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第7章08話

第7章08話


 湖が出来てから10日経った。枯れ葉なども流れ込みうっすらと土も入って来ている。


「虫なども集まって来ているし、色々な生物が入り込んで来てます。成功ですね」


 ブリュネちゃんの報告を聞いてホッとしている。


「思いがけなく問題が起きなかったね」


「サピカ村別宅の池が、良い予行演習になっているので楽ですよ」


 サピカ村の池も買った山から色々な物が流れ込んで、水の色も変わって来ている。


「先日、カエルとか雑多な生物を集めて来て放しているので自然環境に少し近づいているようです」


 依能さん達は色々な湖に行って観察して歩いているようだ。


「御屋形様。旦火の国の水は減らしているのですか?」


「今は5割くらいになっている筈だけど」


「じゃ、旦火の国のニジマスとエビを貰って来ても構わないですよね。どうせ半分くらいは死んじゃうんですし」


 林弧ちゃんが突如養殖用のニジマスと淡水エビのカッパライ案を出して来た。


「構わないと思うよ。放っておけば自然減になっちゃうんだから」


「2人組みで網をぶら下げて、網を水に浸けた状態で収集を唱えてそのまま飛翔でこの池に帰って来れば弱らないで大量に集められると思うのですけど」


 なかなか面白い考えだ。


「俺と一緒にやってみる?」


「やりましょう!」


 採取する場所は林弧ちゃんに任せて、俺が収集する事にした。


「飛行で浮いて、この縄を持っていて下さい。透明化したら行きます」


 網に繋がった縄を持って浮いていると、どこかの湖面に移動した。

 収集は水美に任せる。


『収集』


 湖面から見ていると網の中が一杯になっているのが見える。林弧ちゃんが開拓村の湖に移動して網の中をカラにして、また湖面に飛んだ。

 我々はそれを10回くらい繰り返した。


「あの湖はこれで終わりです。次に行きますね」


 少し小ぶりで山に囲まれ、周囲が森の湖だった。同じ作業を5回くらい繰り返して湖畔に移動した。


「助かりました。少し間をあけて、またやりますよ」


 依能さんとブリュネちゃんが同じ事をしている。


「小魚や小エビ、カニなどの餌になるのを運んでいるのです」


 見ていると、やはり10回くらいやって我々の所に来た。


「暫く定着するのを待って、またやります」


 依能さんが俺の所に来て説明している。ブリュネちゃんが湖面を飛び回って様子を見ている。


「苔が生えて来たら、またやりますよ」


 ブリュネちゃんが来て報告してくれた。


「害になる生き物が少ない所から集めなければならので手間がかかるのですよ」


 今日行った湖なども人里離れている所ばかりだったようだ。


「周りに人が住んでいると、水が汚れて悪い虫が湧いているんですよね」


「水田の水は足りるんでしょう?」


「十分過ぎる状態ですね。水田が今の5倍の面積になっても余裕ですよ」


 林弧ちゃんが胸を張っている。


「水郷境の池も集落や畑、水田から少し離れて高い場所に造ってますので汚水や肥料の悪影響は無い筈です」


 家屋を建てたり開発も許可制にしてあるので、池や湖の汚染は避けられる。許可制にしないと不法な居住者が出て来る。


「水郷境の門で揉め事らしいです。おられるなら御屋形様の判断が欲しいそうですが」


 何だろう?


「面倒な日だな。林弧ちゃん行ってみよう」


「はーい」


 とんでもない年齢なのに、何時も可愛い林弧ちゃんだった。


 正門に着くと、門番の侍さんと良い身なりの侍が5人睨みあっている。


「何があったの?」


「この者達が水神様に会いたいと言ってまして」


 ここまで非常識な手合いが来るのは久しぶりだなと思って見ていると、相手が話し始めた。


「そこの若輩者よ。それなりの地位の者に伝えよ。私は樫の国の目付役、篠山一善と申す。水郷城の領主に面会したい」


「一国の領主に下級武士風情が何を寝言を言っている。帰れ!」


 俺の対応に腹を立てたらしく怒鳴り始めた。


「下級武士だと! 小国の偽物神にこちらから会いに来るだけ感謝するのが当然。ふざけた対応をするでない!」


「林弧ちゃん、剥いてしまって」


「御意。御屋形様」


 林弧ちゃんは、全員褌一つにして縄をかけてしまった。相変わらず神様の使いは便利な妖術を使う。うらましいなと常々思ってしまう。


「御屋形様。とんでもないお手数をお掛けして、この者達はまだ見習いで」


 守備奉行の蓑田さんだった。慌てて飛んで来たようだった。


「いいよ。この2人が見習いさん?」


「はい。正月から見習いとして守備隊に入った者達で有ります」


「2人だけ?」


「3人入れました」


「そこに積んである刀と着物を3人に配ってあげなよ。残ったのは売って守備隊で宴会の足しにでもして」


「「「有り難う御座います」」」


「これからは、守備奉行さんに先に相談してね」


 門番が真っ赤になっていた。


 林弧ちゃんが俺に5人の財布と数珠をくれた。


「奴ら大人しいね」


「声が出ないようにしてあります」


 素晴らしい対応だ。


「ちょん髷を切ってから、樫園城に捨てて来て」


「御意」


 林弧ちゃんが5人の、ちょん髷を無くしてザンバラ髪にしてから飛翔で連れて行った。


「御屋形様。良かったのですか?」


「構わないよ。水神様に会わせるには非常識過ぎる。詳細は門番さんに聞いて。水神様への報告は守備奉行からお願いしますね」


「御意」


 蓑田さんと話していると、林弧ちゃんはすぐに帰って来た。


『水神に会いに行かんのか?』


 水美が聞いて来た。


『面倒だもん』


『あの弱気神は、またハラハラものだぞ』


『させとけば良いよ。最近働いて無いし』


『それもそうだな』


 水美が笑っている。


「林弧ちゃん、寿司屋にでも行こうか?」


 林弧ちゃんが万歳ポーズをしていた。




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