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第4章08話

第4章08話


 水の里ですっかりリフレッシュして余裕を持って宿に帰ると、朝の5時ですっかり明るくなっていた。

 裸の善姫さんが布団からはみ出て寝ているのを見ると、身体に怪我の跡が沢山付いている。帰って来てまともに治療していなかったようだ。


「オハヨウございます。早起きですね」


 見られているのに気にもしない。


「何故か起きてしまいまして。ところで善姫さん随分と傷だらけですね」


「こちらで暮らしていた時の傷跡ですよ」


「治療しましょう」


 丁寧に再生で傷跡を消してゆく。古い焼き印の跡まで有った。1時間くらいかけて水美と全部消した。


「傷跡が消えるなんて……信じられません!」


「新品同様ですよ」


 目のやり場に困るので浴衣を着て貰って洗面所に行かせた。


『天狗みたいな趣味の奴らに捕まったいたようだな』


 天狗さんが変態の代名詞にされている。


 善姫さんが帰って来たので、水美コレクションから御飯を出して朝ご飯を食べた。


「美味しいです!」


「保存皮袋に入っていたヤヤさんの朝ご飯ですよ。ここの不味いから」


 今日の予定を話しながら朝食を終わらせ、着替えて出発準備をした。


 門まで歩いて外に出てた。


「まだ妖力が完全回復してないですね」


「はい……」


 仕方無いので手を繋いで妖力を与えながら飛ぶことにした。


『水美、善姫さんの妖力回復は少し変だぞ』


『妾もそう思う。安全な場所で1度着陸して見てみよう』


 水美お勧めの草原で着陸する。


「善姫さん、妖力回復がおかしいですので調べますね」


「お願いします」


『妖力消費も、やたらと多い。哲司、足してやれ』


「あの……妖力を一度いっぱいにしないと分からないので」


「哲司様が気持ち悪くなければ自由にして下さい」


『哲司、役得だぞ。喜べ』


 俺は口移しで善姫さんの妖力を満杯にした。


『どうだった?』


『からかうなよ』


 水美がゲラゲラ笑っている。


『何かおかしいな』


 水美が善姫さんを見ている。


『術解除』


 俺がやったように見えるように、同じ妖術をかける。


「術解除」


 水美が術解除をすると善姫さんがボッと光りを帯びた。そこに俺の術解除が掛かり光りが力を増した。何か術を掛けられていたようだ。


「善姫さん、空を少し飛んでみて」


 善姫さんは10分くらい飛んで戻って来た。


「妖力が減らないです!」


『ヤマコか山賊に善姫が妖術で逃げないように、術と妖力に制限を加えていたのだろう』


 善姫さんに説明すると、納得していた。


『随分長く効いている妖術だね』


『人を負の方向に向かわす術は長続きする』


 水美の説明に何となく理解してしまった。


『原因は消えたようだから、妖力の回復は使っているうちに戻って来ると思うぞ」


 善姫さんは妖術は結構持っているので、元々は妖力は豊富だったのだろう。


 これでやっと仕事にかかれる。我々はヤマコの村を探す為に空から集団を捜していた。


『20以上の集団が在るぞ』


『俺も探知した降りよう』


 善姫さんにも説明して林の中の草むらに着陸をすると、残念ながら3メートル近く有る大きさの狼の群れだった。


『降雹』


 水美が終わらせてしまった。


『先制攻撃で簡単に終わらせないと、こっちが危険になるからな』


 水美の言う通りだ。相手が何であろうと先に攻撃して反撃させないのが一番だ。


「回収します。探索の資金作りになりますので」


 善姫さんも手伝ってくれたので、巨大狼の回収は早く終わった。13頭だった。


「ヤマコの村も捜しますが少し大きな村も捜します。獲物を分散して売らないと、せつかく狩った妖獣の値段を自分で下げますから」


「こっちに行けば在ると言ってましたね」


 善姫さんが宿の女中さんに聞いていた。


『哲司。ここには妖怪が余り見えないな』


 ヤマコを妖獣と分類するなら、殆ど見ていない。普通ならもっと小物がウロチョロしているのに。


「善姫さん。ここは妖怪は少ないの?」


「少ないですね。日に3匹くらいしか見ませんでした。普通の人は見えない物だから気にならないのでしょうけど」


「水郷城と水郷境に多過ぎだからね」


 日に3匹くらいなら今の日本くらいかな。俺の住んでいた所は田舎だから、もっと多かったけど。


「小物を見つけて情報を聞きましょう」


『少し歩くか』


 水美が林の中に入って行く。木漏れ日からの日光が丁度良く温かい。

 俺の少し離れた左側からガサガサ音がすると、隠れた何かの獣が見えた。


「氷撃」


 危ないので取り敢えずぶっ放すと、大きいのが倒れた。鋭い角を持った鹿に似た妖獣だった。


「ここは何でも大きいな」


「そうなんです。普通の猟師何人かでやっと狩れるようです」


「村の肉不足も理解出来る」


 水美皮袋に鹿を回収していると草むらで動く者が見えた。


「オイ、小物。出て来いよ」


 少し緑色で2足歩行のトカゲ型小物が出て来た。


「人間。見えるのか?」


「見えるぞ。お前どこから来た?」


 妖怪の話している言葉は日本語だった。


「笹美城の近くを歩いていたら飛ばされた」


「そうか、この辺りにヤマコの村は無いか?」


「教えたら、何くれる」


 水美皮袋の中を探ると、小物の好物が有った。複製してから皮袋から出した。


「この握り飯はどうだ?」


 小物の眼の色が変わった。


「村は無い。ヤマコが7人くらい居る」


「どこだ?」


 おにぎりから目を離さない。


「その山の洞窟」


 おにぎりを渡すとすぐに食べ出した。俺はおにぎりをもう1つ出して見せた。


「案内は出来るか?」


 小物は首を縦に振っている。


「人間の女1人居た」


 我々の目的が分かっているようだ。おにぎりを食べ終えると小物が歩き始めた。


「妖怪が少ないのか?」


「そんな事は無い」


「余り見ないぞ」


「隠れている。食べられる」


「妖獣にか?」


「そうだ」


 ここの妖獣は小物を食べるようだ。


「沢山狩ってくれ。助かる」


 山はそんなに遠くなかったが、途中で猪を狩った。


「普通の猪だ。珍しい」


 妖獣の方が多いようだ。


「あの洞窟だ」


 小物が指差した所に洞窟が有った。俺がおにぎりを渡すと、走って居なくなった。


『外にヤマコが7人、女は1人だな』


 小物の言う通りだった。


「ヤマコは明るい間は外で過ごしますので、洞窟内はカラだと思います」


 善姫さんは流石に詳しい。


『片付けるぞ』


「女性の安全を考えて、個別撃破にします。女性の周りのヤマコは俺がやりますので、善姫さんは離れた奴らを」


「わかりました」


 俺は透明化して女の正面のヤマコの首を横から切り落とし、驚いている女の後ろに居たヤマコを刺し殺した。


『氷撃』


「氷撃」


 即座に水美と俺は氷撃で周囲のヤマコを倒し、俺は近くのヤマコを袈裟懸けで斬る。

 少し離れた場所のヤマコは善姫さんが薙刀で2体斬り倒していた。


「善姫さん、女性を頼みます」


 俺と水美は洞窟内を探索して、他のヤマコが居ないのを確認して終了した。


「善姫さん、母上ですか?」


 違うと分かっていたが、一応聞いてみる。


「違います」


 女を見ると30代後半のキツイ顔をしていた。呆然として眼の焦点が合ってない。

 浄化と治療を水美と一緒に掛けまくってから洞窟内を調べた。


『今、集めたらこんなに金が有ったぞ』


 金貨と銀貨が沢山水美の皮袋に入っている。


『ここは山賊の洞窟で、ヤマコに乗っ取られたんじゃないかな』


『それ臭いな』


 武器や着物とか色々と有る。めぼしい物は懐中時計と数珠数本だけだった。懐中時計を再生してから善姫さんにあげた。

 善姫さんがとても喜んで時計を見ながら西洋式の時間を復習していた。



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