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第2章09話

第2章09話


 あれから3日経つが、悪霊は水郷境には居ないようだった。

 バタバタ悪霊を倒したが、それ程力が上がらなかった。

 光系に除霊と浄化は大分上がった。何故か複製が上がっている。全体の力はホンの少しだけだった。

 そう言えば倒した時、力が流れ込んで来る感じが無かった。


 力が上がらなかった分、お金だけは沢山手に入った。水神様に呼び出されたり、水郷境に行ったりで忙しくて実は今日まで放置していた。


「1人に1000金貨くらい有りますよ」


「2人分で2000金貨くらいですね。凄いです! お寿司が食べれます!」


 銅貨類は銭箱で金貨と銀貨類は金庫の天狗皮袋に入れておいた。


「今日は昼過ぎまで宣姫さんと水郷城に行って宜しいでしょうか?」


「良いですよ。俺も片付けないといけない仕事が有りますから」


 この3日間、退屈だったのだろう。宣姫が居たから大丈夫か。


「いっそ晩御飯まで水郷城で遊んで来ても良いですよ」


「有り難うごさいます!」


 知世さんと一眼姫とピョコリ瓢箪が出掛けて行った。


 俺は隠し扉を開けて宝物庫に入って、妖術と妖怪関係の本を持ち出した。

 妖術の使い方が今一つ分かって無かったので、お勉強で有ります。


「1度に2種類の妖術を使えるのは、自分と精霊の力と借りた時だけなんだ……どうやって悪霊をあれだけ操る?」


 独り言をしてしまう癖が久し振りに出た。日本以来だ。

 一生懸命調べていると身体に油が浮いて来たので、風呂に行った。


 3階の風呂で朝の水郷城の街並みを見ていると心地良い。誰かが掛け湯をしてくれた。背中を洗っている。俺も当たり前のように街並みを見ていた。

 前に現れたのは天狗さんの所で会った精霊のお姉さんだった!


『哲司様、お久しぶりでごさいます。何故お呼びして下さりませぬか』


『み、水美さんでしたね』


『さんはお止め下され。敬語も不要です。妾は哲司様に仕える精霊でごさいます』


『ああ、はい』


『哲司様!』


『済まなかった』


『それで宜しゅう御座います』


 水美さんは相変わらず、俺の身体を全部洗ってくれた。身長は俺と変わらない。170センチくらいで、中肉。胸は大きくは無いが十分に有る。とにかくカッコ良い。23歳くらいに見える。


『何をしげしげと、呼べば何時でも見れますぞ』


『俺にしか見れないのか』


『私の存在を見れるのは哲司様だけです』


 天狗さんが時折ぼーっとしているのはこれが原因だったのか。

 2人で湯船に浸かった。


『水美は風呂でしか出て来ないの?』


『何処でも呼ばれれば。戦闘も多少は役に立ちますぞ』


『それは有り難い』


『では、水美と儀式を』


 水美の顔が正面に現れキスされた。後は何です、儀式でした。浮気ではありません。

 マジで身体の自由が無くなって儀式が終わった。


『これで主従の儀式が終わりましたので、何処にでも参上出来ますし付いてもいれます』


 力が抜けてふぬけになったが、水の妖術が凄く強くなっていた。


『哲司様の水の妖術は悪霊にも使えるようになりましたぞ』


『凄いな!』


 湯船の中で水美は俺に寄り掛かっているのだが、肌の感触は有るのだが余り重さを感じさせない。


『水美は軽いのか?』


『実体化すれば結構有りますぞ』


 水美が実体化すると、凄い迫力だった。より美しさが増したような気がした。


『戻ってくれ、ヤヤが来ると困る』


 水美が笑って実体化を解いた。


『髪が濡れないのか?』


『一応の水の精霊ですからな』


 身体を拭いてもらい着替えると、水美も付いて来た。


『着物は着ないのか?』


『その様な習慣は在りませぬし、誰も見えませぬ』


『……そうか』


 本に戻って読み始めるが、水美の美しさに見惚れてしまう。


『この本に寄ると、精霊の力を借りると一度に二つの妖術が使えると書いてあるけど』


『哲司様が光弾を撃った時、水美が同時に水撃を撃ったと思ったら良いと思いますぞ』


 なる程、分かり易い。それから1時間30分くらい、水美のお陰で勉強が随分と捗った。


『助かった。飯に行こう』


『嬉しく存じます』


『外に行くのだ、何か着ようよ』


 水美は不満そうに桃色の浴衣を素肌に着た。肩を出す寸前だが、着ないより良い。

 肩までの髪が風にサラサラそよいでいる。


『水美は食べれるのか?』


『実体化すれば。でも、このままでも哲司様のを人知れず横からいただけますぞ』


『複製するのか?』


『のような物だな。一度見れば分かるぞ』


 軽く食べようと思い小料理屋に行った。


「河瀬の御屋形様、今日はお1人で?」


 ノッペラボウの女将が出て来た。


「うん、仕事中で知世さんは城に遊びに行っている」


「今日は、エビの天ぷらがお薦めですね」


 ビールとエビ天ぷらと肉豆腐にマグロのヤマカケを頼んだ。


『良い店だのう』


『安くて美味い』


 水美が俺の隣で楽しそうに店内を見ている。女将がビールとマグロのヤマカケを持って来た。

 俺に配膳されると同時に、水美の前にも配膳されていた。俺がビールを冷やしていると水美も真似ている。


『確かに料理もビールも美味いな!』


 水美の美しい顔が緩んでいる。追加注文をし次々と料理を食べて行く。天ぷらと揚げ出し豆腐が気に入ったようだ。


「御屋形様、この先の橋の辺りに黒カッパが出るという噂ですよ」


「それは物騒ですね。食べ終えたら、見に行ってみますよ」


「有り難う御座います」


『誰かが放したかな』


『妾もそう思うぞ』


 水美がしなだれ掛かって来ているので、柔らかくて温かい。


『やる気が失せる前に見に行こうか?』


『良いな』


 1銀貨でお釣りが来た。


 水美と橋に向かってタラタラと歩いて行く。天気の良い日だ。黒カッパは出ないなと思う。


『あの橋だな』


 幅6メートルくらいの橋が掛かり、川辺に柳が並んで植え付けてある。人や妖怪通りも結構多い。

 橋の上から川を見る。確かに何か怪しい感じがする。


『哲司様、川辺に降りますぞ』


 2人で土手を降りると、より一層感じが悪い。


『現れよ!』


 水美さんの呪文で、黒カッパが現れた。相当数が居る。

 黒カッパが橋の下から次々と出て来た。大型ばかりだった。


「火球」


「火球」


「火球」


 火球を連射して群れを止め、刀を抜き妖力を通す。


『乾け!』


 水美の呪文に黒カッパの動きが止まり、苦しみ出した。


「グワー」


『哲司様、火球を!』


 俺が火球を連射すると簡単に黒カッパが火に包まれ、消滅して行った。黒カッパは7匹だった。


『水美、助かったよ』


『そう言って貰えると幸せに感じるぞ』


 橋の上から拍手が湧き上がった。通行人が見ていたようだ。

 水郷城の警備隊が現れたので、説明して後を任せた。


『水美、お陰で力が上がったよ』


『何時でも言って下され』


 日本で倒していた黒カッパの2倍以上の大きさだった。


『こっちの黒カッパは皆大きいのか』


『あれは特別に大きい』


 またビールを飲もうと歩いて行った。



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