表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/114

第2章14話

第2章14話


 水の里に着いて、水美が食べ物やビールを保存箱に移している。

 前回のも有るから結構選んで食べれる。ビールもタップリなので安心だ。

 どうせ水美が複製して出してくれるのだけど。


『風呂に入ろう』


 水美が練習着をたたんでいる。俺は何時ものように、洗って貰って湯船に浸かった。


『此処の風呂は本当に気持ち良いな』


『活力と妖力が回復するし、浄化作用も有るからな』


『知世は若くなったと言われて喜んでいたが、そんなに老けていたのか?』


『初めて会った時は本音で22歳くらいと思っていた。とても美人と言うか清楚で可愛い人だけど、色黒でね。真っ黒だったよ』


『哲司は若く見えるからな。知世も気になるさ』


『風呂に入れてゴシゴシしたら、大分白くなったよ』


 水美が大笑いしている。


『貧しかったので苦労したのだろう。哲司の嫁になれてホッとしたのも良かったと思うぞ』


『俺だって日本であんな良い嫁さんが貰えるとは思わない。こっちに来て良かったよ』


『知世とうんと仲良くした後は疲れないか?』


『身体が凄く重くなって動けなくなる時が多い。最初の頃は意識が無くなった』


『何故か分かるか?』


『俺の体力不足と思っている』


『知世が哲司の力を抜き取っているのだ。哲司は妖力でそれを補っている。知世もまだまだ不足しているのよ。あの年まで水郷城に入って無く水郷境からも離れていたからな』


『俺が与えないと知世さんは、また壊れて来るのか?』


『確実にそうなると思うぞ。今は身体が水郷城に慣れてないからな。哲司も同じだが栄養と体力と妖力が有るので何とかなったが、お前は迷い人だから順応しないとな』


『何ヶ月かかる?』


『最低で3年だな』


『3年!』


『当たり前だ。全て作り直しだからな。消滅したく無いだろう』


『絶対嫌だ!』


『だからな』


 水美の美しい顔が目の前に現れた。




 目を開けると、水美の膝枕だった。


『気が付いたか。動けるようになったら風呂に入ってから弁当を食べよう』


 膝枕が心地良くて起きたくなかったが、風呂に行った。凄く力と妖力が漲っていた。


『天狗は来てないのだろう』


『風の精霊が解放された日から、全く見て無い』


『これは不味いぞ』


『また怒られるのかな』


『最悪、取り上げになる』


『そんな事になったら天狗さんおかしくなるよ』


『そうならないように、自分達で気を付けないとな。精霊を嫁には出来んのだから』


『天狗さんがメロメロなのかな』


『どっちもどっちだな。200年以上も一緒に居るのだから』


『奥さん居なくなったからヒマなんだと思うよ』


『100年以上別居状態でか?』


『それもそれだね』


『光の精霊の前に水神様の調停が入るかもな』


『水神様は、精霊が付いているのを知っているの』


『知っている。哲司が妾を所有しているのも知っているぞ』


『水美は会ってるの?』


『会わん。必要も無いし、世界が違う。前も言ったように哲司にしか見えない。実体化すれば会えるがな』


『水神は精霊に命令出来るの』


『出来ん。水神様が出て来る時は光の精霊の要請で行われる。水神様も駄目天狗になられると困るだろう』


『駄目天狗と駄目風の精霊か、どっちも使い物にならないな』


『風の精霊は消滅させられるだろう』


『それは酷くない?』


『どうしてだ? あの状態で他の者の担当には出来んだろう。記憶を消しても天狗は覚えている。間違って何か起きたら困る。自分を律せれ無い精霊は要らんのだ』


『天狗さんの奥さん探しが良さそうだね』


『だな』


 部屋に行って食事にした。今日は水美が大きめの脚付き食膳を出して来た。


『今日は並んで食べようよ』


『良いぞ』


 おかずを取り替えっこしたり、水美の横顔を見たり出来る。向かい合うと胸と顔ばかり見ていて、食事がおろそかになってしまう。


『此処の弁当は美味いな』


『水郷城一の弁当屋らしいよ』


『内容が入れ替わったらまた欲しいぞ』


『ウナギと寿司も揃えたいな』


『ウナギか?』


『日本風の蒲焼き屋が在るのよ。白焼きも有るし』


『今度食べさせてくれ』


『水美に食べさせたくてウズウズしている』


『嬉しいぞ』




 御飯を食べ終えて水美から、飛行の特訓を受けていると天狗さんから連絡が入った。


『我が家の居間に居るみたい』


『哲司、服を着て行くぞ』


 居間に着くと天狗さんが座っていた。


「哲司、スマンな勝手に上がり込んでいる」


「構いませんよ。随分と久し振りですね」


「5人くらいの陰陽師に狙われて、変な世界に飛ばされていた」


「狙われたの!」


「やっと戻れたのだが、天狗の里は見張られているようだし、水郷城は通じているのが居るので、此処に逃げ込んだ」


 天狗さんが疲れ切っている。


「とりあえず、薄汚れているから風呂に入りなよ。着代えは俺ので良い?」


「カラス天狗に届けさせる。哲司のでは俺には小さい」


 兎に角、天狗さんを風呂に追いやった。匂っている程だ。本人も辛いだろう。


『水美、周りに陰陽師は居る?』


『屋敷の周りにはおらんな。安全だ』


『風の精霊が付いていて、何処かに飛ばされるとは』


 水神様に連絡を入れた。


『水神様、少しよろしいです?』


『哲司からとは珍しいな。何か起きたか?』


 天狗さんの状況を説明した。


『飛ばされていたのか? 哲司は天狗殿の話を聞いて保護して欲しい。確かに水郷城は現在、怪しいのが居るのだ』


 水神様と話し終えると、女のカラス天狗が来て窓に降りた。


「天狗様は?」


「廊下の先に大浴場が在る。自分で行って指示を仰げ」


 女カラス天狗は草履を懐に入れて風呂に行った。


『女のカラス天狗は初めて見た』


『少数だが居るぞ』


『でも俺と水美は人間と精霊だから陰陽師は怖くないけど、天狗さんは祓われる可能性が有るから大変だよね』


『変だな、風の精霊は何をしていたんだ?』


『俺、何回も天狗さんを陰陽師から守っているよ』


 ヤヤさんがビールと餡掛け揚げ出し豆腐を持って来てくれた。


『水美、食べよう』


『ヤヤさんは本当に気が利くな』


 水美が美味しそうに食べている。


『これもビールに合うな。これは良いぞ』


『天狗さん、ゆっくりだね』


『放っておけ。今は忙しそうだ』


『……』


 1時間くらいして天狗さんは風呂から出て来た。カラス天狗さんは飛翔で帰ったらしい。


「カラス天狗さんは安全なの?」


「あれには、世界を越えれる数珠を渡してあるので大丈夫だ」


 ヤヤさんが天狗さんにビールと餡掛け揚げ出し揚げ豆腐を持って来た。凄い勢いで両方とも無くしたので、ヤヤさんが次を取りに行った。


「まともな物を食べるのは久し振りだ」


「何処に飛ばされてたの?」


「分からぬのだ」


 天狗さんが白和えと大根の煮物に飛びついていた。


『哲司、少し落ち着くまで待て』


 それしか無いなと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ