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第2章06話

第2章06話


 朝食後に提案してみた。


「ねえ知世さん。山のような銅貨類を金庫に入れて普通に財布1つを天狗皮袋に入れて置いたら?」


「……そうします」


 知世さんも銅貨類の消化に飽きていたようで、普通の中身の財布を見て嬉しそうにしている。

 中銅貨と銅貨と粒銅の山程入った銭函を見て溜め息をしていると、ヤヤさんが来た。


「銅貨類の収集も宜しいのですが、床が下がりますよ」


「集めている訳では無いのです!」


 知世さんが少々キレている。事情を説明すると、


「それなら、1階の帳場で変えて貰ったら宜しいと思います。支払いは銅貨類が多いので喜びますよ」


 気が付かなかった。言われるとその通りだった。早速天狗皮袋に銭函を入れて、知世さんと1階に行った。


「タマ次郎さーん」


 事情を説明して、両替を頼むと喜んでやってくれた。


「帳場は銅貨類不足で両替手数料を支払っていたので助かります」


 早く相談すれば良かった。任せて2階で待つことになった。

 半時くらいで28金貨と7銀貨を持って来てくれた。


「こちらが端数の銅貨です。またお願いします」


「いえこちらこそ」


 呆気ない最後だった。3金貨と7銀貨と端数の銅貨類少々を知世さんにあげて、25金貨を3階の金庫に仕舞った。


「こんなに沢山のお金を私に持たせて宜しいのですか?」


「金庫に我等で稼いだだけで4000金貨を軽く超えるだけ在ります。持つだけでも、持っていて下さい」


「では何かの時に」


 結局2人とも貧乏症なんだと思った。


「2階に宣姫様がいらしてます」


 ヤヤさんが呼びに来てくれた。宣姫は居間で茶を飲んでいた。


「山賊の本拠地を一つ見つましたぞ!」


 とても嬉しそうだ。


「50人くらいの集団らしい」


「少し大規模ですね」


「全滅させて良いのなら簡単だろう」


 宣姫は完全強気だ。賭場荒らしで多数には妖術で先手を覚え、妖力も増やしたいのでウズウズしたいる。


「旦那様、私も!」


 知世さんも力を伸ばしたいので参加希望だ。


「一緒に行こうねー」


 宣姫と知世さんが、手を取り合っている。


「何の騒ぎだ?」


 天狗さんが朝風呂から出て来た。


「山賊退治ですよ」


 宣姫が説明している。次の宿場町と峠の茶屋の間に有るようだ。


「完全に水郷境狙いだな」


「全滅にしましょう」


 知世さんが張り切っている。


「外は氷球で3人の連射で片付けて、洞窟は天狗さんの団扇で片付けでどうです?」


「それで行くか」


 知世さんが久し振りに槍を取り出している。それを見て宣姫さんが薙刀を取り出した。


「広いから良いですよね」


「どーぞ」


「疲れるから峠から移動で動きましょう」


「カラス天狗飛ばして場所確認するから、飛翔で飛び込もうよ」


 天狗さんが楽しようとしている。


「じゃ、それで」


 カラス天狗が見つけて来るまで峠で団子を食べて待つことにした。


「醤油団子ね」


 知世さんと宣姫さんは餡だった。天狗さんはビールだけ。

 一眼姫とピョコリ瓢箪は両方食べている。

 宣姫が知世さんの飛翔枝を見て飛翔をあげている。飛翔枝は遂にお役御免となった。


「水郷境と水郷城を飛べる飛翔です」


 知世さんが大喜びしている。気軽に妖術をやり取り出来るのは神様関係者の特権だ。


「天狗様、見つけました」


「じゃ、行くか」


 丁度、山賊が出る所だったらしく洞窟の前に40人くらい居る。囲んで氷球を連射して行く。


「氷球」


「氷球」


「氷球」


 3連射を一組にして打ってるが、先日買った妖力回復の数珠が良くてすぐに回復する。

 知世さんは5発くらい撃って、槍と移動攻撃をして回復し、また氷球を撃っている。

 宣姫さんが知世さんの攻撃を真似し始めた。


「これ良いです!」


 あっという間に外の山賊を殲滅して、天狗さんが洞窟に向かって団扇を一振りした。

 簡単に終わったようで仕事が増えてしまった。

 一眼姫がバラけたお宝を妖術でかき集めて、死体は消滅していた。

 天狗さんが外の山賊の財布を集めている。


「金銭以外に良い物が無いな……帰ろう」


 刀類まで消滅させて、帰宅した。居間を汚すとヤヤさんに睨まれるので、全員玄関から入った。


 居間に布が敷いてあったので、戦利品を広げる。金銭以外は数珠が6本くらい。皆、余り興味が無い。

 一眼姫が4等分してくれた。


「1人、金貨が192枚。大銀貨が203枚と銀貨が523枚


 宣姫さんが金貨と銀貨類だけ仕舞って知世さんを誘った。


「今日は水郷城の風呂で汗を流しましょうよ」


 知世さんが俺をジッと見て許可を求めている。


「行っておいで」


 知世さんが喜んで、3階に着替えを取りに行って直ぐに戻って来た。


「奥様を借りまーす」


 一眼姫とピョコリ瓢箪も連れて居なくなった。

 天狗さんも金貨と銀貨類だけ仕舞った。


「我等は天狗の里で風呂にせんか?」


「良いのですか?」


「アレが今朝やっと出て行ったらしい」


「お金を仕舞って、着替えを取って来ます」


「おお」


 床の布ごと持って、飛翔で3階の寝室にお金を置き、着替えを取って2階に戻った。


「行くぞ」


 天狗さんと天狗の里に着いた。屋敷の玄関にカラス天狗が並んでいる。


「天狗様、お帰りなさないませ」


「風呂の用意を、哲司と入る」


 露天風呂は広く、外の景色は水墨画のようだ。天狗さんがキョロキョロしている。

 突然お姉さんが現れ洗ってくれた。清楚な知世さんとは完全に別タイプの美人そのものだった。肩くらいまでの髪を後ろで束ねている。

 天狗さんが、お姉さんの方を見て考えている。


「知世には内緒な」


 言う訳に行かないじゃ無いですかー。


「それは風呂の精霊みたいな者だ。水の精霊と言うべきかな。お前がここに来たから存在を始めた。お前の前にしか現れぬし見えない。何も気にするな」


『哲司様、水美みずびと申します』


 声が出なくて返事が出来なかった。


「その精霊とは心で話すのだ」


 なる程と思った。


 2人で風呂に浸かって景色を見ている。


「ここは水の里のようだ。美しいだろう?」


「はい」


「水の里は入る者を選ぶ。哲司も入れてめでたく思うぞ」


「入れてなかったら?」


「普通の風呂に入っている」


 2人でまた風景に見入っていると、天狗さんが話し出した。


「嫁は小天狗の出でな、100年くらい前までは可愛い女だったのだが急に変になり始めて、大量の金貨を実家に送ったり弟を勝手に連れて来たり、大天狗の世界の常識を外れて来たのだ。

 注意を何回しても直すどころか、尚更酷くなってな遂に三行半となったのだが、今度は居座りを始めて5年でやっと今朝追い出したのだ。それもカラス天狗達に剣を突き付けられて追放となってな」


「大変でしたね。日本でも似たような話しは在ります」


「そうか……」


「早く再婚すると良いですよ」


「相手を見つけないとな」


「今度は大天狗に相応しい女性で」


「そうするよ」


 水墨画の世界は素晴らしく、見惚れてしまう。

 さっきのお姉さんがビールを持って来てくれた。お姉さんを見ないようにして、ビールを飲む。露天風呂でのビールは素晴らしく美味い。

 天狗さんは突然現れた日本酒らしきものを飲んでいる。天狗さんにも水の精霊が付いているのかもしれない。

 2人の飲み物を載せたお盆が全然沈まない、不思議な盆だった。

 山菜と猪肉を煮たおつまみが来た。とても美味しくてビックリした。


「此処は田舎でこんな物しか無い。風呂から上がったら水郷城で昼飯にしよう」


「哲司は笹美の国が水郷境にチョッカイを出して来た理由を知っているか?」


「知りません」


「此処もそうだが、水郷城は殆ど時間が止まっている。年老いた笹美の殿が身の程知らずに水郷城に住まわせろと言って来たらしい。

 水神は即座に断ったのだ。当然だった。普通の人間が入る事も出来ない場所に、どうやって入る?

 河瀬の家が羨ましくて堪らなくなったのよ。そこで水郷境に狙いを付けたのだ。あそこも時間の流れがゆっくりしている不思議な場所でな、せめて水郷境に住みたくなった訳だ。

 だが長年、互いに不干渉の取り決めが在り笹美の国の殿が住む訳にも行かんので併合しようとしているのだ」


「知りませんでした」


「心配は要らん。これ以上やったら水神が動くだろう。動けば笹美の国が無くなるからな。水を止められたら終わりだ」


「馬鹿みたいな話しですね」


「本当にそう思う」


 風呂から上がって、俺だけお姉さんに身体を拭いて貰って着替えた。殿様気分だった。

 知世さんには内緒ね。




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