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第5章07話

第5章07話


 家に行って客間に通した。


「善姫さんは2階に居て。少し強い妖術を使うから」


「はい旦那様」


「済まないね。私の名は依能よりの


「河瀬哲司です」


「河瀬の御屋形様だったのかい」


『水美だ』


『中庭でやる?』


『そうだな』


 上手く元に戻るとサイズが変わるので服を脱いで貰った。

 水美と手を繋いで依能さんを囲んだ。集中を高める。


『『術解除』』


 依能さんがボッと光る。


『『術解除』』


 追加で術を掛けて行く。大分光が強まった所で変身が始まった。腰が伸びシワが無くなり骨も太く真っ直ぐになって来ている。


「ううう」


 本人は辛いらしく少ない歯を食いしばり、上の方を見て唸っている。


『『術解除』』


 お構い無しにもう一度掛けると若返って来た。白髪は濃い緑に変わり、玉子形の顔に日本人みたいな一重瞼。170センチくらい。30歳くらいまで若くなって終わった。


「歯を治しますね」


 俺は治療と再生で歯茎の治療後、歯を揃え直した。歯が揃ったら綺麗な人だった。


「服は着れるサイズでなくなったね。善姫さんに貰うよ」


 俺と水美は依能さんを連れて1階の風呂に行き湯を入れた。

 更衣室の鏡を見て依能さんが泣き出した。


『俺は2階に居るから終わったら呼んで』


『分かった』


 水美に依能さんを任せて、善姫さんに抱きついたりして遊んでいると呼ばれた。

 善姫さんに頼んで先程買ったワンピースを1つ複製して貰って1階に戻った。


『ご丁寧なものだ。飛翔、透明化、飛行、移動は消してある』


『妖力の回復能力は?』


『問題無い』


 俺の皮袋を探ると、飛翔枝と透明数珠、飛行数珠、移動数珠、妖力増加数珠が出て来た。


「片腕に2本ずつを我慢すればなんとか使えるよ」


「一財産ですよ!」


「構わない。あげるよ。使っているうちにまた生えて来るよ」


 依能さんがまた泣き出した。若くなったら可愛い声に変わっていた。


「服を渡すの忘れていた」


「室内では必要無いです」


「これで妖獣を簡単に狩れるから、すぐに金持ちになるよ」


『そうだな。攻撃系は結構高いしな。治療が高いから医者もなれるぞ』


『通行手形と商人登録は』


『持ってます』


『じゃ御飯に行こう』


『ハンバーグモドキとビーフシチューだな』


『初めて聞く食べ物です』


『美味しいですよ』


 2階に善姫さんを呼びに行くと、新しい服とポーチで待っていた。


「武装も全部入るので便利です。肌触りも良いです」


「御飯に行きましょう」


 1階で依能さんが待っていた。


「依能さんだよ。善姫さんです」


「御屋形様には世話になってばかりで、元の姿に戻して貰いました」


「凄いです! 綺麗な方でビックリです!」


「回数をかけるともっと若くなると思うけどね」


 いつもの食堂で注文をしてエールで乾杯をした。


「ヤマコ村以来まともな御飯は食べて無いので楽しみです」


「えー! 依能さんもヤマコ村出身ですか。私もですよ」


「善姫さんがですか! ヤマコが喜んだでしょう」


 アンタら大きな声で何を話すの。また水美が笑っている。


『水美。まさかと思うけど、風の精霊さんは……』


『可能性は高いような気がする』


『今日も行ったら居るかも』


『妾は居ると思う』


『天狗さんは何故助けないの』


『助けられないのかも知れない。精霊は力も強いし誰かが邪魔したら風の精霊の救助は難しいぞ』


 確かに精霊は力が強い。水美に俺は常に組み伏せられている。


『邪魔って』


『結界かもな』


『天狗さん用の結界?』


『妖術は掛かる集団みたいなのが有って、精霊と妖怪は不思議な事に同じ集団だ。人間は特別で別枠なのだ。そうだな天狗がよく陰陽師に術を封じられて、哲司が助けただろう? だが哲司は封じられた事は無い。これが妖術の適性と言うか不思議な所だ。

 ヤマコが善姫に掛けた術は解辛かったのも同じ。風の精霊が逃げられないようになっていると天狗も入れない』


『じゃ俺なら?』


『簡単に壊せる可能性は有る』


『後で行ってみようか』


『どうする?』


『だって風の精霊さんが風呂屋に来ているように、ヤマコに毎日のようにヤラレに来ているとは考え辛いよ』


『確かに言えているな』


 ヤマコ村組みは話が弾んでいる。


「先日、ヤマコの排泄物と香の臭いで久し振りに身体が熱くなりました」


「私も分かります。老いさせられていた時でさえヤマコの毛皮に付いた排泄物で発情しかかりました」


 俺は善姫さんをヤマコ村に連れて行くのが危険に思えて来た。


「旦那様、今ではヤマコには何も感じませんので大丈夫です」


 善姫さんは笑って俺に言って来た。


 配られた料理はとても美味しく、エールに合うので次々と頼んでいる。


「また、この様な美味しく贅沢な物を食べれるなんて」


 依能さんがまた泣き出した。


『泣き上戸かの』


『綺麗な人が泣くと絵になるけどね』


『250年振りじゃな』


 俺と水美はそろそろ行こうと立ち上がった。


「連れて行って下さい」


「旦那様、私も」


「ここなり、家で話していれば?」


「絶対邪魔にならないようにします」


「分かった。指示に従ってね」


 我々は透明化してヤマコ村に飛んだ。


『居た』


『天狗さんも居る』


『どうする?』


『俺は俺で切り込む』


『風の精霊は私が確保しょう』


『光の精霊が邪魔したら?』


 依能さんが聞いて来た。


『出来んだろう。水神様と水の精霊を敵に回すことになる』


『自分達の安全の為ならヤマコも女も全滅させる。風の精霊さんの確保を優先しよう』


 依能さんも善姫さんも戦い易い姿になっていた。善姫さんは薙刀を構えていた。

 風の精霊さんに近づいて行くと例のうめき声が聞こえて来た。まだ自分と戦っているように見える。俺はその時、風の精霊さんはまだ正気に戻れると確信した。


『行くぞ!』


 俺は急降下して風の精霊さんを正面に抱えているヤマコの首を跳ねた。風の精霊さんが後ろから抱えているヤマコにのけぞっていたので、簡単に出来た。後ろのヤマコから風の精霊さんを離して斬ろうとしたら、善姫さんが薙刀でヤマコを斜めに斬り倒してくれた。

 水美が風の精霊さんを抱えて枝に戻ろうとした時、何かが風の精霊さんの手を掴んだように風の精霊さんが傾いた。


「現実化」


 俺の現実化で女の人が瞬間見えた。


「現実化」


「現実化」


「現実化」


 もう3回唱えると風の精霊さんの腕を確かに掴んで引き戻そうとしている女がはっきりと見え出した。


「術封じ」


「拘束」


 同時の術封じと拘束が効いたようで女が驚いた顔をしている。水美が枝の上に風の精霊さんを運び、善姫さんも上空に逃げたので俺も女を警戒しながら飛び上がった。

 女はあっという間にヤマコに捉えられ、着物を剥がされていた。


『哲司、凄いぞ光の精霊を封じ込んだのだぞ!』


『あれが光の精霊?』


『はい。私と同じ事になった光の精霊です』


 依能さんが無表情で教えてくれた。

 光の精霊の口にヤマコの祈祷師が何かを入れ、術を掛け始めた。


『終わりだな』


『誰かが助けなければ、もう戻れませんね。旦那様に敵対した報いです』


 善姫さんも冷たく言い放つ。


『早く戻って風の精霊さんを治しましょう』


 下から嬌声が聞こえ出した。全く罪悪感は無かった。

 天狗さんが我々を見つけた。風の精霊さんだけ透明化して無いので分かったらしい。


『天狗は透明化した者が分からないみたいだな』


「天狗さん移動するよ」


 天狗さんとサピカ村の家に着いた。


「哲司。助かった。俺には助けられなかった」


「すぐに術解除をするから。依能さん手伝って下さい善姫さんは風呂を」


「「はい」」


 暴れるので拘束して、水美と俺と依能さんで手を繋いだ。集中していると水美が唱える。


『『『術解除』』』


 何故か全員で唱える。風の精霊さんが凄い形相で唸っている。


『『『術解除』』』


 風の精霊さんの声が悲鳴に近くなっている。天狗さんが慌てて結界を張った。


『『『術解除』』』


 風の精霊さんが長い悲鳴と唸りの中間みたいのをして、涙と鼻水と涎だらけで気を失った。身体がほんのりと光っている。


『術解除』


 天狗さんの結界を壊した。


『臭くてかなわん』


 水美の言う通り凄く臭かった。

 俺が治療と浄化をして終わった。


「天狗さん1階の風呂を用意してあるから使って」


「済まない」


 天狗さんを連れて行こうとすると、善姫さんが現れて連れて行ってくれた。


『天狗が目のやり所に困っていたな』


『見られている方に自覚が無いので、当分駄目だね』


「私はこれから飛ぶ練習と狩りをします。改めて礼に来ますが本当にありがとう御座いました」


「今日は泊まらないの?」


「御屋形様に沢山買って貰ったので、お金も有ります。高い部屋に泊まるのが夢だったので」


「そうですか。また連絡下さい」


 依能さんがどこかに飛んで行った。


 1階の居間に善姫さんが居た。買ったばかりの服を着ている。


「着るのが遅いよ」


「スミマセン」


 舌を出している。


「善姫さんはそろそろ風呂に入って、昼寝しなさい。活躍し過ぎだよ。俺は天狗さんと少し話すから」


「では2階で先に寝てますね」


 善姫さんが消えた。


「哲司。世話になった。風の里に連れて行くので失礼する」


「その方が良いよ」


 天狗さんも帰って行った。


『哲司。現実化なんて持っていたか?』


『無いよ。この数珠だよ』


 フーンという顔で数珠を見ている。


『今晩にでも本当の《現実化》を渡すよ。覚悟しておきなよ』


 少し寝ておこうと思った。



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