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第1章05話

第1章05話


「ホレ、こいつ等の持っていたカネじゃ」


 妖術で漁ってくれたようだ。金貨が21枚、大銀貨が16枚、銀貨と銅貨は数えなかった。沢山有ったことは確かだ。全員の物だったのだろう。立派な皮袋に入っていたので、昨日貰った金貨と一緒にして肩掛けバッグに入れた。


「一眼姫。アリガトな。考えもしなかったよ」


「早く、この世界に慣れないとな」


 一眼姫は俺が迷い人と知っているようだ。マジマジと一眼姫を見てしまった。


『ところで哲司。お前は先程結婚したのが分かっているのか?』


 一眼姫の言葉が頭に直接響いた。


『お前の世界でも、女子に短刀を与えるのは結婚の時ではなかったか? 匕首あいくちとか言ったかな。お前の世界は良く分からぬが、この世界では小刀を男が渡すのは結婚の申し込みだ。知世は謹んで受け取ったのじゃ』


 俺は愕然とした。匕首を結婚時に自害用に渡す習慣は聞いたような気もするが……


『今更、間違いとは言えぬぞ。知世を見てみるが良い』


 知世さんは赤い顔で嬉しそうに大八車を引いている。


『お前が否定すると自害しかねないぞ』


『……わかった』


 脱力感が身体いっぱいに広がって行く。知世さんが嫌いな訳では無いし……俺なんかの嫁じゃ申し訳無いくらいなんだが。


「知世、聞け。お前の家は父の代まで武士だったな」


「ハイ。でも今は開拓の百姓ですので」


「名字は何と言う」


「河瀬でございます」


「村に行ったら庄屋の所で哲司を河瀬の婿にしろ。文句を言うのは、もう生きて居ないだろう」


「私は構いませんが……哲司様は」


「哲司そうしろ。今は戦時だから緩いが少したったら斉藤哲司では帯刀も出来ぬし関所も通れぬ。大きな街も入れぬぞ」


 説得力の有る説明たった。これで小刀の言い訳も言えないのが決定な訳だった。


「……分かった。知世さんに任せます」


 知世さんが凄く嬉しそうな顔をして喜んでいる。いきなり美人の婿さんか……


「では、そうしろ」


 一眼姫は少し未来も見えるようだから任せようと思った。


「一眼姫。俺の妖力はどの位有るんだろう」


「哲司の妖力は沢山有るぞ。今のところ氷球を30発くらいは軽く撃てるだろう。人や妖獣を倒せばまた増える」


「じゃ、さっき撃ち止めてバカみたいたったな。知世さんまで危険に晒してしまった」


「何、失敗して覚える物じゃ」


「知世さんの小刀も妖力を通せるみたいな気がするのだけど」


「通せるぞ。知世、種火をつける時のように妖力を集中するのじゃ。小刀にな。先程1人倒したので結構妖力が上がっておる」


 知世さんが小刀を抜き、右手に持って集中し始めた。小刀が徐々に青く光り始めた。


「そうじゃ。良いぞ。そのまま頑張るのじゃ」


 小刀がどんどん光りを増して、一定の光りになって来た。


「そのままじゃぞ」


 知世さんが頑張って維持していると、急に光りを増して消えた。


「終わったぞ。知世専用の刀じゃ。使う時は妖力を通して使え。折れることも無いし、切れ味が違う。ま、夫婦刀じゃな」


 知世さんが嬉しそうに鞘に入れて小刀を抱えて赤くなっている。


「行きましょうか」


 知世さんが大きく頷いて大八車を引き出した。


 いきなりカラス天狗が飛んで来て話し始めた。


「哲司とやら。このまま村に向かうのか?」


「そうだよ」


「……豪気じゃな。一眼姫は里を出るのか?」


「家出じゃ。どこに行くか決めておらん」


「そうか」


「お前こそ、ここらで遊んでいると天狗に怒られるぞ」


「天狗様が見て来いと言ったのだ!」


「相変わらず暇な天狗じゃな」


 フンと言った感じでカラス天狗が飛んで行った。


「この世界にも天狗様が居るんだ」


「お前の想像する天狗とまるきり違うがな」


「どんなんだろう?」


「犬耳の少し良い男前だぞ。見た目だけはな」


「犬耳!」


「天狗は天犬だろうが」


 成る程と思った。


 暫く歩いていると草原に出た。村は先に少し見える林の隣だそうだがまだ見えない。何か騒がしい音がする。歩き続けていると音は刀の当たる音のようだ。

 俺が刀と言っているだけで、この世界では軽く反った剣を使っている兵士もいるし、見た目は刀に似ているが両刃の直剣みたいなのを使っている人も居る。

 黄色のくすんでいる服を着ているのが敗残兵なのだが目の前の戦いは圧倒的に敗残兵有利だった。俺達が近くに行った時には10人対50人くらいになっていた。


「知世さん、ここらで待っててね」


「哲司様、加勢するのですか!?」


「だって、あれ負けたら敗残兵が村に押し寄せるよ」


「……分かりました。御武運を」


 50メートルくらい走って刀を抜き、氷球を連発しながら寄って行く。


「氷球」


「氷球」


「氷球」


 刀で切れる距離までに15~16人は減らした。刀に妖力を流すと刀に青色光が浮き上がって、簡単に切れる。相手の動きがやたらゆっくりと見え、返り血まで除ける事が出来た。余裕の有る時に騎乗している相手の指揮兵に氷球を飛ばし全員倒すと、敗残兵が浮き足立った。

 俺が切り続けると今まで劣勢だった兵達が押し始めた。


「皆の者! 加勢武士に負けるな!」


「オー!」


 昨日、賞金をくれた指揮官だった。その後3人くらい倒したら戦いは終わっていた。


「昨日の者だな。加勢感謝する」


「危ない所でしたね」


「おお。あんな大部隊が残っていたのには驚いた」


「指揮官2人、雑兵36人です」


 兵士が報告している。


「沢山倒したな」


 知世さんが大八車を引いて側まで来ていた。


「大八車に後7人乗ってますが」


 俺は指揮官に自己申告した。


「指揮官1人に雑兵6人です」


 兵士の報告に反応している。


「合わせて指揮官3人と雑兵42人だ。51金だな」


 皮の袋に入れてくれた。


「これが敗残兵の財布だ」


 兵士が皮袋を一抱え渡してくれた。


「あの大牙オオカミと大八車で6金で売ってくれぬか?」


 知世さんを見ると頷いている。


「良いですよ」


「済まんな」


 指揮官のオッサンが、もう6金くれた。

 皮袋を全部肩掛けバッグに入れて道に戻った。



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