第7話 レベルアップ
────レベルunknown。
そんな事あるわけない。
一定以上のレベル差がある時のみ表示されるのが、このunknown表示だ。
ここには47期プレイヤー、ようするに同期しかいないはずなんだ。
「おい、説明書。」
『はい、なんでしょう。』
「unknownって大体どのくらいの差でそうなるんだ?」
焦るな、もしかしたら10とかそのくらいでそういう表示になるのかもしれない。
だとしたら奴はそんなに強くはない。
逃げるだけなら余裕なはずだ。
『100ですね。』
……は?
「レベルが100以上違うとunknownって事か?」
『はい。それでは。』
つまりあいつはレベル101以上のプレイヤー?
そんなの……おかしいだろ。
死んだプレイヤーは3人だぞ。
3人殺せば100まで行くのか?そんなわけ……ないだろう。
俺の想像を遥かに超えるやばい存在。
「やはり、いくら雑魚を蹴散らしたとこで私の強化には繋がらないようだ。」
謎の脅威はそう言い残し、また荒れ果てた街の中へと戻って行く。
この荒れ果てた場所はちょうどフィールドの中心。
ようするにやつは来た獲物を殺しているのか。
それにさっきの言葉もおかしい。
いくら雑魚をって事はここにいるプレイヤーを全て例外なくそう言ってるような発言だ。
それってようするにやつは俺らとは別の何かって事なのか。
何もわからない、だがここは離れた方がいい。
「ここを離れよう。」
「そんなにすごいものを見たんですか?」
俺は小さく頷き、何も言わずその場を後にした。
俺らは拠点に戻り、着替えたりシャワーを浴びたりなどした。
寝室は一つでベッドも一つ、これは一緒にベッドでってシチュを夢見たが、そんな勇気が俺になく床で寝るところだ。
「レンくんは本当にベッドじゃなくていいんですか?」
「う、うん。そりゃあね!それに嫌でしょ、見ず知らずの男と同じベッドとか。」
本当はすごく一緒に寝たいです。
当たり前だろ、巨乳で可愛いJKと寝れる機会なんて今後あるかどうか。
「私、レンくんとなら大丈夫ですよ。」
これはお誘いか?俺は急にキメ顔になる。
「ほら、敷布団もないじゃないですか。床に直接寝かすのはなんか悪いなって思って。」
「あ、あははは。それは考えさせてもらうよ。」
今、彼女と寝たら理性が保てる自信がない。
「じゃあ、お話しませんか?寝付けなくて。」
「まあ、それは俺もだし。いいよ。」
デスゲームに参加する時はこんな事想像もしてなかった。
誰もが疑い、誰もが騙す、そんな殺し合いだけの起きる世界だと思っていた。
実際この世界に来てみると、俺自身殺すって事に恐怖を覚えた。
「その、昼間はありがとうございます。何度も助けてもらって。」
「俺らは協力しあってるし、それに俺だって助けられた。お互い様だよ。」
実際、あいつとのゲームはシーナがいなきゃまず負けてただろう。
俺はこの世界に来て、もしかしたら多少運が良くなったのかもな。
「てか、普段からそういう喋り方なの?ほら、敬語でさ。」
「あ、いえ。友達とかと話す時は普通に話しますよ。」
「じゃあ、普通でいいんじゃない?」
「え?」
まだ1日だけの付き合いだけど、お互い協力してここまで来れた。
それは仲間ってやつで、けどそれがもしこの世界じゃなかったら……。
「俺らもう友達だろ?」
「それも……そうだよね。もしかしたらこうやって話せるのはレンくんで最後かもしれないですもんね。ゆっくり直していきますね!」
ぐぅ……。やっぱりいい子、可愛い。
こんな子が嫁に欲しい。
「けど、一つ訂正だ。君は必ず俺が生かしてみせる。一緒に生き残るんだ。」
「……うん。無茶だけはしないでね。」
多少の無茶はするさ。
というか、こんな"才能"だ。
多少の無茶はしなきゃ自分の身すら守れないだろう。
「ああ。約束する。」
だけど、口だけでも無茶はしない。
そう言っておこう。
「じゃ、じゃあそろそろ寝ましょう!」
「そ、そうだな!今日は疲れたし!」
お互い冷静になって気付いたか、かなり恥ずかしい会話をしていた気がする。
その後も会話が頭に焼き付き、寝るのに苦労した。
朝目覚めると一つの通知が来ていた。
『プレイヤーが減りました。』
これで4人目、後6人でこのゲームも終わりか。
俺らが寝てる夜の間でも殺し合いをしてる奴はいる。
あいつは生きているんだろうか。
生きてんだろうな、しぶとそうだしあいつ。
俺はそんな事を思いながら外へ出ると。
「やあ、おはよう。」
俺はバタンっと勢いよくドアを閉める。
「寝ぼけてるんだろうな、あんま寝てないし。」
俺はそう言って顔を両手でパンパンと叩いて、もう1度ドアを開ける。
「酷いなあ、せっかく差し入れ持ってきたのにさ。」
「はあ、出来れば見間違いであってほしかった。それと差し入れって……!?」
人だった、口を封じられ縛られた人間。
まだ生きているようだ、けど人1人を縛って持ってくるなんて。
俺は恐る恐る彼のレベルを見るとレベル6。
「まさかの夜のって。」
「あー、それ僕だよ。僕が殺ったんだ。レベル1のプレイヤーを1人殺したらレベルが6になった。経験値の基準はわからないけど。非常に興味深いね。」
こいつはやっぱり狂ってやがる。
「そ、それで。俺への差し入れって。」
「彼に触れていてほしい。それだけだよ。」
それだけか、変に逆らって同じ目にあっても嫌だしな。
俺は縛られた男に触れる。
どうやらレベルは3のようだ。
「あれ、この人レベルが……。」
「それは虫とかを殺したらしいよ。どうやら生き物を殺せば経験値になるらしいんだ。まんまRPGだね。」
そんな方法でもレベル上げが出来るのか。
そうだよな、どう考えても減る数が少ないと思ったんだ。
それじゃあ大きなレベル上げには繋げられない、と。
生き物を殺す、か。
あまり気は進まないが、生き物はVRの存在だし人を殺すよりはマシだよな。
そんな事を考えていると、俺の視界に飛び込んできたのは血飛沫。
そして、数秒後に二つの通知が来た。
『プレイヤーが減りました。』
それと────。
『レベルアップしました。』