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第75話 当たり前

暗殺者メリィ……確か俺やニーシャ、ミホ、チホらと同時期に話題になった暗殺者。

そして、一番にその話題から消えた存在。一説ではただの噂だったとか、捕まったとか。色々言われているが、真実は闇に葬られている。

殺し屋としての俺にある暗殺の知識では計り知れない暗殺技術を、持ち合わせている可能性がある。

俺に勝ち目があるか、なんてのはどうでもいい。ヒナをニーシャをミホ。みんなを生きて帰らせる。

「うふふ。やーっと来た。」

どこから聞こえたのかもわからない声と共に正面から矢が俺目掛けて飛んでくる。


×××


「やっとあなたを殺せるよ。兄さん。」

「ククク。やっと君に僕の力を見せる時が来たんだネ。」

兄さんの能力は包帯を自在に操るといったところかな。それも動きだけじゃなく、硬さや鋭さ、重さまでも変わる。正に自由自在の包帯ってところだね。

偽名(コードネーム)はゴッド、か。君らしいネ。カムイ。」

「僕は神になるんだ。兄さんもその踏み台になってもらうよ。」

「僕が踏み台?カムイもジョークが言えるようになったんだネ。それはそれとしてカムイ。シドウを殺したのは君だよネ?」

「プレイヤー名はトーイだよ、兄さん。その通りだよ。僕がシドウ兄さんも殺したよ。もちろん……」

「踏み台として、だネ。」

そろそろ始めないとかな。時間がない、兄さんの能力を攻略しなきゃならないんだからね。

「お話はここまでだよ。兄さん。」

「ククク……。相変わらず血の気が多いな、カムイは。……守護包帯(パラディンウィップ)。」

金属と金属がぶつかり合ったような音を立て、兄さんを包む包帯に僕のナイフは行く手を阻まれる。

四方八方からの攻撃を守る守備範囲。攻略はかなり難航しそうだ。兄さんを包む包帯が元に戻り、兄さんの元へ戻る。

それと同時に兄さんはまた能力を発動する。

殺人包帯(アサシンウィップ)。」

僕は僕に襲いかかる包帯を受け流し、そのまま兄さんへと全力で接近。ナイフを構え、僕が口を開く。

「兄さんの弱点がこんなにも早くわかって助かったよ。その能力の弱点は同時に2つの使い方を発動出来ない、それと兄さんの元へ戻るまでは次にうつれない、だね。」

「クク……ククク。流石だヨ、カムイ。僕の『ミイラ』の弱点をこんなに早く見破るなんて、驚いたネ。けど、それは僕の弱点じゃないって事に気付くべきだったネ。」

「負け惜しみはやめてくれよ。哀れで手加減しちゃいそうだよ。」

「クク……。ブラックミスト(・・・・・・・)。」

「っ!?」

僕の視界は、兄さんから放出された謎の黒い霧によって奪われた。ブラックミスト……。あの意味のないスキルをなぜ。

「悪あがきのつもりかい?僕にこんなものが……っ!!」

僕の腹部に強烈な痛みが走る。鋭いものではなく、何かで殴られた様な鈍い痛み。これは多分殴ったものなのだろうけど、ただ殴ったんじゃないんだろうね。能力により固めた包帯を手に巻いた、そんな所だろう。

そして霧が晴れて、視界が元に戻る。真っ暗な所から明るい所へ出る事で一瞬、目の前が眩んだが、その程度なら僕に問題はない。

視界が戻っても、そこに兄さんの姿はない。

そして、背後に人の気配。それと首元に感じる殺意。

「しまっ……!」


×××


「キルorタンク。いきなりスタイル『キル』で行きます。」

「おう!ここで勝って、帰ったら晩餐だ!」

「そんな無駄遣いはよくありませんが。そうですね、今回はくらいは許可します。」

キルorタンクはメイの説明だと、キルは戦闘モード。タンクはその場で指定されている主人を全力で守る形態らしい。

キルの戦闘モードってのもこれまた厄介で、かなりスピードとパワーに偏っているらしい。

現に今メイは俺の目じゃ追えない様なスピードで動いている。そこから繰り出される攻撃を確実に受け流してるガキンチョ共はもっとすげぇと思うが。

「俺も負けてらんねぇな!」

男の方に出来た隙を狙って一撃で仕留めるように腰に掛けていた剣を振り上げる。

「!?グレーテル(・・・・・)!!!」

その掛け声に合わせるかのように、数kmの距離から一瞬にして俺の前へと現れては、俺の剣を弾く。

ヘンゼル(・・・・)は……私が守る。」

「くっ!なんつーパワーだ、このガキ!」

「ご主人様!」

「まずは1人!!!」

狙われたのは俺ではなく、俺を助けようとして隙だらけになったメイだった。

「メイ!危ねぇ!」

声よりも早いくらいの勢いで俺は動き出していた。メイを庇う一心で。俺はメイを突き飛ばし、グレーテルと呼ばれていた方のガキを蹴飛ばす。

「うぐぅっ。……っ!このクソガキがァ!」

俺は右腕に鉈を刺してきた、ヘンゼルと呼ばれていたガキを振り払う。運良く腕は繋がっているが、ちょうど骨で引っかかったようで、2分の1くらいまで切り込みが入った状態だ。流石に動くような状態ではない。

「何を……しているのですか、ご主人様!足でまといが、更に足でまといになってどうするのです!」

「足でまといって……おいおい。主が自分のメイド守るのなんか当たり前だろ?何も可笑しくなんてねぇ。」

「ギャハハハハッ!本当にバカだな!おっさん!わざわざそんなの守って右腕犠牲にするとか!」

「……っ!あの子供を直ちに処理します。待っていて……。」

「まあ、待て待て。自分の仇くらい自分で取る。それによぉ、今あいつら……。」

俺の心の奥から痛みすらも忘れる程の、強い怒りがこみ上げてきた。

「メイを馬鹿にしなかったか……?」

「はぁ!?何が悪いんだよ!バカのメイドは所詮そんなもんだな!」




「いいぜ、地獄見せてやる。……『7海の秘宝』!」

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