第3章07話
第3章07話
水郷城は善姫で騒いでいる。俺は彼女を助けた時以来会って無いけど、水神様や天狗さんは毎日お話ししているようだ。
「ねえ神様、祠が小さいと言いますけど以前神様が使っていた祠の倍はあるんですよ」
「せっかく新しくなるのだから、より良くして貰うのは当たり前じゃろう!」
俺は毎日こんな話しの調停役ばかり。新しく移住して来た神様達にしてみれば確かに最初にゴネないと、ずーっと小さいままになってしまうので言う事も分かるけど。
「どのくらいのを希望しているのです?」
「この倍は欲しい」
「住民が維持出来なくなりますよ。また見捨てられてボロボロが良いのですか?」
「……」
説得が難しい。200近い御神体を引き受けて、60くらいの御神体が苦情を言っている。
「もっと住民の多い場所が良いな」
猟師や木こりの守り神が何を考えているのかと思うけど、そんな事を面と向かって言う訳にも行かない。
水郷境も拡大中で新住民も増えているので、移住神様達も受け入れられ易いので助かっている。
そんな中でも小者達は山の中でもチョロチョロ動き廻って、住み易い場所を確保しているようだ。
「おい人間。ぽろ兵衛はどうなっている」
「何の話しだい?」
「ぽろ兵衛の移住の話しだ」
「俺は聞いて無いよ」
「大分前に言ってある」
「誰に言った?」
「ピョコリ瓢箪」
そりゃ忘れているわ。
「何匹居る?」
「10匹は居る」
神様が近くに居たので聞いてみる。
「どんな妖怪さん?」
「図体は人間くらいでな、悪い事はしない。見た目が鬼みたいだから、石なんか投げると涙をポロポロ流して逃げる。だから《ぽろ兵衛》だ」
平和そうな妖怪さんだ。ピョコリ瓢箪を呼ぶと一眼姫も来た。
「お前、ぽろ兵衛さんの移住を忘れてない?」
ピョコリ瓢箪がハッとした顔をしている。
「すぐに呼んで来いよ」
ピョコリ瓢箪が頷いている。
「儂も一緒に行く。あいつ等は怖がりだからな」
一眼姫が立候補してくれた。
俺が神様の苦情処理を2つくらい片付けていると、ピョコリ瓢箪と6匹のぽろ兵衛が来た。
身長は150センチくらいで、確かに鬼くさいが妙に可愛らしい。
「皆はまとまっていたいの?」
話しをまとめると、バラけている方が良くて神様の祠が有って小者達が多い所が希望らしい。
ピョコリ瓢箪と手分けして、移住させてゆく。
途中で一眼姫も7匹くらいのぽろ兵衛さんを連れて来た。
「儂も一緒に移住を手伝うぞ」
皆で相談して候補地を決めて、移住させていった。ぽろ兵衛さん達は素直で大人しいので結構簡単に移住が決まるのだが、その分こっちが気を使ってやらないと何でもOKしてしまう。
「住み辛かったら言ってね、相談にのるからね」
「ワカッタ」
「本当に分かっているのかね?」
「調べに来るしか無いだろうな」
一眼姫が正しいと思う。
「哲司、儂も1つ忘れていた」
一眼姫が何か思い出したらしい。
「カッパが移住を希望していた」
ボロボロとミスが出て来る。カッパさんは現地でも新しい血を希望している。分家が支配している時に、黒カッパを放したらしく正統なカッパさん不足になっている。
「すぐに希望カッパを集めよう」
一眼姫とピョコリ瓢箪が飛んで行った。
『今日は、なかなか休めんな』
水美が笑っている。
『水郷城の方もカッパさん不足になっていたような気がする』
笹美城の方から逃げて来て定住出来て無いカッパさん達が沢山居るらしい。
川の中洲で待つていると、さすがに騒ぎで水神様も現れた。
「カッパの移住なら水郷城に分けてくれんか? カッパの繁殖が難しくなって来ている」
「こっちも同じですよ」
「哲司殿、そう言わんで頼む」
皆さん、人が頑張っていると急に参加して来る。
「じゃ第一陣は水郷城に渡します」
「済まんな」
ピョコリ瓢箪が60匹以上の集団の移住を受けて来た。
「私が運ぶぞ」
水神様がニコニコしてピョコリ瓢箪と飛んで行った。
知世さんに手伝いを頼むと来てくれた。宣姫は水神様の手伝いに廻行ったらしい。
「まずは50匹くらいだ。まだまだ居るぞ」
一眼姫が帰って来てからが忙しかった。元々のカッパさんと話し合って希望を聞き、移住を決めてゆく。
「200匹近くになりそうじゃ」
「もう2~30匹水郷城にくれんか?」
水神様。
「そういう眼で見るな。私もカッパの間に挟まれて大変なのだ」
「どうぞ。カッパさん達の合意を取って下さいよ」
「分かっておる」
急にゴキゲンになった。
「こっちの調整もしっかりやろう。まだ来る可能性が有るのだから」
何せ家族をバラかす訳にも行かないし、此処に親戚が居るカッパさんまで居た。
「水神様が40匹連れて行ったぞ」
「キタネー! 2~30って言ったじゃない」
また地元カッパと調整であります。
「一眼姫。滝の落ち口の大ナマズさんと、調整してくれない?」
「怒っておるのか?」
「先に相談しないと機嫌が悪くなるのだ」
「分かった。今やって来る」
領主生活はもっと楽な筈だったのだが、とんでもない間違いだったようだ。
「旦那様、申し訳有りません」
中洲の大石に座っていたら、知世さんが肩を揉んでくれた。
『哲司、今日は夕刻まで覚悟がいるな』
『水の里に帰りたい』
『知世が一緒だから不可能だな』
『初めての空蝉を使ってみようか?』
『止めておけ。失敗するだけだ』
『2時間だけで良いから水の里の風呂に入りたいよ。疲れて死にそう』
『死にはせん』
水美にも突き放された。
『こういう時に頑張っているから普段に知世が自由にさせてくれるのだぞ。天狗みたいになったらお終いだ』
それもそうだなと思って労働を再開した。
「早く終わらせて美味い物を食べに行くぞ」
「「「「オー」」」」
何故かこういう時には居る宣姫だった。




