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第4章03話

第4章03話


 あれから2週間くらい経つが、今の所効果が上がっているらしく何も起きていない。樫の国も越境して来ていないし、笹美城からの水郷城と水郷境への介入も起きていない。


「ここの所、平和だな」


 水神様には、俺が両国を襲った事は話していない。水郷城に笹美城と繋がっている奴が居る可能性が有る限り、黙っていた方が得策だ。

 樫の国と笹美の国がお互いに疑り合ってくれた方が、こっちが安全だ。


「不景気なので戦費が出ないのかも知れませんね」


「なる程な、哲司殿の言う通りかも知れないな」


「樫の国も水不足にしませんか? 樫園城の周りだけでもドタバタさせて置いた方が安全です。樫の国の越境の為に国境辺りの畑は全滅状態で、水郷境へも難民が来てますから」


「そうだな。笹美城の時みたいに3分の1にする事からにするか?」


「とりあえず、それで十分だと思います」


「ではそうしたぞ」


 水神様は最近、とても素直で交渉し易い。


「3年くらい前までの帳簿を検査した所、ごまかしだらけで帳簿になっていないとタマ左右衛門が怒ってますよ」


「前の宰相が居た頃だな。困ったものだ」


 完全に他人事だ。


「この3年は帳簿が付いていないので、水神様の覚え書きと領収書や納入書から帳簿を作っている所です」


「済まないな。帳簿は付け方が分からんので、収入と支出は私の覚え書きと書類を溜め込んで置いたのだ。役に立ってて良かった」


 全然良くない。


「現在、徴税簿と水神様の承認書類を比べてますけどズレが出てますよ」


「どういう事だ?」


「承認書類を持って来た者が改ざんして、ごまかしてお金を抜いてますね」


「なに! 本当か?」


「後でタマ左右衛門と担当者をよこしますので、説明を聞いて下さい」


「分かった……」


「支出はまだやって無いのですが、相当ごまかされていると考えられます」


「そうか……済まんな。手間を掛ける」


 自分が何もして無かったので、少しは責任を感じているらしい。

 そもそも、どんぶり勘定で運営出来る規模では無いのだが、流石に神様だけあって3年も何とかなっていただけ奇跡だと思う。


「所で来週の神の会議だがヤヤを貸してくれぬか?」


「良いですよ」


「助かるな。ヤヤとスミが居れば万全じゃ」


 新しい着物の御披露目式で頭がいっぱいのようだ。どうせお盆にも集まって宴会だろうし、仕事をする気は無いようだ。


「難しい事はタマ三郎がやってくれるので助かっておるぞ」


 タマ三郎さんも大変だな。


「そうそう。神の会議の時、知世も借して欲しいのだが」


 好きにしてくれ。どうせ善姫さんと宣姫さんも勢揃いでやるのだろう。


「どーぞ」


 水神様がご機嫌になった。


 適当にお暇して屋敷に寄ってタマ左右衛門さんに会う。


「水神様は全部、こっちに丸投げ気分です」


「困ったものだよね。河瀬の家が水郷城を懐柔しているなんて思う奴も出来る可能性も有るし」


「そうですね。それだけは避けないと」


「でも、自分でやる気が全く無いよ」


「少なくとも徴税の季節だけでも乗り越えないと……」


「暫くは家でやるしか無いか」


「……ですね」


「勘定方の人数を増やそうか?」


「私もそれを考えていました」


「適当に何人か雇ったら?」


「考えておきます」


「後で水神様の所に行って、この3年間の徴税簿と水神様の承認書類との差額の話しを担当者と行って話して来て」


「はい……でも、まだ1年分も終わってませんが」


「構わないから、今日中に行って下さい。神様会議とか、お盆になると何を言っても無駄になるから」


「承知しました」


 タマ左右衛門さんに色々お願いして、詰め所を出ると知世さんが待つていた。


「……あの、旦那様」


「何ですか?」


「水神様から呼び出しが有りまして……」


 知世さんも言い辛いようだ。


「構わないよ。楽しんでいらっしゃい」


 新しい着物が届いたばかりだ。どうせ神様会議に、かこつけて皆でファッションショーゴッコなのだろう。


「俺は夕食時も人に会わないとならないから、城で食べておいで」


「旦那様、有り難う御座います」


 知世さんが嬉しそうに風呂敷包みを持って飛んで行った。

 ヤヤさんに食事は要らないと告げて、水郷城に行く許可も出すとヤヤさんも同じようにすっ飛んで行った。


『水美。自由だぜ』


 今、朝の10時だから夜の8時に帰るとしても10時間。水の里だと約60時間使える。


『久々の完全休暇だ』


『釣りでもするか』


 水美に誘われて釣りに行った。川っ縁で糸を垂らしているとカッパさんが来た。


『何を釣ってるの?』


『考えてない』


『暇つぶしだ』


『鮎が釣れる』


『それは良いな』


『カッパさん集めてよ』


 カッパさんが10匹くらい捕まえて来てくれた。


『塩焼きにするか』


 水美が火を起こして、焚き火の周りに鮎を斜めに立てていく。小物の妖怪も集まって来た。

 水の里の妖怪はヒマらしい。食べる者が増えたので、カッパさんが追加で鮎を捕まえて来た。


『水郷城と違って平和だな』


『水郷城より平和なのは異常だよ』


『言えているな。ここは何も起きないからな』


『俺と水美しか居ないもん』


 釣りに来た筈がカッパさんに任せて、小物達と食べる側になっている。水の里の小物達は人なつっこい。


『水の里の妖怪達は水美が見えるの?』


『妾が見えるようにしている。水の里で生まれて育った妖怪達だけだがな』


 そんな事が出来るんだ。

 カッパさんと小物達のお陰で楽しい昼食だった。



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