第84話 絶対的圧力
大きなテーブル、液晶画面に投票タイムの表示、そして10人分の椅子。ここがランク7なのは間違いないようだ。
扉が三つあるが、これは……。
『そちらの扉はどこから入ってもすべて繋がっておりますので好きな所からどうぞ。投票箱は一定時間経つ、もしくは誰かが投票する度に移動しますのでお気をつけください。』
「これ、もう始まってるのか?」
『はい、既に開始されております。』
それを聞いた途端に4人のプレイヤーがそれぞれ選んだ扉から投票箱を探しに行く。
「あんたは行かないのか?」
「……」
フードで顔を完全に隠し席に着いたまま動かないプレイヤーに無視をされ、ため息を吐いてからメンバー4人に声をかけてレン達も出発する。
「と、スタートしたのは良いがどっちへ行けば……。」
「そうだね、レンくん。僕の勘だとあっちだよ。」
「お、神様が言ってる方向と同じだよ〜!」
幸運なカムイと、神様の声を聞いてるらしいニーシャの意見が被るって事はそっちに本当にありそうな気がしてくる。
こういう事では頼もしいな、この2人。
×××
と、あっさり1回目の投票箱が見つかってしまい、この2人本当にヤバすぎると少し引き気味のレン。
「それで最初に誰が投票する?」
「まずはナナカちゃんでいいかな?体力が持つか不安なんだ。」
「それもそうだな。」
投票箱に近づくと『2』の数字が表示されていた。
「なんの数字だ?これ。」
「わかりませんが、何か意味があるんだと思います。ご主人様。」
まだメイにご主人様と呼ばれるのに慣れないレンは少し戸惑う。
「深く考える必要はないんじゃないかな。ナナカちゃんが投票して数字が増えれば投票された数、減れば残り投票できる数だって事だよ。」
「出来れば後者であってほしくないんだが……。ナナカちゃん頼んだよ。」
「う……うん。」
投票箱に投票をすると、数字が『3』になり投票箱が消える。
「はは。前者だったね。よかったよ。」
「確かにな。けど、つまりもう既に2人投票してるって事か?」
「そうなるね。」
「おーっと、見っけたぜ。ファミリア。」
大柄の男がレン達の後ろに現れる。投票箱のあった場所は行き止まりで、完全に追い込まれた状態になる。だが、5対1。相手がよほど強くない限り、レン達が有利なのは言うまでもない。
「あらかたチームの組める俺らに投票じゃ勝てる可能性が低いから、足止め兼ね殺せたら殺そうって所だろう。」
「実に合理的な行動ですね。それでは、私が……。」
「いや、みんなは投票しに行ってくれ。」
「ご主人様も投票はまだですよね?」
「どうせ投票したら箱は移動するんだ。なら全員で行動する意味もないだろ?足を引っ張ってばかりのリーダーじゃいられないんだ。」
レンは今までの自分ではいけないと思い、その手始めとして引き受けようとしているのだ。
「じゃあ、レンくん。後で迎えに来るよ。」
「あんまり遅いと昼寝しちまうからな?そうだな……10分、いや5分で終わらせる……っ!」
「はは、随分自信満々だね。」
「おっと!行かせるかよ!」
振り上げられた拳をレンの分身が止める。その隙を見て全員が出発する。
「お前の相手は俺だぜ?」
「さっきの5分はお前が始末されるまでの時間でいいんだよなぁ?」
「いいや。始末されるのはお前だ。」
捨てろ甘さを。忘れろ過去を。この世界じゃ、殺し合いの中じゃ、甘さは弱さだ────。
×××
「レンくん大丈夫かな。毎回心配なんだよな。」
「大丈夫ですよ!今の先輩は前の先輩とはちがいますから!私たちで生き残る方法を考えましょう!」
「そうだね。私たちが仲間なのはバレてるだろうから数で潰しに来るとは思うんだけど。私1人で何とか出来るかな……。」
と、まるで私が戦力外なのを前提で話すミホ先輩に私が口を挟む。
「ま、待ってくださいよ〜。私だって戦えますよ?」
「ヒナちゃんが弱いとは言わない。けど、何が起こるかわからない状況であまり無茶はさせられない。レンくんのためにも。」
「そう……ですか。」
ミホ先輩の言うことは間違いじゃない。確かに私は戦えるとはいえ、本当に強い人がいたらすぐ殺されちゃうんだろうな、と思う。
「わかった?だから基本的には自分を守る事だけを……っ!?」
「あの、私たち……囲まれてませんか?」
「そうだね。ヒナちゃん、さがってて。」
ミホも予想はしていたが、ココまであからさまに潰しに来ることを選択されるとは思っていなかった。
プレイヤーは5人、全滅させれば生き残りが確定する。だが、それぞれがミホと同等クラスのレベルを持っており容易に勝てる状況ではないのはヒナでも察せていた。
「女性2人を寄ってたかってとは侍の風上にもおけないでござるな。」
「あぁ!?なんだてめぇ!うぐぁっ!」
ミホ達を囲んでいたプレイヤーの1人が竜巻に襲われたかのように回転しながら宙に舞い、天井へと叩きつけられた。
「では先に、拙者の相手をしてもらうでござる。」
「あなた……どうして!?」
×××
「よーし、じゃあ始めっか。ウルフ!」
「けっ、3人になったからっていい気になんなよ!」
「調子に乗ったりはしないさ。けど、お前くらいなら……!?」
「あ?急に顔が真っ青だぞ?どうしたんだァ?」
彼は気付いていないようだが、レンは気付いていた。
この前に出会った七天王道の気配を感じない彼とは全く逆に意味で狂気じみた。その存在感を。
まるで頭を抑えられてるかのような体の重み、そして首を絞められてるかのような息苦しさ。
これが人の発する圧とは思えないそれは、レンにやばさを悟らせた。
レンは咄嗟に回避行動として、道の奥へと逃げ込んだが次の瞬間には勝負は着いていた。




