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第2章05話

第2章05話


 知世さん達は風呂から出て来て、冷たい麦茶をヤヤさんから貰っていた。

 宣姫は浴衣が気に入ったらしく喜んで着ている。


「初めて着ました」


「初めて?」


「ハイ! 我が家には無いです」


「そうなんだ」


「お風呂も最高です!」


「常に使えるから入りに来て下さい」


 知世さんに誘われている。宣姫が嬉しそうだ。


「お昼ご飯を食べに行こうよ」


「「「お寿司!」」」


 知世さんと一眼姫達がまた寿司病を起こしている。3日も間を開けると病が始まる。蕎麦でも食べたいのだが。


「食べたこと無いです」


 宣姫が初めて宣言をした。


「じゃ寿司屋に行きますか」


 知世さんと宣姫と一眼姫は浴衣のまま寿司屋についた。


「イラッシャイ!」


「今日は綺麗どころが増えてるね」


「宣姫さん」


「……姫様!」


 一つ目のオヤジが慌てている。


「「「大トロ!」」」


「全員にとりあえず大トロ、俺達はビールも」


 全員ビールだった。知世さんが宣姫さんのビールを冷やしてあげている。


「初めてです。美味しい!」


 宣姫は初めてだらけで大喜びだった。お城から殆ど出た事が無いようだ。


「御屋形様、山賊が増えて水郷境に来る人達を襲っている噂ですぜ」


「今度は山賊ですか」


「この辺りに集中して、取引を減らそうとしていると聞きます」


「俺が叩くよ。山賊は美味しいから」


「城の係りに言って隠れ家を見つけさせます! その代わり連れて行って下さいね」


「良いですよ」


「ヤッター」


「姫様も悪叩きですか? 御屋形様の悪影響ですね」


「俺は義務を果たしているだけ」


 宣姫は話しながら必死に寿司を食べている。知世さんに聞きながら、注文の嵐状態だ。


「御屋形様、鯛です。天狗の旦那も」


 合間をぬって我等にもお勧めを握ってくれている。


「今日の賭場は大きいのかな」


「さっきカラス天狗に聞いたら結構大規模と聞いた。大胆なものだ」


 天狗さんが呆れている。


「ビールね」


「ヘーイ」


 宣姫の食べっぷりは大したものだった。身長は165センチくらいで締まっているので、練習なんかをしているのかもしれない。大きめの胸に溜め込んでいるとも考えられる。

 知世さんが2杯目のビールで顔を赤らめて来ている。宣姫はガブガブで飲んでいる。


「ビール、気に入りました?」


「哲司殿、これは気に入りました!」


 超ゴキゲンだった。


 宣姫がサッサと酔っ払ってしまったので、帰ることにした。


「4銀貨、姫様は食うね!」


「好きなだけ食べさせてやって」


 一つ目のダンナが笑っていた。


 屋敷に帰って宣姫を客間で寝かし、居間に戻ると一眼姫とピョコリ瓢箪が寝ていた。


「俺も晩飯まで寝る」


 天狗さんが自分で客間に行った。

 我等も晩飯まで知世さんと3階に行く事にした。


「奥に部屋を見つけました」


 知世さんが廊下の突き当たりに隠し扉を見つけたのだった。


「簡単に開きますね」


 俺が開けると知世さんが不思議そうにしている。


「私は開きませんでした」


 中は武器や妖力道具でいっぱいだった。


「父の刀もここで良いですかね」


「そこの刀置きを使えば」


 知世さんが大切そうに刀を置いた。


「あの箱は何でしょう?」


 一角を占めている箱の山を見る。


「全部、金貨みたいだよ」


 これが有れば知世さんも、お父さんも苦労しなかったのにと思うと切ない。

 寝室の金貨でさえ手に余っている。放っておくしか無い。何世代かで貯めたのだろう。

 懐中時計があった。


「知世さん、これ使って良いかな?」


「全て旦那様の物ですよ。お好きに」


 やっと文明の力が手に入った。昼8つが鳴ったのでまだ昼の2時だと分かった。

 まだ正確に動いている。妖力道具なのだろう。


「何の道具です?」


「時を計ります」


「鐘を聞けば済むのに無駄な道具ですね」


「言われたら、そんな気がして来た」


 懐中時計を持って部屋を出た。知世さんは隠し扉は見えるが開けられないようだった。


「私達は凄いお金持ちなんですね」


「自分達で稼いだお金でさえ使い切れないのに無駄でしょう」


「旦那様の言う通りです」


 知世さんが大笑いしていた。

 疲れを取るのに2人で3階の風呂に浸かっていると眠くなって来た。ビールが効いているようだった。


「知世さん俺達も晩飯まで寝ようよ」


「そうですね」


 知世さんも疲れたらしく二人で寝てしまった。


 起きると夕刻だった。時計を見ると6時前なので、顔を洗って2人で2階に降りた。

 居間で皆が茶を飲んでいる。


「哲司殿申し訳無い。余りに美味かったので、ビールを飲み過ぎてしまった」


「気にしないで良いですよ」


 ヤヤさんが俺と知世さんに茶を持って来てくれた。


「夕食は半時後です」


「食べたら行くぞ」


「天狗さん場所を知ってます?」


「任せろ」


 夕食は天ぷらだった。上手に揚がっていて、とても美味しい。

 宣姫がまたビールを飲んでいる。


「少しで止める。心配なされるな」


 困ったお姉さんだ。


「宣姫、賭場は狭いから薙刀は無理だぞ」


「刀が有ります」


「客はかかって来ない限り放置、ヤクザと関係者らしいのは殲滅にします」


「そうするか」


 9時近くに出かける事になった。


 天狗さんのワープで中庭庭に着いた。途端に庭を警備しているのが3人見えた。

 俺は氷球で2人倒して天狗さんと中に突入する、宣姫も外のを片付けて来た。

 中で目の端に陰陽師みたいのが3人見えた。奴等が札を出したので氷球を撃ちながら切りかかる。

 真ん中と左端は顔に、氷球が直撃し、右端は詠唱を止めて逃げようとしたので切り倒した。

 陰陽師は詠唱さえさせなければ簡単に終わる。3人から力が流れ込んで来ている。やはり陰陽師は美味しい。

 逃げようとしている客から収集で財布を取り上げ、陰陽師と倒れている侍からも数珠と財布を抜いた。

 天狗さんは親分と用心棒を片付けて、金箱を回収している。

 宣姫は壺振りのオバお姉さんを捕まえて、帯で縛っている。帯を解かれてほぼ裸になっているた。

 暴れなければ何も起きないのに馬鹿な女だと見ると、またあのオバお姉さんだった。


「女だから切らないでやった」


 宣姫がウンザリしている。女に触れたので宣姫を浄化していると、天狗さんが来た。


「全て回収した。帰ろう」


 2階の廊下に雑巾が用意されていたので、足を拭き居間に入った。


「お帰りなさない」


 知世さんがにこやかに迎えてくれた。


「山分けするぞ」


 ヤヤさんが布を敷いて置いてくれたので、その上に全部を載せると一眼姫が3等分してくれた。数珠は皆さん見向きもしないので、俺が貰った。

 自分の分を数えてみると、金貨が147枚、大銀貨が108枚、銀貨が244枚と一抱えの銅貨類だった。


「客が20人以上居たので、それなりになったな。銅貨類は要らん。風呂に入って寝る」


 天狗さんが風呂に行ってしまった。


「私は母に報告して、山賊発見の依頼もしないと。銅貨類は始末して下さい」


 知世さんが両手を前に付いて、銅貨類の山を前にうなだれて居た。



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