第2章13話
第2章13話
この1週間程サボっていた仕事を真面目に片付けている。お陰様で水郷境の運営が快調に進んで、人別帳も改竄されていた物がまともに戻って来ている。
仕事の気分転換で、夜は美味しい物を食べて、知世さんと仲良しになったりするので快眠で寝過ごしてしまう。
早朝に誰かに起こされた。
「おい、哲司起きろ」
「いつまで寝ている」
「嫁が若く美人になったな」
松並村の3匹だった。リスみたいと思っていたが、今見るとモモンガに近いような気がする。
「お前等、久し振りだな」
「おう」
「久し振り」
「嫁の胸は増えんな」
相変わらず勝手な奴等だ。知世さんが貰い物の落雁を配ってやっている。
「スマンな」
「美味いな」
「もう1つ寄越せ」
「落雁はやるけど、お前等は何しに来た?」
「松木の神様が呼んで来いとさ」
「早く行け」
「嫁はもう少し太らせろ」
知世さんが煎餅を配ると3匹が何処かに行った。
「松木の神様に会いに行きます」
「旦那様、私も」
支度をして飛翔で知世さんと松木神社に飛んだ。着くと一眼姫とピョコリ瓢箪も何故か居た。
「ここらは懐かしいのう」
一眼姫が周りを見ている。何故か小者達が沢山居る。
「松木の神様ー」
「ここじゃ」
松木の神様が本殿の階段に座っていた。薄くはなってないが、元気が無い。
「久し振りじゃな。知世は白くなった。若返ったな」
知世さんが、照れている。
「神様、話しは食べながらしません?」
松木の神様が嬉しそうな顔をした。
松並村に行くと宿の食堂に入った。
「俺は天蕎麦」
他の人達は朝飯定食だった。
『水美も食べる?』
『蕎麦は美味しそうだな』
「今日は天狗がおらんな」
「今、何となく忙しいようで」
水美が大笑いしている。
「旦那様、一寸失礼します」
知世さんが飛翔で居なくなって、直ぐに帰って来た。宣姫が薙刀を持って立っていた。俺を睨み付けている。
「実はこの村の先に深森山というのが在って、そこに二社神社が在る。此処が樫の国の兵に乗っ取られてな。二社の神が透き通って来ているらしい」
また神様の透き通りか。
「敗残兵?」
「笹美の国は敗残兵と言っているが、正式な兵隊じゃ。そろそろ松並村は取られそうな勢いという噂じゃな」
「樫の国は神様が違うの」
「違うようじゃな」
「知世さん、弁当を6個」
知世さんが宣姫の蕎麦と弁当を6個注文している。
水美が天蕎麦をうまそうに食べている。俺も伸びる前に食べ始めた。
「松木の神様。敵は何人くらいです?」
「150人くらいという話しです」
『哲司、働く前にビールも悪くないぞ』
水美のお姉様には逆らわない。
「ビールと酒」
神様が嬉しそうにしている。
しばらくして、やっと全員満足したようだ。お弁当も来た。
『哲司、これを使うと良い。妾が作った保存皮袋だ。中の時も止まるし水神のより中が大きいぞ』
『水美、有り難う』
水美のらしく赤い皮袋だった。
『水美のだと分かり易い』
『そう思ってな』
水美が笑っている。お弁当を3個水美の皮袋に入れた。
残りの3個は松木の神様にあげた。凄く嬉しそうだった。
「神様場所分かる?」
「任せろ」
二社神社の鳥居に飛ばしてくれた。警備兵が10人くらい居た。
「知世さん、宣姫、鳥居は任せた」
「「了解」」
俺は飛び上がって、本殿の前に行くとずらりと例の黄色の複数を着た兵隊が整列していた。
『哲司、降雹と唱えろ』
「降雹」
10センチくらいの雹が降り注ぐ。
『降雹』
『降雹』
水美も2回唱えたので、何も見えなくなるくらい勢い良く敵兵の上から雹が降り注いでいる。
「ゴー」
凄く音で降り注ぎ雹が跳ね返っている音など聞こえない。
雹が止んだ時は本殿前の仕官3人と、その周りの8人くらいの兵士だけだった。
「氷球」
「氷球」
「氷球」
氷球の連射で仕官を倒すと、水美が周囲の兵士を片付けてくれた。
階段を見ると知世さん達が、氷球を撃ちながらもう少しで本殿前広場に着くくらい登っている。
『2人供強くなったな』
水美が感心している。
俺は本殿前に降りて本殿を開けたが、敵兵も神様も居なかった。
神様を探した。
「神様ー、何処です? 松木の神様に言われて来ました」
「こっちじゃー」
本殿の裏から聞こえて来た。慌てて走って行くと薄く透き通った神様が居た。
慌てて、お弁当を渡すと一心不乱に食べている。
『可哀想にな。完全に乗っ取られて無視されていたみたいだな』
2つめのお弁当を食べ出した頃に、小者達が集まって来て神様を見ている。
まだ完全に実体化してない。
「旦那様。神様は?」
「無事だよ。只今、御飯中だけど」
神様が2つ目のお弁当を食べ終わったので、本殿に連れて行って中に入れ3個目のお弁当をあげた。
今度のお弁当は、ゆっくり食べ出した。持って来た酒もあげた。大分落ち着いたみたいだ。
「大変スマンかった。消滅する寸前だったのでのう。二社の神だ。礼を言うぞ」
「酷い目に会いましたね」
「全くだ」
「ところで、お主は?」
「河瀬哲司です。妻の知世と宣姫です」
「これはこれは。河瀬の殿でしたか。宣姫殿も、母様はお元気ですかな? 知世さん、美しいのう」
一眼姫が凄い量の財布が集めてきた。
「174人居た」
大量の財布を天狗皮袋に入れていると、二社の神様が本殿に呼んだ。
「あの箱3個が奴等の軍事費だ、持って行きなさい。どっちに渡ってもロクな事が無い」
3箱の軍事費を丸ごと貰ってしまった。
『笹美の国の兵が大量に鳥居まで来ているぞ』
「笹美の兵が鳥居まで来ているようですので、お暇させて頂きます」
「それが良いな」
我々は全員で水郷城に戻った。屋敷の居間に戦利品を置く。
「旦那様。空を飛べるのですね」
「最近出来るようになった」
「哲司殿、あの凄まじい雹は」
「あれも最近」
「「羨ましーい!」」
一眼姫が財布の中身を3山にしてくれた。
「1人1山と1箱ね」
「私、1山だけで良いです。殆ど哲司殿が片付けて、箱まで貰ったら母に殺されます」
「そんな事を言わないの。3人でやったんだから」
「要りません」
「……そうなの?」
宣姫が金貨と銀貨類だけ財布に入れている。見ていると結構凄い量だ。
「まだ朝4つ《朝の10時半》くらいだから、2人で城か此処で風呂なり御飯なりしたら? 俺まだ仕事が有るから」
「哲司殿の仕事の邪魔になるので城が良いと思います」
「旦那様、頑張り過ぎないで下さいね」
「昼7つ《昼の3時半》頃には終わると思うよ」
「「頑張って下さい!」」
一眼姫とピョコリ瓢箪を連れて消えた。
慌てて隠し扉の倉庫に金貨の箱を運び、寝室の金庫に金貨と銀貨類の山を突っ込んだ。水美が銅貨用の箱に銅貨類を入れてくれている。
『5時間稼いだから30時間近く使えるな』
水美が最近時間を覚えたみたいだ。
『弁当屋に行こう!』
高級弁当屋で6箱と言うか、6種類のお重を買った。
「御屋形様、今日も会議御苦労様です」
猫族の女将さんが励ましてくれた。
『水美、ビール有る?』
『買った方が良いぞ。此処のは美味い』
「ビール2樽」
全て水美の皮袋に入れて、甘味屋で団子と大福を仕入れて仕事が終わった。30分くらい使ってしまった。




