くノ四十三 大地を支える魚
今は動けない それが竜華の定めだけれど
諦めはしない もう目覚めたから
燃えるときめきは 時代を写し
色鮮やかに 燃え盛る炎 (ZG)
読んで頂いている方々、ありがとうございます。
私は転生前、山田忍の時に敗北感を何度も味わった事がある。両親の借金返済の為に高校を辞めた時に、それを苦に両親が自殺した時に、夜の仕事で客にバカにされた時、40過ぎても化粧もろくにせずコンビニと深夜スーパーを掛け持ちでバイト中に子連れの親子を見た時‥‥数え上げればキリが無いほどだ。
竜神様の計らいで、異世界に来て第2の青春を満喫し浮かれていた時に丁度、理不が女の子を軟派していた時だった‥‥あれはもう、暴力と言う名の自然災害‥嫌、天災に近いか。
何の前触れも無く一瞬で空が暗くなり、巨大なそれは現れた。後で分かった話しだが、
竜人にはならずに、ドラゴンを貫くドラゴン。
竜神と同等かそれ以上の力を持ち、空間の狭間を飛び続け、イスラム教では大地を支える魚と言われ、この世では災悪のドラゴン『バハムート』
彼の気紛れか、この世界に生きる者達に嫌気がさしたかは解らない。
ただ現れて、3度くちから黒い炎のブレスを吐き出して、そして次元の狭間へと消えただけ。
後は地獄だった‥記憶に有った景色は何処にも無く、人々は逃げ惑い泣き叫ぶばかり。
余りにも唐突すぎて腕輪の力も間に合わず、仮に間に合ったとしても、恐らく無駄に終わっていたに違いない。
何処までも続く黒い炎の道三本が圧倒的な力の証明だった。
これが転生してから初めての敗北感である。
その時、私は見た‥‥確かに見たのだ!巨大なバハムートの頭の上に小さな人を‥‥紺色のマフラーを2本靡かせ立つ者の姿を‥‥あれは忍者‥‥
そう、間違い無い!あれは忍者だった。
さっきまで居た、白い革のロングコートを着た女性は見当たらない。
難を逃れた私と理不は、他の仲間達か心配で大急ぎで城へ戻った。
当然バトルアーマーを装着してね。
飛びながらでも良かったが、理不が慣れていないため、ジェットブーツで向かったが‥‥
城は直撃を受け、跡形も無く吹き飛んでいた。
全く頭の整理が追い付か無いまま、ただ茫然としていた時だった。
《‥ザッ‥リュ‥‥ザッ‥ハザマ‥トバ‥‥》
バトルアーマーの内部スピカーから微かに、コピー腕輪の音声が届いて来た。
《皆!無事なの!みんなあ!》
応答は無い。
不安が確証に換わった瞬間だった。
「生きている!」と。
生暖かい目で宜しくお願いします。




