。このままでは風呂に運ぶのも躊躇してしまう。
浄化が終わると依能さんが27歳くらいに見えるようになっている。垂れかけた大きめの胸も少し上向きになった。
終わった? という顔で善姫さんが顔だけドアから見せている。
「風呂に運ぶよ」
「私がやります」
善姫さんが依能さんを浮かべて運んで行く。
『善姫も上手くなっているな』
水美が感心して見ていた。
依能さんをサッと洗ってから水郷城の屋敷に飛んだ。知世さんと善姫さんが2階の風呂に入れ直して妖力と体力の回復をしてあげている。
『哲司。依能の能力を見たか?』
『飛翔や透明は戻っているね』
『妾は全て戻ったと思う。妖力も2倍くらいになっている』
『じゃ、何一つ取られて無かったの?』
『そう見せ掛けていただけだ。《豊饒の精霊》も消されて無い。公式には依能はいまだに《豊饒の精霊》なのだ』
『光の精霊は随分と好き放題にやったものだね』
『あいつも250年、喘いでいると良いさ』
水美が凄く冷たい。
『光の精霊のまま?』
『光の精霊は必要だから、取り上げになって無任所の精霊らしいものになるか消滅だろう』
『消滅では可哀想だから今の生活を維持出来るようにしてあげたいね』
水美が笑っている。
「旦那様、お風呂上がりました」
「全員、汗が引いたら服を着てね。タマ次郎さんに来て貰って手続きするから」
「「「はーい」」」
長風呂して話し込んでいたようだ。知世さんまですっかり仲良しになっている。
タマ次郎さんに来て貰ってサッサと手続きを終わらせた。
月給金貨20枚、支度金300金貨、慣れるまで2階の客間に住んで貰うが、1週間後には水郷城の医者用の一軒家に住む事も可能。開拓の土地の面倒を見て貰う。
「嬉しいです。得意分野ですから」
そりゃ豊饒の精霊だものね。
「さて、水神様に挨拶に行こう」
水神様は話を何処で聞いたのか待っていた。
「豊饒の精霊よ良く来た。水郷城は歓迎するぞ」
「水神様。本当にお久しぶりです」
「苦労したらしいのう。私の配下にある限り誰にも手を出させんので、安心して暮らしてくれ。明日中には神々に伝えておく」
『安全保障を貰えたな』
水美がニヤニヤしている。依能さんがホットした顔で嬉しそうだ。
「250年ぶりの水郷城の暮らしが楽しみです」
「どれ、妖術は全て新しく更新して、減らされている妖力は戻してやろう」
水神様は大盤振る舞いだった。色々と話を聞いて怒っている。
「哲司殿。祝いだな」
水神様から寿司の催促が来た。
「では全員で行きますか」
知世さん、善姫さん、宣姫さん、一眼姫とピョコリ瓢箪が万歳をしている。
寿司屋は天狗さんまで現れ、また貸し切り状態になってしまった。




