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第5章01話

第5章01話


 知世さん達が開拓していた土地も継続的に維持され、広がっている。現在では30家族を超える開拓民が入っている。

 役場の出張所や学校と病院兼施療院も作り警備隊も置いているのも開拓民が増える原因となっているようだ。


 ここは誰の領地でも無いので広げたいだけ広げられる。そもそもが不毛の地みたいな所で見向きもされなかったのだが、水郷境と同じ時の進みをする飛び地なので密かに開発を進めていた。

 最近は規模が大きくなったので隠しきれないので警備隊まで入れて開墾している。


「御屋形様、あっちの切り株を」


 俺は常に便利屋でしか無いが、ここで頑張っておくと来年からの税収が全然違うので気合いを入れて働く。

 開拓は進んでおり、俺が降り立ち、知世さんと初めて会った河原の寸前まで畑になっている。


「川も有るので将来的には稲作も出来ると考えております」


 開拓村の世話役が期待を込めて話している。

 折角来たので、知世さんの父上の墓参りをした。木の墓標だったのが墓石に変わり、大きな墓となっていた。

 世話役さんに感謝してから、知世さんを呼んだ。

 善姫さんと宣姫さん、一眼姫とピョコリ瓢箪も現れた。

 知世さんが父上の墓石を見て愕然としている。


「こんなに立派にして頂いて……」


 知世さんが世話役さんに深々と頭を下げて礼を言っていた。

 7ヶ月くらいの間に随分と変わったものだ。5軒のあばら屋は既に無く、60戸近い家が建っているのが川から見える。知世さんが墓石の前で泣いていた。

 宣姫さんや善姫さんも墓石に手を合わせてから知世さんを慰めていた。


 秋になると商人狙いの山賊が増えるらしい。特に水郷境の周りは好景気なので、他の地から集まって来るようだ。

 俺の良い収入源となっているので、もっと来て欲しい程だ。


『もう着物代は集まっただろう?』


『とっくに元は取っているけど、稼げる時に稼いでおかないとね』


 実際に3回買った着物代は稼いでしまったのだ。他所から流れて来た山賊が金持ちだった。


『年末も着物祭りか?』


『だって冬物持って無いでしょう』


『水神や宣姫も質素だったからな』


『丼勘定やっているから。自業自得なんだけどね』


『水郷城は黒字なのか?』


『誰も抜かなければ凄い黒字。水郷境が景気を上げているから、安泰だよ』


『軍事費も要らんしな』


『開拓村は守備隊を増やさないと駄目だけど』


 俺は1階に行ってタマ左右衛門に会った。


「開拓地ではご迷惑ばかり掛けまして」


「今年は仕方無いですよ」


「何か特別な御用で?」


「新開拓地に守備隊を増やそうと思いまして」


「確かに飛び地ですし」


「継続的に開拓するなら必要と思います。あと20人くらい配属すれば安心感も有るかなと」


「入植希望者も増えて選定中ですし、人口も増えて定住する商人が出て来れば良い方向に向かうと思います」


 タマ左右衛門の賛成をもらって、後は丸投げで済ます。


『哲司殿、今は何処におる?』


 水神様の呼び出しだ。


『屋敷の1階で開拓村に守備隊を入れる相談中です』


『順調に進んでいるようだな』


『笹美の国からも入植希望者が来てまして、水郷境に入れなかった人達を回しているので』


『そうか。ところで、美嶺城の老中がまた来ているのだがどうする』


『無視すれば良いですよ。宣姫さんを渡すことは水神様の面子が潰れるので有り得ない話しなのに、侍の老中風情をよこす事自体がふざけてます。相手は小国なのだからまずは俺に当主が挨拶に来るのが筋でしょう』


『そうだな。格式から言えば河瀬の家が上だな』


『無視して寿司屋でも行きませんか?』


『すぐに行く!』


 俺が寿司屋に行くと水神様が既にトロを摘まんでビールを飲んでいた。


「皆は少し遅れて来る。話さぬか」


「何か新しい動きでも?」


「何故か美嶺城が強気で言って来ているので不思議でな」


「構わないですよ。戦争も受けて立つと言って良いですよ」


「本気か?」


「本気です。笹美城でも美嶺城でも跡形無く無くして見せますよ」


「私と哲司殿だけでも、確かに簡単だな」


「後に治安維持をしなくて良いなら今すぐにでも」


「実は哲司殿が善姫を嫁にした事を伝えておらんのだ」


「必要無いですよ。美嶺城は責任放棄していたし笹美城は現在、半分戦争状態ですから」


「それもそうだな」


「そもそも、神様を舐めている。今回はギュッと言わせましょう」


 水神様が御機嫌になった所で、宣姫さんと我が家の連中が入って来た。


「旦那様、もう宜しいのですか?」


 善姫さんが心配そうに聞いて来た。


「良いよ。話しは終わった」


 宣姫さんと知世さんは無言で必死に寿司に取り掛かっている。


「哲司殿と善姫は母上探索を続けるのか?」


 難しい決断だ。


「御屋形様には仕事も有りますので農閑期にでも後1ヶ月くらいやって、結果が出なかったら中断で宜しいと思います」


 善姫さんが水神様に言ってしまった。


「そうだな、今更見付けるのも大変だろうしな」


「あちらは治安も良く無いので、御屋形様抜きで捜索は難しいのです」


 善姫さんも最近は知世さんと手分けして神様の祠巡りをしてくれたり、すっかり河瀬の家に馴染んでいる。

 お家大事を優先してくれるのが有り難い。


「前に天狗が飛ばされた所も探すと良いかも知れないぞ」


 水神様が思い付いたように言った。


「笹美城御用達の地ですものね」


「天狗にヤマコが居たか聞いておこう」


 俺は開墾の見回りを理由に席を外させて貰った。


「後で払いに来るから、好きなだけ食べさせてあげて」


「あいよ」


 水美と水の里に逃げ込んだ。夕刻までだと24時間使える。


『風呂に入ってから昼寝だな』


『うん。汗で気持ち悪いので風呂が楽しみだよ』


 風呂で洗って貰って、体力を足して貰ったら寝てしまった。



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