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第2章08話

第2章08話


 1週間くらい経つが水神様の判断はまだ出ないし、俺には水郷境の方を優先して欲しいと連絡が来ていた。

 水郷境は水郷城に比べると田舎で商店街みたいなのは町の通り1本しか無い。

 だが農業が主の為、町の周りには人口が多い。分家が馬鹿みたいな税を取る前は豊かだったのだが、現在は立て直し中である。


「最近は人族が目立っているようですね」


「分家と代官が無秩序に入れたからね」


「仕事は有るのですか?」


「余り無いよ。我が家が引き受けた分家の農地には元々の人達を優先しているから、獸人が半分くらいになっているしね」


「自作農に人族が多くなったのですか」


「分家と入って来た連中が詐欺みたいな事をしていたので、調べて元に戻している」


 知世さんは水郷城住まいなので水郷境の事情が分かっていない。また、知れば過去を思い出して良く無いので聞かれた時に簡単にしか教えてない。


「失業したり追放になった筈の連中が居座っていて、ヤクザをやったり闇売春をしているのだけどね」


「治安が悪くなっているのですか?」


「昔から居る人達や獸人は、博打も余りしないし女を買ったりしないのよ。だから不正に居座っている奴等で食い合いしている訳」


「代官は何もしないのですか」


「笹美城からの指示を守ると、我が家から追放になるしね。だから商店などをヤクザから保護する訳。すると尚更お互いに食い合いする事になる」


 知世さんは不可解らしい。


「奴等が見えない妖怪さんがそこら中で見ていて変な事すると、河瀬の詰め所に教えに来るので徐々に奴等の数が減っている訳」


「それで今日も旦那様は賭場荒らしなんですか」


「賭場と売春は同じ連中が運営しているので、賭場荒らしすると資金が無くなるからね」


「哲司殿、ワクワクします!」


 宣姫さんが賭場荒らしが好きになって来ていた。


「売春宿も一緒だから、今晩はまとめて荒らすぞ。賭場でも客に女が付くから、女はかかって来ないのは放置それ以外は全員斬って構わない」


「客もですか!」


 宣姫が驚いている。


「だって全員ヤクザか犯罪者ですからね。下調べでは水郷境の人別帳に載って無い人達ばかりだったと報告も来てますし、甘い事していると何時まで経っても変わらないですから」


「代官への脅しにもなるしな」


「男は全員かかって来ると思いますよ。捕まれば重罪の人達ばかりみたいですから」


「河瀬の家には調査権は有るけど取り締まり権が無いからな」


 時計を見ると夜の9時過ぎだった。


「行きますか」


「そうだな。全員透明になって戦うので、互いに気を付けるように。宣姫様と知世さんは中庭で待ち伏せだ、必ず半数近くは中庭に逃げる。

 女であっても気を付ける事。逃げる振りをして至近距離から攻撃されるぞ」


「「はい!」」


 天狗さんの注意が終わり、透明になって賭場の中庭に着いた。

 俺と天狗さんが一気に賭場に飛び込んだ。

 やはり男は全員向かって来る。


「氷球」


 効かない!

 妖力を流した力で斬ると、斬られた身体から光りを出して倒れ消えた。


「光を」


「全員で明るくしろ! こいつ等は悪霊だ」


「光弾」


 光弾が効果的だった。当たると悪霊の身体に大穴を空けて光りを吹き出して消滅する。


「《光弾》を使える者は使え!」


 怒鳴りながら切っていると何匹もの悪霊がかかって来るが、この世界に来てから戦いの時は相手の動きがゆっくり見えるので、光弾と刀で簡単に倒していける。


「女も殆ど悪霊だ! 斬り捨てろ、危険だ!」


 言われる前に、宣姫と知世さんは女達を斬っており、知世さんも光弾が使えるようで、相当撃っている。


 1階の悪霊の数は凄く多く、2階の女郎と客も下に降りて来ては襲い掛かって来る。


「宣姫と知世は、悪霊を近くによせるな! 寄られたら即座に移動で離れろ」


 俺は2人に注意をしてから、廊下に飛び込んだ。


「光を」


 悪霊の動きが止まったので光弾を連射する。


「光弾」


「光弾」


「光弾」


 廊下が狭いので狙い撃ちになっている。

 廊下の先で壁をぶち壊して天狗さんが出て来た。階段に溜まっている悪霊を斬りまくっている。

 俺も廊下を片付けて階段に行くと、半裸の女郎が凄い顔をして階段の上から飛び込んで来た。ゆっくりと飛び込んで来るので光弾で簡単に撃ち落として、登って行く。


「光弾」


「光弾」


「光弾」


 光弾の連射で2階までクリアにして、階段を上りきった。


「凄い数だな」


「我々がハメられたかもしれないです」


 天狗さんが頷いて2階に駆け込んで、客と女郎の姿をした悪霊を片付け始めた。

 天狗さんと俺で2階を終わらすと、奥の部屋に人間の女郎と思える人達が6人程固まっていた。俺達が透明になっているので、状況が分からないらしい。

 見覚えのある女が居た。お馴染みのオバお姉さんだった。壺振りはクビになったらしい。

 天狗さんと中庭に行くと、宣姫と知世さんが透明を解いて肩で息をしている。

 一眼姫が財布の山と銭箱を集めてあった。取り敢えず天狗皮袋に入れて、水郷城に戻った。


「凄い数でしたね」


「水郷城への悪霊の供給が止まったかも知れないぞ」


「残りを河瀬の詰め所に捜させます」


「俺もカラス天狗に捜させる」


「でも、あれだけの悪霊をどうやって操っているのでしょう?」


 宣姫さんが考え込んでいる。


「またロクでもない陰陽師でしょう」


「式神でも無いし何だろう」


 天狗さんまで考え込んでいる。


「一つ良い所は返り血が無くて清潔な事ですね」


 ヤヤさんがお茶を持って来て、床に布を敷いている。


「タマ次郎様が水郷境に捜索隊を出したそうです」


「有り難う」


 敷いた布に賭場と売春宿のお金を出してみると、結構な金額だ。


「悪霊がお金?」


「聞いた事が無い」


「悪霊の経済活動なんて……ヒトモドキと考えるべきですかね」


 俺と天狗さんが考えていると、知世さんが新たな突っ込みをして来た。


「でも奴等、悲鳴をあげなかったですよね」


「言われてみると無音でした」


 宣姫さんも気が付いた。


「ナンカ違和感があると思ったら悲鳴を1度も聞いて無いですね」


「飛び込んだ時から無音だった」


 どんどん分からなくなって来た。


 一眼姫が、お金を4等分してくれていたので宣姫さんと天狗さんが銅貨類を除いてしまっている。


「疲れたから帰る。考えても分からん」


「私も帰って母に聞いてみます」


「知世さん、我々は寿司にでも行こうか?」


 知世さんと一眼姫とピョコリ瓢箪が万歳をしている。


「俺も行こうかな」


 天狗さんは帰らないみたいだ。


「私も絶対に行きます!」


 結局、全員で寿司屋に行った。




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