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第3章10話

第3章10話


 別に避けていた訳では無く、何となくタイミングが合わなかったので善姫と会って無かった。

 周りの人達が善姫騒ぎをしている時には、小者達と中物達の移住に神様達の移住まで重なっていて、騒ぎに付き合っている余裕が無かったのが本当の所だ。


 宣姫が2人を連れて来た。


「あの日以来、お会い出来なく満足なお礼も言わず大変失礼しております」


「気にしないで寿司でも食べましょうよ」


 堅苦しいのはサッサと終わらせ寿司とビールになった。


「初めてなんですよ。何時も話しを聞いていて、羨ましくて」


 善姫は相変わらずの美人だった。姫様なんてブスが多いと思っていたが間違いだったようだ。

 助け出した時と比べると、明るく見た目も若くなっている。このまま水郷城に居れば見た目25~6歳にはなるような気がする。


「これ、凄く美味しいです!」


 トロを食べてスミさんと大騒ぎしている。気に入って貰えて良かった。

 笹美城の方では寿司が珍しいらしい。水郷境の周りは昔から迷い人が多かったので、日本食が広まったくさい。


 善姫が知世さんや宣姫に勧められて次々と食べている。飲みっぷりも良い。水郷城の内は上品で、余りビールは出ない。


「ビールは美味しいです。笹美城では全く出なかったですから」


 矢張り地域によって普及率が違うようだ。


「笹美城の料理はどんなのが多いです?」


「お刺身は食べます。後は焼き魚とか煮物とかですかね」


「天ぷらや肉鍋は?」


 天ぷらは城では無く、肉鍋は城下街に専門店が有るけど猪鍋みたいな物らしい。


「今度、天ぷらと、すき焼きを食べに行きましょう」


 此処に飛ばされたのは幸運だったようだ。善姫も城内ばかりで退屈だったのだろう。街で食事がとても嬉しそうだ。

 そもそも、お姫様が外食するって余り聞かないものね。


「外に誘うと危険ですかね?」


「スミが善姫の世話人達に聞いた所では、自分達の安全確保に必死らしいぞ。アチコチに空間の裂け目を作ったので、城内にまで妖怪が出るらしい」


 水神様がニヒルに笑って話している。


「あらら、じゃ善姫さんに関わってられないですね」


「哲司殿が上級陰陽師を3人も倒してしまったので、空間の裂け目を修復出来る陰陽師が頼田一漸を含めて2人しか居ないらしいぞ」


「ザマア無いですね」


「城下の妖怪も退治出来る陰陽師が不足して、武士が妖刀を使って斬っているようだ。大型の妖怪が出ると大騒ぎなようだ」


「こっちに派遣された陰陽師を大量に狩ってしまいましたからね。そろそろ陰陽師不足かと思っていたら、矢張りでしたか」


「だから善姫にも、もっと気楽にやって貰おうと思っている」


 善姫さんも嬉しそうだ。


「開墾も大事だけど、水郷城の空間の裂け目修復を先にしましょうか?」


「あれか」


「手抜き修復のままだと、また何か現れますよ」


「そう手抜き手抜きと言うで無い。そもそも手抜き修復の多くは天狗がやった所だ」


 それは確かに危ないと思う。天狗さんが細やかな作業を続けられる筈が無い。


「ざっと見積もって何ヶ所くらいです?」


「20ヶ所近くは有りそうな気がする」


 午後からやる事になった。


「手分けしてやると疲れるし妖刀も消費するので一緒にやらんか?」


「良いですよ」


『水神様は1人で働くのが嫌なのだ』


 水美が笑っている。


『俺だって水美と一緒で無かったら、すぐに嫌になるよ』



 善姫達を寿司屋に残して、水神様と俺で修復を始める事になった。


「水郷境で破けたなら、水郷城も危ないからな」


「誰かが送っていると?」


「同種類の妖怪達が自主的に裂け目に飛び込むのか?」


「それもそうですね」


「此処でマトモな修復が出来るのは、私と哲司殿しかおらん。諦めて働こう」


 上手く言い含められてしまった。


 確かに歪んでいる場所が多かった。


「端をキチンと揃えないで、真ん中から止めて行ったみたいですね」


「天狗のやる事だ」


 水神様が首を振っている。


「1度破って止め直しましょう」


 手に入れた《空間操作》を使うチャンスだ。喜んでいたら水神様が簡単に裂け目を開いてしまった。


「哲司殿は皮袋でも作って、経験を積んでからな」


「……ハイ」


 水神様と両端から丁寧に修復して行く。


「水神様。此処にはどの位の国が有るのですか?」


「30ヶ国以上有る筈だぞ。どうかしたか?」


「最近、中途半端なのも含めて第6感持ちが水郷境に移住を希望して来るのですけど、知らない国の名前の人達が結構居るもので」


「仕方無いな、小者達や中物達まで狩ってしまい、悪霊とか幽霊がはびこっている。死神くらいしか神を見ない場所も有ると聞くからな」


「ハア」


「つまり第6感持ちはそんな世界では生き辛いのだ。見えると言えば狂人と思われるしな」


 なるほど、日本とそう変わらないのか。


「反面、小者達が水郷境に増えて小さな祠持ちの神様達が大量に水郷境に移住したので、悪霊や幽霊は水郷境に出て来辛いから第6感持ちには住み易いのだ」


「戦争やっている国は多いのですか?」


「多い。まだ日進の国は完全に統一された事は無い」


 此処は日進の国と言うのを初めて知った。


「哲司殿が統一してみるか?」


「冗談じゃ無いですよ! 水郷境でさえやっと統治しているのに」


 話しながら仕事をしていると、とてもはかどる。こういう作業は共同作業が良いみたいだ。

 水神様と2人だけで話しも出来る。


「水神様。水郷境は、まだ広げても良いのですか?」


「まだまだ大丈夫だ。どうかしたのか?」


「余り広げると、同じ水郷境の中で時間経過が変わらないかと思って」


「まだそんなに広げて無いだろう。余っている荒れ地や林を、此処の物達が開墾していれば大丈夫だ」


 最近、人口の増加が激しいので、どうしても開墾に頼ってしまうので有り難い。


「まともな6感持ちが増えたら水郷城に回してくれ」


「最初からそのつもりですよ」


 やり直しの空間修復が多く、その日は半分くらいの所で終わった。



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