クリスティーンは眠らない プロローグその2
リーナから休暇をもらい、大須を離れたハルローに何があったのか?
クリスティーンは眠らない プロローグその2
一章 グアムにて
お嬢様から休暇をもらった僕は大須を離れ、
プライベートな用事でグアム島の仲のいい知り合いの
ところに来ていた。
海岸沿いから離れた山奥にある広い射撃場。
ガチッ、ガシャッ
パァーン!! カチーン!
パーン!! キィーン!
パーン!! キキィーン!
パーン!! キキィーン!
パーン!! キィーン!
パーン!! カーン!
パーン!! キィーン!……
僕のコルトガバメントから放たれた7発の弾丸は
的の金属のプレートに全弾はじかれ、
辺りに虚しく反響音が響き渡る。
『渋い顔してるね。どうだね金属の的に当ててみて、思った効果は
出てるかい、ハルロー君?』
ひょろっと背が高い黒サングラスの美中年がニヤリと笑う。
『あまり…… 古い銃ですし、やっぱりここまでが限界でしょうか、
ネイザンさん』
『いやいや、どうしてどうして君の銃は数あるコルトガバメントの
中でも素晴らしい超一級品だよ。
コルト45 マーク4・シリーズ70 ナショナルモデル。
入手困難な競技用の高性能モデルだが、君の持ってる
その特別なヤツは、現存する品質最高のスペシャルパーツを
軍関係者やガンスミスのつてで世界中から寄せ集め、組み
上げた、こと命中精度に限れば世界一のガバメントだろう』
『そうですかね……』
『君より早く銃を撃てる奴はこの狭いグアムで探しても
掃いて捨てるほどいるが、君とその銃のコンビに正確さ、命中
精度でかなうシューターは世界中探してもそうはいないよ。
日本じゃ銃が持てないから、君はなんかあるたびにここに足を
運び、私にコレを借りに来る。もったいないね、さっさとあんな
国に見切りをつけてブロシューターになればいいのに』
『ハハハ……、実はここにくる3日前、車でリーナお嬢様と
移動中に犬型武装ロボットに襲われました。
このガバメントで応戦しましたが、全弾はじかれて全く歯が
たたなかった』
『この銃の弾はグアムの観光客用に撃たせている奴とは
パウダー(火薬)が変えてある特製の軍用弾だよ?』
『かすり傷がついた程度で駄目でした。幸い相手の数が
少なかったのでお嬢様の運転で全部薙ぎ払ってなんとか
無事に壊せましたが、おかげで乗っていた頂き物の
マセラッティ・ミストラルスパイダーがおしゃかに
なっちゃいました(泣)』
『今度のハルロー君の敵さんは装甲殺人ロボットか……
まぁ、装甲といっても動きやスピードを殺すから、
頑丈で重くするにも限界がある。まぁマグナム銃
クラスなら貫通して機能停止までもっていけるん
じゃないかな』
『僕はお嬢様を守れる銃なら、なんでも使います。
それがデザートイーグルだろうとS&W M500だろうと
コンテンダーだろうと……』
『ふふふ、気持ちはわかるけど、それはやめておいた方が
いいなぁ。残念だけど君の小柄な体格じゃあ、ガバメント
以上の大型銃を持つと、銃に振り回されて、せっかくの君の
射撃の正確性・確実性という持ち味を殺してしまう』
『じゃあ、マグナム弾を撃てるガバメントはありますか?』
『ないね。ガバメントは作られて100年以上の歴史を持つ名銃で
様々な改良型が作られてきたが、マグナム弾を撃てる銃は
正式に市販されたものにはない』
『くっ……』
『しょげなくていいさハルロー君。たしかに市販されたまともな
ものにはないけど、ガンスミスが作ったガバメントカスタム(改造)銃
の中に、君におあつらえの物がある。君がそろそろステップアップ
したがる頃だろうと思ったんで用意しておいた』
『えっ……!?』
ドン!
テーブルの上に置いた高級なマホガニー製のケースを、
ネイザンさんが開けると、大ぶりなコルトガバメント
が1丁出てきた。
『これさ。《クーナン357マグナム》
クーナンって奴がコルトガバメントを思いっきり強化改造
して357マグナム弾を8発撃てるようにした』
『凄い。グリップも大きくなって全体に一回り大きいのに
重さはほとんど変わらない』
『撃ってみなよ』
『はい』
ガチッ、ガシャッ
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
ドーン!! ズゴツ! ベキッ!
瞬時に撃ち尽くした8発の357マグナム
タングステンカーバイト徹甲弾は的の5ミリ厚の
金属プレート全てをへし折り大穴を穿って貫通した。
『ぐ……凄い威力だ……! 元々ガバメントは反動が
きついけど、こいつはもっと厳しい……』
『だろ? これなら大抵の相手に太刀打ちできるよ。
ただし銃の耐久寿命も威力に比例して、君愛用の
シリーズ70より大幅に短かくなった。
弾丸は80発用意した。これを撃ち尽くした時が
この銃の限界、オーバーホール時期だと思ってくれ』
『わかりました、こいつはいい。相談にのって頂いて
ありがとうございました、大切に使います』
『ああ、健闘を祈るよ』
『はい』
銃をしまい、僕はグアム島を後にした。
仕事上、僕とお嬢様が襲われるのは日常茶飯事だけど、
あの黒い高性能なドッグロボットに襲われてからというもの、
なにやら大きな闘いが近づいている、そんな正体不明の嫌な
予感が日に日に増してきて、焦りと不安がつのる。
そして令和2年 7月のある日、嫌な予感がとうとう現実になった。
リーナお嬢様と僕が巻き込まれた、かつてない最大の闘い
《クリスティーン殲滅戦》が幕を開ける……
第10話 クリスティーンは眠らない に続く
さすが構想実現まで10年近くかかった作品だけあって、プロローグも長くなっちゃったなぁ。
次回新キャラお姉ちゃんが登場して、ロクでもない物騒な国家的大事件にリーナお嬢様たちを巻き込み
まくります。お楽しみに!!




