表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

別のナニカの短編置き場

背後の男

作者: 別のナニカ

なんかまた……ゴメンナサイ


短編シリーズ 第3弾

どうして俺はこんなにも油断するんだろう。

 

「うぉらぁぁぁ!!!」

 

「ぐっふぅぅぅうああああ!!!」

 

 俺の名前は佐々木。背後には最善に気を配らなければ、今みたいに殴られてしまう。

 なぜ狙われているのかはわからない。

 だが狙われているんだ。『背後の男』 に。

 

「いてて……今日も今日とていい拳っすねぇ……あの、そろそろ教えてくれないっすかね。なぜ俺を背後から殴りかかってくるんですか?」

 

 男は答えない。

 不思議なことに、殴るときの「うぉらぁぁぁ!!!」という声以外は全く存在が感じられないのだ。

 後ろを振り向くのも気が引ける。

 もしも振り向いた瞬間に殴られて、歯や鼻が折れてしまう……なんてことを考えれば、そんなことはとうていできない。

 

 そんなわけで俺は、この「うぉらぁぁぁ!!!」の声と、存在しているか分からない男とともに、後頭部を殴られながら1週間近く過ごしている。

 

 そして俺は当たり前のことに気づく。

 

 

 

 鏡を見ればいい!!

 

 

 そうすれば、後ろの謎の正体がわかる。どんなおっさんが俺を執拗に殴ってきているのか、一目瞭然だ。

 

 俺は早速、鏡のある場所へ行く。

 近くにスーパーがある。トイレの鏡を見に行こう。

 

 

 俺はさっそくトイレのドアを開け、鏡を見ようとした。

 

 その瞬間、

 

「うぉらぁぁぁ!!!」

 

「ぐっはぁぁぁららららぁぁあああ!!!!」

 

 

 俺は後頭部をいつもより強めに殴られ、気絶した。

 


 

 

 目が覚めた。場所は変わっていない。おそらく気絶していた時間は、そう長くはなかったのだろう。

 

 そして俺は諦める。背後の正体を暴くことを。

 

 

 これからもきっと、俺は『背後の男』に殴られ続けるだろう。

 その正体を見ることは許されない。そうしようとすれば、さっきのように気絶させられるのだろう。

 

 鏡のない人生。けっこうきついかもしれないが、それもまぁいい。

 

 『背後の男』よ。俺がヘマしたときとか、身だしなみがちゃんとしてないときとか、とにかく、お前にしか見えない俺の欠点を見たとき、

 すぐに俺を殴ってくれ。そして教えてくれよ。

 

 そのときには、今度は俺が、俺自身をちゃんと見つめ直すから。

 

 これからもよろしく。『背後の男』よ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 音の使い方が最高。 これだけで、笑ってしまう自分がいます。 [一言] 人のことを気にして、背後ばかり気にする自分自身を、自我が攻め続ける。 そんな話かと思ったんですけど、合ってますか? 鏡…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ