表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/114

第3章11話

第3章11話


 明け方に水神様に起こされた。


「哲司殿、すぐ来てくれ! 大型妖怪達の来襲だ」


 慌てて水郷城に行くと水神様が待っていた。


「哲司殿は完全な移転を持っていたな?」


「ハイ」


 頭がおかしくなりそうな思いで耐えて、水美から貰ったのだ。胸を張って肯定する。


「裂け目修復の弱い所から大型妖怪各種を送り込まれた。全部裂け目に戻してやろうと思ってな。

 私だけで出来る数では無い。手伝ってくれ」


 返事をする前に現地に居た。相変わらず短気な神様だ。

 幸い街から少し離れた山の麓で、天狗の里の入口に近い。

 種類が、牛鬼、大蜘蛛、大黒カッパ、知らない種類も居る。全部で50匹以上だと思う。


「牛鬼から行くぞ」


「ハイ」


 牛鬼だけで10匹はいる。水神様と水美と俺で、出て来た大きな裂け目に移転で放り込んでゆく。


『哲司。裂け目の少し奥を狙うのだ』


 水美が優しく教えてくれて、やって見せてくれた。


『水美、有り難う』


 失敗無く牛鬼を終え、他の妖怪が逃げて街に向かわないように水球で牽制する。


「次に危険なのは大蜘蛛だな」


 大蜘蛛の方が牛鬼より数が多い。蜘蛛の糸を吐いたり毒を飛ばして来るが、こっちは空中で透明になっているので全く怖ろしく無い。


「哲司殿の移転操作が上手いな」


 水神様に誉められながらポンポン裂け目に放り込んでゆく。


「ヤマコに場所を読まれているぞ!」


 大きなサルみたいな生き物だった。善姫さんは見たくも無い奴等だ。絵とは大分違う。


「残りはドンドン叩き込め」


 水神様の許可が出たので片端から裂け目に叩き込んで行った。


「すぐに裂け目を修復してしまいましょう」


「少しだけ笹美城を見て来て良いか?」


 誰が敵か知りたいようだ。


「良いですよ。俺は修復してますよ」


「済まんな」


 水神様が消えて、直ぐに帰って来た。


「矢張り妖怪達は笹美城に帰っているようだ。大混乱だったぞ」


 とても嬉しそうに話している。


「また送られる前に閉じてしまいましょうよ」


「そうだな」


 また水神様と2人で裂け目の両端から修復を始めた。朝とともにギャラリーが増えて来た。 念の為に間違ってもギャラリーに聞かれないように水神様との連絡会話に切り替えた。


『透明でやっていれば良かったな』


『水神様は時折、領民の前に出ないと駄目ですよ』


『そうかな』


 俺と同じで余り目立ちたく無いようだ。


『城に戻ってました?』


『城の内庭と隣の屋敷の庭に、そっくりそのままウジャウジャしておった』


 楽しそうに水神様が話している。


『お礼に雨を減らしてあげたら?』


『今でも減らしているぞ』


『月に一度降れば十分ですよ』


『哲司殿も厳しいな』


『今はどの位降らしています』


『月に2度かな』


 大きな裂け目を修復し終わった途端に、少し離れた場所から大蜘蛛が顔を出して来た。

 水神様が直ぐに大蜘蛛を押し戻して修復を始めている。俺も直ぐに応援に行って、完全に修復した。


『本当に月に一度で十分な気がして来た。神に喧嘩を売るとどうなるか思い知るが良い』


 笑ってしまった。


『水郷境からは連絡が来ているか?』


『調べに走らせてますが、問題は無さそうですよ。先日、徹底的に調べて修復して有りますから』


『危ないのは天狗の里かな』


『そう言えば出て来ませんよね』


『全ての修復が終わったら連絡してみるか』


 小さな空間修復まで終わらすのに後、1時間以上かかってしまった。


 水神様が疲れたので帰りたそうにしていたのだが、諦めて連絡をさせた。放って置いて後で困るのは水郷城なのだから。


『返事が来ないぞ』


 怪しい。何か有るような気がする。


『天狗の里の裂け目修復以来見て無いような気がします』


『私もだ』


 困った事になってなければ良いが。


『返事が来た! 自主的に助けを求めるそうだ。但し天狗の用意が出来しだい連絡が来るそうだ』


『待ちましょうよ』


『そうだな……だが天狗は何をやっているのだ?』


『知らないですよ』


『哲司殿は知らない方が良いような気がして来た』


 水神様と俺は天狗の館の最上階に着いた。テラスのようになった出窓の少し先に大きな裂け目が出来ていた。

 天狗さんがサボって女の人と遊んでいた時に、天狗さんが自分で直した場所だ。


「何匹出て来た?」


「牛鬼が3匹」


「退治したのか?」


「まだだ。真下に居る」


 水神様と水美と俺で裂け目に片端から牛鬼を叩き込んで、両端から少しずつ直して行く。


「出て来ようとしたら押し返すぞ」


「了解です」


 慣れて来ているので、仕事は早い。修復が終わったら水神様が少し大きめに再生をかけて終わった。


「歪みも無い。完璧だ」


「水神様、左下の空間が歪んで光り始めてますよ」


 2人で慌てて飛んで行き、水神様が再生をかけると普通に戻った。


「哲司殿、沢山光っている場所が出て来た。2人で手分けして対処するぞ。最大出力で再生を使え」


「ハイ」


「天狗は手を出すな!」


 完全に怒っている。


『水美、あの2人は無視して直そう』


 水美がウンザリしている。


『何故水神様があんなに怒っているの』


『哲司は分からないだろうが、天狗が精霊の女臭さをプンプンさせているのだ』


 そうなんだ。


『じゃ俺だってバレている事が有るのかな?』


『絶対に無い。水の里だと直ぐに浄化されてしまう。妾も必ず浄化している』


『風の精霊さんはどうしてバレるの』


『風の里には、浄化力の高い風呂が無いのだ。風の精霊が浄化しようにも、出来ない状態に置かれているのもあるのだろう』


 ナンだ、それはと思ったが聞かないでおいた。


 我々が5ヶ所くらい修復していると、話し合いが済んだようだ。

 天狗さんが、うなだれているので水神様の完全勝利みたいに見える。


「済まなかった。哲司殿は天狗の部屋に近づかないようにな」


「はーい」


 水美が大笑いしている。


 水神様は俺の修復をチェックしながら、修復場所に向かって行った。


 黒カッパが見えたので表面だけ凍らせると、水神様が裂け目修復のだらしない所を開いて突っ込んでいる。

 俺は他を探してみると、もう3匹見付けた。水神様が次々と始末して行く。

 カラス天狗達が再捜査を丁寧に始めている。牛鬼にばかり注意が行っていたみたいだ。

 2人で天狗の里をチェックして、サッサと水郷境に行って再チェック。

 水郷城に戻って問題が無かったので、お仕舞いとなった。


「哲司殿はどうする」


「もう昼ですから肉鍋屋にでも行ってビールと思ってます」


 水神様が羨ましそうな顔をしている。


「水神様も行きます? 結構美味しいですよ」


「行くぞ」


 肉鍋屋で水神様に食べ方を教えて食べさせる。


「これは美味い!」


 気に入ったようだ。面倒な話しを食べながら終わらす。


「善姫とスミも呼んで良いか?」


「そう言えば食べたがってましたね。呼びましょう」


 暫くすると善姫さんとスミさん、宣姫と知世さんと我が家の妖怪が飛んで来た。


 結論から言うと善姫さんの肉の食べっぷりは凄いものだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ