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第3章06話

第3章06話


 善姫が来て数日で色々な情報が入って来た。


「哲司殿が頑張ったお陰で、笹美城の半数以上の陰陽師が討伐されたようだ」


 どうりで疲れた筈だ。


「善姫を救出した時に倒した3人の陰陽師が空間操作の中心人物で、あちこちに開けた空間の利用が困難になっている可能性が高い。修復出来る陰陽師は数が少なく笹美城は混乱している可能性が高いそうだ」


 俺が、あの3人の陰陽師を斬った時に《空間操作》《術解除》《能力読み》《読心》の能力が来ていた。

 水美に聞いたところ、こんな妖術らしい。

 《術解除》は相手の発動した妖術を無効化させる。

 《読心》は相手の心を読む。

 《能力読み》は相手の能力を読める。

 《空間操作》は空間に穴を開ける。


 能力読み以外は余り役に立ちそうに無かった。


「暫くは反撃して来ないだろうから、各地の神様達と協力して笹美城以外の空間の割れ目を出来るだけ修復しましょうよ」


「それは良い案だな。早速動いてみる」


「それで善姫様は?」


「水不足で風呂も余り入れ無かったので、水郷城の風呂を宣姫や知世と楽しんでいるぞ」


 なる程、奴等大人しい筈だ。


「行方不明の10年で身体に負担がかかっているようなので、水郷城の風呂は効果が高いらしいしな」


「数奇な運命を辿った方に有る、精神的な問題とかは見えません?」


「それがな、私も注意して見ているのだが何も無い。思考を読んでも隠していない。不思議な事に普通の美人の性格の良い人なのだ」


「珍しいですね」


「そうなのだ。風呂にも一眼姫やピョコリ瓢箪と気にしないで一緒に入っているしな、人間至上主義の兄弟が居ると思えない」


「見えているのですか?」


「哲司殿のように完全な第6感持ちだ」


「あちらの世界での記憶は?」


「まさか露骨に聞く訳にもいくまい。何が起きていたかは皆が知っている事だからな」


「どういう事です」


「つまりな……ヤマコを召喚した時に善姫も来たのは……そのな……ヤマコと善姫で忙しい最中に現れたのだ」


 水神様も話し辛いらしく、顔が少し赤くなっている。


「……なる程。帰って来た時は混乱なんかは?」


「スミに聞いたのだが大混乱だったようだ。後に良くなったらしいぞ」


 水神様もそんな話しばかり聞く訳にも行かないだろうしね。


「笹美城から抗議とか脅しとか来てません?」


「なーんにも言って来んな」


「まあ透明で行って一気に片付けたから、誰にやられたかも分かって無いでしょうしね」


「何か言って来たら、どうする?」


「水をもっと絞ってやれば? 神様に逆らうと怖い事を教えてやる良い機会ですよ」


「わかった、そうする」


「水不足は水神様がやっていると、善姫に話しました?」


「しておらぬ」


「教えない方が良いです。泣き付かれると面倒ですから」


「そうだな、水郷城でも知っているのは幹部会の3人だけだ」


 敵が混乱しているうちに足元を固めてしまう事で意見が一致して閉会となった。

 天狗さんがサッサと天狗の里に帰って行った。そう言えば幹部会でも殆ど話していない。


「何か相当忙しいらしいぞ」


 消えた天狗さんの場所を見ていたら水神様が教えてくれた。


 屋敷に帰ってヤヤさんに水郷境の視察で少し空けると伝えて、水の里に行った。最近では水の里に帰ったと言った方が早いくらい、こっちに居る。

 視察で小者達の定着状態を見たり忙しい分、行方不明になれる時間も増えて楽になっている。


『哲司、風呂に入ろう』


 水の里の風呂は、のぼせたりしない。湯の力と隣に居る水美の力が流れ込んで来るのが分かる。


『天狗がソソクサ帰って行ったろう』


『うん、うん』


『風の精霊とヨリを戻したらしいぞ』


『天狗さんが土下座でもしたのかな』


『降伏したのは、風の精霊という噂だ』


『えー、本当に!』


『天狗の無視勝ちみたいだな』


『俺なら1日で水美に土下座しちゃうけどな』


『カラス天狗をボソボソにしたり、変な女を連れ込んでいるのに耐えられなくなったという噂だ』


『風の精霊さんは優しいんだ』


『趣味が同じで独占欲が強いという話しも有るがな』


『天狗さんは全然仕事を手伝ってくれない程、忙しい理由はそこに有ったのか』


『だな』


 風呂から上がって、窓に座りぼーっとしていると水美が箱を持って来た。


『哲司が例の陰陽師幹部を片付けた時の戦利品だが、持って帰らぬのか?』


 水美が集めてくれたのをそのままにしていた。なんか嫌な感じがして放っていたのだが。


『もう少し水美の所で浄化してからで駄目?』


『良いぞ。一番妖気を出しているのが数珠や小刀だ。この時計は完全に抜けているぞ』


 水美が別にしておいてくれたらしい。


『水美は時計、使わない?』


『要らぬ。妾は時がわかるからな』


 浄化されているようなので、倉庫に入れておく事にした。


『あの頼田一漸の配下の陰陽師幹部を偶然とは言えアッサリ倒してしまったのは嬉しいのだけど、あれ以来体調が良く無いんだよ』


『分かっている。あの陰陽師幹部達が呪われていたのと、凄い量の妖力が入って来たので消化しきれないのだ』


『呪いがこっちに来たの?』


『それは無い。妾が止めている。哲司も呪い除けを持っているしな』


 確かに凄い量が入って来た。


『普通に一人ずつならば問題無かったのだが、三人まとめてだからな。安心せい、体調は徐々に戻る』


『水美がやってくれているのだから、安心しているよ』


『迷惑な善姫の暗殺計画だな』


『暗殺というか、あの陰陽師三人が善姫をまた何処かに飛ばしてしまおうとしていたのだと思うよ』


『余程善姫が邪魔な訳だな』


『善姫は空間操作に反対しているしね。最初の善姫の飛ばされだって頼田一漸が関わっているのは明白だから。良く、この10年間無事だったと思うよ』


『もう少し善姫に話して貰わないと分からんな』


 俺が移住して来た神様達の苦情を聞いて歩いているのに、水郷城は善姫一色になっている。

 確かに政治色豊かで気分も乗るのだろうけど、水郷境神社の神様は水神様なのだから、もう少し移住神様達の話し相手になってやって欲しい。

 幸いに、新しい祠に出向いてくれている住民も沢山居るので何とかなっている。


 体力が有るうちに全て丸く収まって欲しいものだ。



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