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第1章01話

第1章01話


 俺の名は斉藤哲司さいとうてつじ卒業式寸前の高校生だ。身長は170センチ、体重60キロ。服は剣術の稽古着意外は数着しか持って無い。学校と道場しか行かないような生活だったので問題は無かった。

 山水郷市と言う田舎町に住み俺の住んでいる場所にはいまだに江戸時代から建っている家が何軒も有る。

 お陰様で観光でも人が来るので過疎らなくて済んでいる。

 古い街のせいか不思議な生き物もアチコチに居て、俺もそれが見えるし話しも出来るので苦労した。

 俺には6歳年上の兄が居るが、全く興味を示さず何を言っても馬の耳に念仏だった。

 常に人を馬鹿にしている人で東京の大学に行ってくれたのでホッとしたくらいだった。

 父と母も俺には何も期待して無いようで、変な虚言癖の有る息子にウンザリして優等生の兄に全ての期待を掛けている。

 不思議な生き物が見えるのは人に言っても信用されず、信用してくれたのは幼なじみで神社の娘の恭子ちゃんだけだった。


 第6感を持っている者はそれ程少ない訳では無いのが分かったのは中学に入った頃だ。

 1学年に2~3人は居るのだが、変な目で見られるから皆、人に言わないだけだった。


 何もしないと怖かったので、5歳の頃から道場に行って剣術を習っていた。毎日毎日稽古をして先日、何とか目録を貰えた。


 師匠は俺に色々な事を教えてくれた。我々第6感持ちは妖怪や幽霊などを見れ、触れ、話すことが出来るように相手もこちらに被害をもたらす。

 従って子供の頃から道場の師匠から簡単な《祓い》、《妖術》などを教えて貰った。師匠も第6感持ちで根気よく教えてくれた。


「お前がこれから普通に生きて行きたかったら必死に学べ。妖怪はお前が見えているの事に気付くし、お前には仲間が少ない」


 師匠の有り難い教えだった。祓いが効き目を表したのは小学校の終わり頃、妖術は4年生くらいから少しづつ使えるようになった。治療以外は人間に効かない情けない物だったが、妖怪や悪霊を追い返すくらいの役目は果たしてくれた。


 古武術の強い人が治療院をやったりする理由が分かる。宗教が病気を治すと騒ぐのは教祖が第6感持ちなのかなと思ったりもする。


 道場の帰り道、練習着に作務衣コートを羽織ってコンビニに向かっていると河原に悪霊を見つけた。放っておくと悪さをするので退治するのが高校に入った頃からの習慣となっている。


「黒カッパか」


 道場で風呂に入って洗い立ての練習着に変えたばかりで汗をかきたくなかったが、背中に背負った練習用の木刀を木刀袋から出して暗くなっている河原に向かう。


「光球」


 第6感持ちにしか見えない光源が俺の前方の頭上に現れ河原を照らし、黒カッパが俺にかかって来た。結構なスピードで走り込んで来たが木刀を上段から打ち込んでやると消え去った。

 小物の退治は結構楽で、殆どは木刀で片が付く。1匹退治するとそれなりに妖力が上がっているらしいのだが、怪我の治療と光源くらいしか使わないので自分がどのくらい妖力を上げているのかは分からない。


 妖怪を倒すと倒した妖怪の妖力が手に入る。黒カッパを倒したので水の妖術が上がっている筈なのだが。

 この近辺で見る悪霊は黒カッパと火ウサギくらいだ。黒カッパは子供を川に引き込んで溺れさせたりするし、火ウサギは火事の原因となる。見付けると出来るだけ退治している。従って俺は水と火の妖術が使えるようだ。

 俺の住んでいる地域では、大体この2種類の小物妖怪の他は死神さんくらいしか会わない。

 死神さんは神様の使いだし、他の妖怪は遊んでいるだけで基本的に悪さはしない。


 橋の下に、もう1匹黒カッパが見えた気がしたので見に行くと暗がりに隠れている。


 俺が近づくと光源に黒カッパが照らし出された。結構大型の黒カッパだ。150センチくらい有る。

 俺が木刀を構えると黒カッパが走り込んで来た。スピードが思ったより早かったので、木刀の狙いが外れ相手の肩に木刀が当たった。


「ギャー!」


 一鳴きすると黒カッパが逃げ出した。


「火玉!」


 10センチくらいの情けない火球が黒カッパに飛び甲羅に当たった。


「グギャ!」


 黒カッパがひるんだ所に飛び込んで木刀を振り下ろすと黒カッパが透明になり始め、そこに俺がよろけて飛び込んでしまった。




「ここは何処だ?」


 夕方になりかかったススキだらけの場所に俺が居た。

 どうやら黒カッパの出した逃走空間に俺が飛び込んだようだ。始めての経験に慌てるが良く状況を理解していない。

 スマホを出して位置情報を見ようと試みたが電波が来ていない。他の持ち物は着がえの練習着の入った肩掛けバッグと木刀だけ。


「とりあえず落ち着け」


 自分に言い聞かせて周りを見渡してみる。俺の右側に川が流れている。前方に林が見えていた。ススキがウザイので林に向かって歩いていると、凄いスピードで何かが飛んで来た。

 反射的に木刀を振り撃ち落とすと角の生えたウサギだった。死んでいるようなのに光になって消えない。


「妖怪じゃ無いの?」


 こいつが妖怪じゃ無いと俺は何処に居るんだ?

 一角ウサギは60センチくらい有る大物だった。持ち上げてみると結構重い。何か変な状況になっているのでウサギは食料にもなるだろうから持って行こうか?

 悩んでいると河原の方から女の人の悲鳴が聞こえた。反射的に俺は左手にウサギを持って河原に向かって走っていた。



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