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第4章01話

第4章01話


 知世さんと久しぶりに昼間から散歩に出た。

天気も良いし散歩日和だ。


「善姫さんとは仲良くやっているの?」


「はい! とても良い方ですよ」


 そうなんだ。俺は殆ど話した事も無いので綺麗なお姫様くらいにしか考えて無かった。


「先日も飛行数珠を貰ったのに、まともに礼も言って無いと困ってました」


「スミさんは城の務めになったの?」


「そうなんです。ヤヤさんみたいな役目になって、御給金も出ているとか」


「それは良かったですね。立場が中途半端だと生活し辛い」


 呉服屋さんの前を通る時、知世さんの視線がお店に向いた。


「好きなの買ってあげるよ」


 嬉しそうな顔をしている。


「これはこれは御屋形様。本日は?」


「我が家の奥さんと一眼姫に着物でもと思いましてね」


「良い生地が入ってたばかりですよ」


 三眼の店主が反物を選んでいる。


「ちなみに1着、幾らくらいだい」


「10金貨も頂ければ」


「とりあえず5着くらい作ってみたら」


 一眼姫が凄く嬉しそうにしている。


「でも善姫さんや宣姫さんに悪いから……」


 知世さんが変な遠慮を始めた。そう言えば皆さん何時も同じようなスタイルだ。


「全員で作れば?」


「良いのですか!」


「構わないよ。全員呼んでおいで。ヤヤさんとスミさんもね」


 知世さんがすっ飛んで行った。


「あのー、何着くらいになります?」


 店主さんが心配そうに聞いて来た。


「ピョコリ瓢箪、お前も欲しいか?」


「要らん」


 だよな。


「5人だから30着くらいかな」


「納期が1カ月くらいかかってしまいます」


「古着も扱うの?」


「はい!」


「間に合わせで1人に3着くらい古着も」


「帯などは?」


「好きなの渡してあげて」


 店主さんと話していると水神様まで現れた。


「哲司殿。また娘まで世話になって……申し訳無く思っておる」


「水神様も如何です?」


 最初は断ったいたが水神様も作る事になった。


「納期に1月以上掛かるようだから、間に合わせで質の良い古3着くらい選んでくださいね」


 皆さんが愕然としている。


「帯や下着も気にしないで買って下さい。知世さん、俺は天ぷら屋に居るから後頼むね」


「は、はい! 旦那様。帯は何本くらいよろしいのですか?」


「5本でも6本でも。俺は分からないから好きにやって」


 エビ天ぷらとビールで水美と一休みする。


『水美には何も買ってやれないね』


『精霊は金がかからんからな』


 水美が笑っている。


『なんか申し訳無くてね』


『気にするな。哲司と居れば充分だ。エビのしんじょ揚げが欲しいな』


 知世さんが飛び込んで来た。


「……あの、旦那様……帯留めも買って良いですか?」


「どーぞ。全員に買いなさい」


 走り去って行った。


「御屋形様。カニ脚が揚げれますが?」


「是非」


 天狗さんが久しぶりに現れた。


「ここだったか。あの呉服屋の大騒ぎは?」


「知世さんに買ってあげると、姫達が質素だから目立つみたいで。面倒なので全員に買う事にしたんですよ」


「なる程。良い手だな」


「天狗さん久しぶりですね」


「色々と面倒な事が多くてな。水神が我々以外の城幹部をクビにしたのを知っているか?」


「初耳ですね」


「経費ばかりかかって何も仕事をしないので、お払い箱にしたらしい」


「警備は」


「あそこは残した」


「それでスミさんが城の専属になったんだ」


「そうそう。大分経費削減になったらしいぞ」


「税収は充分に有るでしょう」


「詳しい事は分からん。水神の事だ、どんぶり勘定なのだろう」


「言ってくれれば、うちの勘定方を貸すのに」


「俺から伝えとくよ」


 俺と天狗さんにカニ脚が来た。水美が素早く複製してしまっている。


「これ、美味いですね」


『大葉揚げが欲しいな』


 大量の大根おろしと大葉揚げを頼む。


「俺は蓮根」


「俺も」


「水郷境は人が増えているそうだな」


「誰でも移住出来る訳でも無いのに増えてますね」


「《日進の国》全体から第6感持ちが来ているらしいぞ」


「学校と施療院、増やさないと駄目ですね」


「御屋形様も大変だなぁ」


 相変わらず気楽な天狗さん。


「スミさん取られて善姫さん困ってません?」


「ホッとしているらしいぞ。なんだかんだ言っても居候だからな」


 皆さん苦労しているようだ。


「笹美城が手を出さなければ、善姫さんも自由に動けるのに」


「笹美城は大混乱みたいだぞ。詳しくは知らんが。ビール」


「俺も」


「なかなか奴ら来ませんね」


「呉服屋の前に人集りが出来る程、騒ぎになっていた」


『当分、時間が掛かりそうだな』


『みたいだね』


 水美も呆れ顔だ。

 ピョコリ瓢箪が来てビールと天丼を頼んでいる。我慢強いピョコリ瓢箪まで来たので、諦めるしか無い。

 呉服屋の主人が来た。


「御屋形様。そろそろ600金貨を超えますが……」


「気にしないで。好きにさせてあげて」


「有り難う御座います!」


「意外に安いものだな」


「ですね」


「前の馬鹿嫁は何に使っていたのか不思議だ」


「まだ行方不明?」


「そうみたいだぞ。と言うか、誰も探してないような気がしている」


「天狗さんが心配する必要も無いモンね」


「そうなのよ」


「そう言えば、妖怪さんの世界は?」


「平和なものだぞ。特に、この近辺は」


 平和ならそれに越した事は無い。面倒は基本的に嫌いだ。


「御屋形様、本日は私達まで。本当に有り難う御座いました」


 ヤヤさんとスミさんがニコニコして立っていた。


「座って天ぷらでも如何です?」


「仕事が有りますので」


 二人はにこやかに帰って行った。ボスキャラ達はまだ呉服屋のようだ。


『あの娘達は相当我慢して切り上げたのだぞ』


『遠慮は要らないのに』


『それは無理だ』


 水美が楽しそうに笑っている。


「まだまだ時間は掛かるよ」


 天狗さんの言う事が正しいと思った。




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