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第5章08話

第5章08話


 10月の神様会議が開催された。今回は大物の神様が来ており水神様も鼻が高い。

 我が家の知世さん、善姫さん、ヤヤさんが泊まり込みで手伝いしている。何をしているのか知らないけど。

 一眼姫とピョコリ瓢箪まで城に行ったきりだ。

 俺は手伝わない分、1回、寿司屋のオヤジを派遣して城の昼飯を好みで握らせたらとても感激された。


 神様会議は1週間続くので水郷城は大騒ぎになっている。俺は問題が起きて呼び出されない限り水の里で過ごさせて貰っている。


『哲司。6週間の休暇だな』


『水美とこんなにゆっくり出来るのは嬉しいよ』


『飽きたり退屈になったりしないのか?』


『しなーい』


 水美が嬉しそうにしている。


『光の精霊の治療に行かないとな』


『行ってみようか』


 ヤマコ村に行くと光の精霊の周りは順番待ちになっている。光の精霊も満足そうに相手をしている。


『光の精霊と相性が良いのかな?』


『精霊を相手にすると力を貰えるのだろう』


『精霊は妊娠しないから、これ専用?』


『そうだな。正規の精霊のままだからな。少し力を足して、ついでに治療して来る』


 水美が光の精霊の所に行って治療している。あれから2週間程経つが、毎日忙しく過ごしているようなので時折水美が力を足してたりしている。

 依能さんは毎日見物に来て治療しているそうだ。一週間治療しないとボロボロになるらしく、大分良くなって来た風の精霊さんも来て面倒を見ているそうだ。


『皆に気に掛けて貰って幸せ者よ。これで寝ないでも楽しめるだろう』


 ヤマコは光の精霊が弱らないから休み時間無しで活動しているようで互いに良いようだ。


『精霊界では光の精霊が不在なのに問題無いの』


『皆、見に来たいのだが場所が分からんので残念がっている』


『助けたい精霊は居ないの』


『おらんな。精霊の恥みたいな扱いだ』


『自業自得だね』


 小物達が集まって見物している。興味津々のようだ。


『精霊と妖怪は近いといえば近い関係だから気になるのだろう』


『妖術の掛かる関係みたいなもの?』


『いや、存在自体の問題だ。だから天狗と風の精霊も良い相性なのだ』


『余り長く居ると気分が悪くなって来る。帰らぬか?』


 水の里で風呂に入って身体を清める。


『なあ哲司。樫の国も襲っておかないか?』


 風呂の中で思い付いたように水美が言って来た。


『確かに貧乏にしておけば戦争出来ないよね』


 水美と樫園城に飛んだ。相変わらず大きな城で城下町も栄えている。何故戦争をしたがるのか不思議なくらいだ。


 屋根の上で水美と手を繋いで集中する。


『術解除』


 簡単過ぎるくらい簡単に結界が解けてしまった。


『収集』


 俺の皮袋にも入って来た。とりあえず水の里に逃げる。


『水美の皮袋1と半分だね』


『秋の税金が入ったのだろうが、金持ちな国だ』


『また商人だろうね』


『戦争が有ると大店が儲かるからな』


 というわけで大店を狙いに戻った。


『大店が10店くらい有るな』


『全部、政商という話だよ』


『じゃ全部やろう』


 水美と片端からやって行く。城より結界がしっかりしているが、なんとか全部終わらすことが出来た。


 水の里に帰って風呂で体力と妖力を回復する。


『さすが大店だな。結界が強固だった』


『妖力がギリギリだったよ』


『どれ、足してやろう』


 水美に妖力を足して貰って身体が楽になって来た。


『城より良い妖術使いを雇っているのかな』


『だろうな。だから戦争をしたがる』


 風呂から上がって居間でゆっくりしていると、水美が皮袋を調べている。


『8袋満杯だ。後は皮袋4分の1くらいだな』


『樫の国は笹美の国より金持ちなんだよね』


『樫の国があちこちと揉めている理由が分かるな』


 床の間に水美皮袋ずらりと並んでいる。


『水郷境と水郷城なら何十年も無収入で大丈夫なくらいのお金だね』


『哲司。屋敷の3階に誰か戻ったぞ』


 水美と俺は執務室に着いて、如何にも仕事をしていたかのようにして出て行った。

 善姫さんだった。


「旦那様、仕事の邪魔をしました」


「どうしたの?」


「休み時間です。2時間貰ったので屋敷で休もうと帰って来ました」


 善姫さんは屋敷が好きらしく、時間が有ると帰って来る。知世さんは必ず城で休む。


 善姫さんの体力が落ちているようなので、サピカ村の家に連れて行った。

 知世さんはサピカ村に近付かないが、何故か善姫さんはこの家で回復する。


『善姫はここだと自由だから回復するのだ。一人だと外には行かず、此処で風呂に入って居間で寝ているぞ』


 すぐに風呂を沸かして入ると、善姫さんの顔色が良くなって来た。


「人に酔ったのでしょう。自由にしていると治りますよ」


「それで疲れ易いのですね」


「妖力も溜まり過ぎなくらいですからね」


『神々にあたったのかも知れないな。城中、力だらけだからな』


 善姫さんは風呂から上がって、俺にキスすると寝てしまった。


『余程疲れたのだろう。もう3日くらい神々と居るからな』


 知世さんは大丈夫なのだろうか?


『知世は妖力や神様の力で元気が出るのだろう。まだまだ不足しているのだ』


 なる程と思った。


『善姫は6時間くらい起きない筈だ。どうする?』


『水美が風呂を入れてくれれば効果が有るよ。置いて行くのも心配だし、2人で久し振りにここの風呂に入ろうよ』


『そうだな』


 この家の風呂からの景色はそれ程良く無い。なんか殺風景なのだ。林や森、川など全てに息吹を感じさせないと言うのだろうか。

 サンリン町の繁華街に居ても活気が足りない。そもそも人間と妖怪の居ない場所で、飛ばされて来た色々な人の寄り合い所帯を作ったからなのかもしれないな。


 風呂から上がって、善姫さんの隣でビールを飲んでノンビリとする。


『水美。善姫さんが起きたら、我々も水郷城に行って天ぷらでも食べようか』


『そうしょう。華やかな街も見たくなったし妖怪達も見たい』


 同じ事を考えていたようだ。




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