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第7章10話

第7章10話


 妖術師全員で2週間かかって水郷境の池は完成してしまった。


「凄く早く出来たよね」


「風の精霊さんの協力が大きかったです」


 林弧ちゃんの言う通りで、なんと実体化して舞花さんが働いてくれたのが凄く助かった。


「どうせサピカ村組の前には当たり前みたいに出ているのだから、今更隠れていても馬鹿らしいですよ」


 確かに舞花さんはサピカ村別宅に部屋まで持っている。実体化して知世さんとも仲良しになってしまった。


「少しずつ手直しするとして魚集めを始めましょう」


 依能さんの提案に全員すぐ乗った。


 宣姫さんが地理に明るく樫の国の湖を知っているので知世さんと組んでいる。ブリュネちゃんと舞花さん、依能さんと善姫さん、相変わらず、俺と林弧ちゃんで一組だった。


「とりあえず、この湖に魚が窒息しない程度に運んで来ましょう」


「「「「「「「はーい」」」」」」」


「御屋形様と一緒だから大きな網を持って来ました」


 林弧ちゃんが舌を出して笑っている。樫の国に着くと山に囲まれた盆地みたいな場所に有る大きな湖だった。


「旦火の国の湖に似ているね」


「山間の湖は全部似てますよ。でも此処の方がニジマスもエビも大きいのです」


「本当に、美味しそうだね」


 さっそく水美に手伝って貰って集めてみる。


『『収集』』


「本当に大きいね。美味そう』


 集めたニジマスとエビは上から見ても大きく光っている。


「樫の国の特産物で美味しいので有名です」


 林弧ちゃんと一緒に5往復くらいしても、集まりが悪くならない。


「増やし過ぎですね。魚が窒息する寸前かも知れません。ここからもっと運びましょう」


 樫の国は収入を増やす為に、やたらに魚を増やしていたようだ。


「周りに人の気配が全く無いし、水の色から見てヘドロが溜まって来てますね。もう少しで魚とエビの死骸だらけになる所でした」


 湖の現状の適正値までニジマスとエビを運んでしまう事にした。


 開拓村の湖で林弧ちゃんと休んでいると、依能さんが善姫さんと来た。


「私達の行っている湖は魚を増やし過ぎで、窒息が起きる寸前だ」


「俺の行っている湖も同じ」


「ヘドロまで溜まって来てますよ。もう少しでプクプク泡が上がって来そうです」


 林弧ちゃんの報告に依能さんがウンザリしている。


「出来るだけ魚とエビを運んで、最後に浄化でもします?」


「哲司さんが頑張っても余り効果は無いですよ。日々の手入れと適正な魚とエビの量を維持しないとね。もう水を抜いてヘドロを取り除くしか無いので放置して、出来るだけ魚とエビを貰って適正値にしてあげましょう」


 依能さんが見捨てているようだ。


「運び過ぎで湖と池は大丈夫ですか?」


 善姫さんが心配そうに依能さんに聞いている。


「湖と池が適正値を超える前に、水郷城の堀や川に放流しますから大丈夫ですよ。水郷境と開拓村の川には魚止めが設置して有るので逃げません」


「ゴミが溜まらないの?」


「カッパに任せてある」


 俺の質問に依能さんが簡単に応えて来た。


 最近、依能さんは水神様の前以外では俺には冷たいけど、善姫さんと知世さんには優しく応えている。差別だと思う。


『これだけ大きな湖なら今日中には終わらないな』


『そうだね。他の池とかも有るし3日くらいは掛かりそうな気がする』


 タマ左右衛門さんから連絡が来たので俺だけ外れ、林弧ちゃんは水郷城の堀の改造に行った。俺はタマ左右衛門さんに言われた書類にサインして、水の里に逃げた。


『帳面所で2~3時間使った事にすれば、水の里にタップリ居れるよ』


『哲司はサボるのが上手くなったな』


 水美と風呂に入って疲れを取る。


『休もうと提案しても無視されるんだもの』


『余り張り切ってやっていると、知世と善姫は後で体調を崩すのだがな』


『そうだね。心配だけど2人供言う事を聞かないから』


『今まで手伝い要請が無かったので、張り切っているのだ』


『余り張り切って働かれると、こっちがバテるよ』


『水の里で休むさ』


 水美が言った言葉で思い出した。


『水郷城の風呂と水の里の風呂とでは、どっちが効果が高いの?』


『そりゃあ水の里だが、知世には水郷城の方が効くだろう。水神と宣姫が気にかけて必ずどちらかが一緒に入っているからな』


『神の出汁に薬効が在るのか……』


『知世も楽になるから水郷城に入り浸っているのだ。知世の体は水郷境では問題無いが水郷城のような時間が止まっているような世界には、まだ慣れていないのでな。作り変えの最中だ。

 宣姫はヤマコの里の13年間で乗り切っているので、サピカ村別宅の方が楽に暮らせる。

 特に哲司が裏山を買って池を作り、風呂を改装したので環境も変わり体も楽で仕方無いと思うぞ。特にあそこでは自由にしていられるしな。精神の問題なのだ。風の精霊も同じだな』


 なる程なと思った。


 話しを聞きながら風呂で水美にスリスリしていたら寝てしまった。

 目を覚ますと水の里の居間で水美の膝枕の上だった。


『起きたか。ビールでも飲むか』


 ビールを飲んでから、水美と思い切り仲良くしてから作業に戻った。



 ニジマスとエビの移送に、実際には5日掛かってしまった。人はだんだんダラケてしまい、効率が悪くなって行くのが原因だった。


「樫の国の湖はスカスカになってしまったね」


「あのくらいスカスカにしないと全滅するところですよ。感謝して貰うべきですね」


 林弧ちゃんは強気な発言を崩さない。全員でサボって寿司屋に入り浸っている現状では、余り真実味が無いが少し集め過ぎてしまった結果の振り分けがまだ済んで無い。


「新たな川に魚止めを付けて、そこに突っ込むしか無いですよ」


「依能さん、気楽に言うけど残りの川って大ナマズさんの川だよ。俺は行きたくないからね」


「私が行きますよ。大ナマズさんの食事にもなるし、反対はしないと思いますよ」


 依能さんが大ナマズさんの所に行ってくれるのなら反対はしない。


「サピカ村別宅の池にも大きいのだけ少し入れませんか?」


「それ良いね。善姫さんに喜んで貰えると嬉しいな」


「喜んでくれますよ」


 林弧ちゃんに勇気付けられてサピカ村別宅でもニジマスとエビの養殖をする事になった。


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