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第8話 心苦しくも幸せな時間

『レベルアップしました。』

「……っ!?」

「僕の予想通りだね。」

そう言った彼はナイフを男に刺し、少し離れた所に立っていた。

ようするに殺したのは俺じゃない。

なのになんで俺のレベルが。

「最後に触れた人、それが殺したと判定される。そういう仕様っぽいね。」

レベルが11になっている。

こいつの言う通り、そういう判定なんだろう。

……まさか、次は俺を殺す気なんじゃ。

そうだ、レベルが上がったとはいえ振り分けなきゃレベル1と変わらない。

まずい、どうしたら。

「じゃあ、死体は僕が片付けておくから。じゃあね。」

え……?

「お前、俺を殺す気はないのか?」

「当然ないよ。あの時の僕は君を試したんだよ。君は僕の求める通りの人間だった。だから僕は君を殺さない。」

あの時のゲームに勝ったのが、俺の命を救ったのか?

本当に……シーナがいてくれて助かったよ。

「あ、そういえば。僕になんて命令するんだい?」

ゲームに勝った方の特権か。

そんなのもあったな。

こいつ、頭がおかしいやつではあるがルールは守るようだし、性根までは腐ってないのか?

「まあ、そうだな。あえて言うならランク1の間だけでもいい。もう俺に関わるな。」

「ははっ。寂しい事言うね。でも、わかったよ。それがお希望(ノゾミ)ならそうするよ。」

彼はそう言い残し、死体を担いでどこかへと歩いて行った。

それにしても、なんでここにいるってわかったんだ。

やっぱ不気味だな、あいつ。

「レ、レレレ、レンくん!」

「おう、シーナ。おはよう。どうした?そんなに慌てて。」

血相変えてどうしたんだろうか。

怪我とかしてるわけじゃなさそうだし、誰かが来たわけではないようだが。

「おはよう。……じゃなくて!レベルが上がってるの!10も!」

「あ、ああ……。」

俺は部屋へと戻ってから今あった事を説明した。

そうだよな、そりゃいきなり起きたらレベルが上がってりゃ驚きもする。

ガシッと両肩を強く掴まれた。

「大丈夫だった!?あの人に、何もされてない?」

「ああ。大丈夫だよ。この通りかすり傷一つすらない。」

俺は体に傷がないことを確かめさせるように腕をあげたりした。

本当に会ったばかりの俺の事をここまで心配してくれるんだな。

「よかったあ。」

「確かに朝っぱらから殺人見せられたり気分は悪いけどな。悪い事ばっかじゃなかったぞ。」

「本当?」

「おう。もう俺ら人を殺す必要はないんだ。ってまだ殺したことないんだよな。」

そうだ、あいつの情報が本当ならこの周辺で小さな生き物だけを対象にすればいい。

もう人殺しなんて事はとりあえず考えなくて済むんだ。

「そう……なんですね。よかった、もう人を殺さなきゃって考えるのはやめていいんだよね?」

「ランク1の間はな。」

例え同じ命を奪うという行為でも、死んだらもう戻らない人間と、殺しても次の日にはまたいるデータの存在じゃその殺した時の重みが違う。

小さな生き物の命を軽く見ている様に見えるかもしれない。

それでも俺らにとってこれは救いだった。

部屋を調べると弓なんかも出てきて、小さな生き物を殺すための道具はいくつかあった。


俺らはそれから2人で小さな生き物を殺していった。

狩っていった、といえば聞こえはいいかもしれないが、これは狩りとは言えない。

私利私欲に塗れた殺しだ。

俺もシーナも確かに心苦しさはあった。

だが、人を殺さずにレベルを上げ2人で笑い合う時間はとても幸せな時間だった。

この金ってやつがこの世界でのお金なんだろう。

もうかなり溜まっている。

いや、基準がわからないから多いとは言いきれないのか。

2日経ち俺もシーナもレベルが20になっていた。

それなりにステータスも振り分け、もう殺すのはやめようとなったところだ。

その間に2人プレイヤーが減り、残り3人消えたらこのゲームは終わる。

「あの、レンくん。今日、一緒に寝ない?」

「いや待て。急にどうした。」

初めての夜以来、そんな事を言われなかったのに今日いきなりどうして。

「私、怖いんだ。もうすぐこのゲームも終わるでしょ。終わった後、次のゲームでレンくんと出会えなかったら私は、大丈夫なのかなって。」

「大丈夫だろ、俺みたいな奴だって必ずいるはずだ。そんな事心配しなくても大丈夫だ。」

これしか言葉が出なかった。

口ではなんと言えても確信はなかったからだ。

次のゲームがどんなものかもわからない、どんなルールかもわからない。

だけど、これが俺の精一杯の励ましだ。

「それだけじゃなくてね。毎日誰かが死んでる。次は私なんじゃないかって不安になるの。私……生き残れるか────」

「生き残れる。だって君は俺が生き残らせてみせるから。」

その後俺らは同じベッド夜を過ごした。

シーナは落ち着いただろうか、幸せだろうか。

少なからず俺は幸せだった。

色々な意味で幸せな時間を過ごせたと思う。

こんなデスゲームの世界でも信じ合える友達が出来て、お互い助け合える関係が出来た。

予想もしてなかった事だから、余計にそれを嬉しく感じられた。

話は変わるけど、この2日間に2度箱を使用してみたんだが、やっぱり何も起こらなかった。

2度使って何もなかったから「どうせ」と呆れている部分はある。

俺のこの"才能"はいったいどういう意味があるんだろう。

いくらしょぼい力が集まるとはいえ、シーナのように範囲が狭くともワープが出来たりするわけだ。

それなのにただの箱を出す才能なんて、何か妙なんだよな。

俺はそんな事を考えながら眠りに落ちる。




『プレイヤーが減りました。』

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