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第1章02話

久し振りの投稿で混乱中ですが、今日4話投稿予定です。気に入ったら読んでくださいね。

第1章02話


 悲鳴のする方に走って河原に飛び出したら女の人が川を背に包丁を構え、3人の刀を持った男に囲まれていた。雑兵のような格好をしている。

 俺がウサギを投げつけコートを脱いで走って行くと、男の1人がメチャクチャに刀を振り回して俺に向かって来た。素人さんだったので助かった。

 素早く踏み込んで木刀で眉間を割ると後ろにドッと倒れた。


「寄るな! 切るぞ!」


 もう1人が大声で叫び、刀を8の字に振り回している。俺がスーッと寄って行くと下がり始めたので首に切りかかると簡単に木刀が当たった。


「ゴキ!」


 男の首から嫌な音がするとバッタリうつ伏せに倒れた。先程も感じていたが俺に何かが流れ込んで来るような感触がして来た。

 最後の1人が走って逃げたので、とっさに火球を飛ばしてみる。


「火球」


 この世界では人間にも妖術が使えてしまった。火の球が結構なスピードで飛んで行き、男は火達磨になって倒れた。

 また俺に何かが流れ込んで来る。

 人助けとは言え3人共殺したような気がする。どちらもピクリとも動かない。


 女の人は包丁を下ろし、身体を震わせ俺と一緒に雑兵を見下ろしていた。


「大丈夫でした?」


「……お陰様で助かり申した」


 助かり申した? 俺は何処に居るんだ?


 俺は女の人を始めてまともに見てみる。身長160センチ以下。痩せて色黒だけど美人の範疇に入る。ヘアスタイルはオタマジャクシ。俺と同年代か、少し年上だと思った。短めの和服を着て草履を履いている。

 女の人は、俺が投げ付けたウサギを拾って来てくれた。

 剣術を習って長いが、まさか人間を木刀で殴り殺すとは思ってもみなかったので呆然としていると、いつの間にか馬に乗った鎧の武士と雑兵が10名程こっちに来ていた。

 全く気が付かなかった。武士みたいのが馬から下りて死体を確認している。


「お前が倒したのか?」


 俺が倒した雑兵を確認しながら大きな声で聞いて来た。俺が助けた女の人はひれ伏している。


「俺がやった」


 この世界のお巡りさんで、俺は捕まると覚悟した。武士は俺をジッと見て、懐から金貨を3枚俺に差し出した。


「褒美だ。受け取れ」


 俺は捕まる予定が褒美を貰ったらしい。敗残兵1人に金貨1枚が相場のようだ。

 雑兵達が死体と武器を回収して、武士は馬に乗りススキだらけの野原に消えて行った。


「捕まらないで良かった」


 思わず口に出してしまった。


「私の為に申し訳御座いません……」


「いえ、無事で何よりでした」


「どちらの武家様ですか?」


 俺は答えようが無く黙っている。


「私はこの里に住む知世ちせと申します」


「斉藤哲司です」


 俺が頭を下げると、知世さんが深々とおじぎをした。


「今日は何年何月です?」


「円夕3年の2月で御座います」


 不思議そうな顔をして俺を見ている。

 タイムスリップにしても円夕なんて有ったか?俺が黙って考えていると知世さんが俺の作務衣コートと背負い籠と槍を持って来た。


「先程の雑兵が持っていた槍で御座います」


 持ってみると酷く安物の槍だった。この治安から言って無いよりマシなので貰っておく事にした。


「良かったら荒ら屋ですが、おいでになりませんか? 白湯くらいは出せますが?」


 俺は女の人の家に行く事にした。


「河原で何をしていたんです?」


「枯れ枝と食べ物集めです魚でも捕れたならと思って……」


「このウサギを解体出来ます?」


「出来ます!」


 知世さんの目がキラキラしている。お腹が空いていたらしい。一角ウサギは河原で解体した。


「暗くなりますが、家の近くで解体しますと野獣が集まりますので」


 解体が終わり肉と毛皮を河原に生えている草の葉に包み、それと角を背負い籠に入れて我々は出発した。


 夕日の中に5軒くらいの倒壊寸前の小屋が見えて来た。その中の1軒、知世さんの家につくと家の中は真っ暗だった。


「光を」


 光球を部屋の中に出すと凄く明るくなった。


「お武家様は色々な妖術が使えるのですね」


 知世さんが感心したように光球を見ている。

 その夜は2人でウサギの塩焼きとなった。知世さんの解体能力は素晴らしく、あっという間に肉となっていた。串に刺して囲炉裏に小さな火球を出してウサギを焼く。

 知世さんは暫く何も言わず肉に没頭していた。ウサギの肉はなかなか美味しい物だった。

 この地域は合戦が終わったばかりで敗残兵があのようにウロウロしていて危険なんだそうだ。


「今、敗残兵狩りを領主様がしていて、敗残兵には賞金がかかってます」


「この金貨ですね。これはどの位の価値が有るのです?」


「金貨1枚で3人家族が3~4月食べれると思います」


「そんなにですか」


「失礼ですが、お武家様は迷い人ですか?」


 それ程不思議そうな様子も見せず知世さんが聞いて来た。ごまかそうとも思ったのだが見知らぬ土地で情報不足は命取りになるので素直に答えた。


「迷い人と言うのですか? ここと全く異なった世界から来てしまったようです」


「ここでは時折見かけます。余り人に言わない方が良いと思います」


 時折、何かの拍子に違った世界から来る人達が居るようだ。違った服装の場合はすぐに分かるので庄屋の所に連れて行かれる場合も有るらしい。知識目的なのだろうか?


「哲司様はお武家様に近い服装ですので、問題無かったようですが」


 武術の練習着でウロウロしていたのが幸いしたらしい。


「知世さんは、この集落に1人?」


「5家族で開拓していたのですが病人が出たり敵兵士に襲われたりで、私1人になってしまいました」


「ここは危険なのでは?」


「故郷に帰れば良いのですが、故郷までの道中は女1人では襲われるだけで……」


 この世界の治安の悪さが良く分かる話だった。



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