第一話
「もし良かったら、俺と付き合って……」
「ごめんなさい。」
「お願いだよ。君には俺が似合うと思うよ。だから、ねっ?」
「えっ…ちょ、ちょっと離してくださいっ…
やめてくださいっ…」
彼女は、告白を断ったがその男性が諦めきれない性格のせいか、強請るように迫ってきたのだ。
(力強い…っ。私の力でも振りほどけない…っ)
その男性は、逃げないように必死に彼女の腕を掴んで離そうとしない。
「お願いだから、俺と付き合ってよ。」
「ほんとごめんなさい…っ。無理ですから…っ。」
「なんだと!?俺が付き合おうって言ってるのに断るのか!?」
突然、その男性は彼女を突き飛ばして怒り始めたのだ。
突き飛ばされた彼女は、突然の出来事に驚いた。
「せっかく、俺が告白したのに気持ちも考えずに断りやがってっ!」
激怒した男性は、少し離れたところに捨ててあった木の枝を拾って彼女に向かって振りかざした。
(ど…どうしよう……怖くて動けない……っ!)
怖くて動けない、殴られると思った瞬間…
バシッ!
「イテテテテテッ!は、離せよっ…!」
「女性に手をあげるなんて、最低な人ですね。」
恐る恐ると目を開けてみると…そこには男性の手を掴んだ男の子がいた。
「なんだ、お前っ!やるのかっ!このっ!」
「危ない…っ!」
ガッ!ドサッ!
「ぐわぁっ!うっ……」
(えっ…今、何が起こったの…?)
男性は、何もできず一瞬にしてやられたのだ。彼女には、何が起きたか分からなかった。
「くそっ…お、俺はその子と付き合いたいと思っただけなのによ…」
男性は、倒されて横になったまま泣きながら悔しがっていた。すると、男の子が口を開いた。
「手を出す乱暴なあなたとは、付き合いたくないですよ。ここにいる彼女だって、怯えてるじゃないですか。」
「くそっ…お前が悪いんだからなっ!覚えてろよっ!」
男性は、観念したのか捨て言葉を残して走り去って行った。男性の背中を見送った後、男の子は彼女の方に振り返った。
「大丈夫ですか?怖かったですよね…怪我、してませんか?」
男の子は、少し屈んで彼女に問いかけた。
「あ…怪我はどこも…いた…っ」
大丈夫と言おうと思った途端、手首が痛んだ。その声を聞いた男の子が制服のボタンに手を掛けた。
「えっ…あ、ちょ…ま…っ!」
「ちょっと、失礼しますね。見るだけですから、我慢しててください。」
男の子はボタンを外して、袖を捲り上げたのだ。その大胆の行動に彼女はただ混乱していた。
「痣になってますね。あと少し、引っ掻き傷が……。腕を思いっきり掴まれたりしましたか?」
「せ、迫られた時に力強く腕を掴まれて…その後に突き飛ばされた…かな…」
「そうですか……手当てしたいので一緒に来てくれますか?」
男の子は、彼女の手当てをしたいと一緒に来てくれるかと言ったのだ。その言葉に彼女は…
「たいした事ないから…だ、大丈夫…」
怖い出来事の後のせいか、たいした怪我ではないと言い張って強がってしまう。そんな彼女に男の子は手を取って…
「怖がらなくて大丈夫ですよ。手当てをするだけですから。」
男の子は、怯える彼女を安心させるように手を握って大丈夫という言葉を繰り返す。
暫くして、彼女はその言葉を聞いて信用したのかそっと口を開く。
「……じゃあ…お願いしてもいいかな…?」
「はい。もちろんです。」
男の子は、嬉しそうに答えた。そして彼女に手を差し伸べた。
「立てますか?良かったら、俺の手を取っていいですよ。」
「あ、ありがとう……」
彼女は、お礼を言い男の子の手を取った。
「もし、嫌じゃなかったらこのまま手を握ったままでも大丈夫ですか?」
「えっ…手を握ったまま…?」
思わぬ発言に戸惑う彼女。嫌ではないと言いたい気持ちもあったが恥ずかしい気持ちもあった。どう答えようか迷っていた。
「初対面の人に手を握られて、一緒に歩いて行くなんて嫌ですよね。ごめんなさい。変な事言って。」
彼女のことを思って言ったのか、悪いと思い男の子は手をそっと離した。その行動に彼女が…
「あ、い、いや…そんな事…」
そんな事はないと言ったが、既に手を離されてしまっていて遅かった。
「じゃあ、行きましょうか。何かあれば言ってくださいね。
「あ、…はい。」
彼女は、男の子の圧倒的な言葉、行動に戸惑いながらも一緒に並んで歩いて行った。




