理由
オリオンの思い付いたこと
親父はいつ出てくるのか!
まだ出てこないかもしれない!
俺にはなんとなくの心当たりがあった。
何のって?
勿論あの親父のことさ、一週間経って帰ってこないのは流石におかしい。
太陽がおはようと言うよりも早くに
アレスとトリトンを起こした。
神殿は、より神に近い場所と考えられている町の一番高い山に設けられており
神殿への道は町によって異なるものの、俺たちの住む町からは歩いて小一時間ほどの距離がある。
月に一度の"祈りの日"は1ヶ月の終わりと始まりを
深夜から明朝に見立てて行われるので
早朝に神殿に向かうのは何だか変な感じがする。
「ふぁぁぁ…」アレスが欠伸をしたあとに聞いてきた
「オリ兄、なんでこんなに朝早くに神殿に行くの?
確か"祈りの日"以外だと鍵がかかってるんじゃなかったっけ?」
アレスの言う通り神殿は"祈りの日"以外は、各町に二人いる神官が鍵をかけていて
神殿内への立ち入りを禁じられている。
俺は神殿に着くまでの暇潰しも兼ねて
昨晩から考えていた'神殿での親父探索'について話した。
「前に一度、親父が早朝に出掛けるのを偶然見かけたことがあってよ。
こっそり尾行したことがあったんだが、
親父は神殿でやる"祈りの日"でもないのに家を出て神殿に向かった"っぽいんだ"。
っぽいってのは途中で見失ったからなんだが…
…まぁ、親父の浮気性を考えたら
女の人と修羅場になってて帰ってこれなくなってる可能性も無くはないけど、
そんな時でも3日間くらいしたらボロボロになって帰ってきてただろ?」
「…プッ…あははは!」トリトンはそのときの親父の面を思い出したらしかった。
「あの顔はひどかったね」とトリトンが楽しそうに言うと
「僕は父さんの顔よりも、女の人が怒るとこんなに怖いのかとゾッとしたよ」とアレスは返していた。
俺は咳払いを一つして
「つまりだ、一週間帰ってこないのはそれなりになんかあるんだと思う!
そしてそれが、もしかしたら、俺が前に見た
'早朝に神殿に向かったであろう親父'の行動と関係あるかもしれない。
ということで今、俺たちは神殿に親父探しに行くところなんだ!」
と探検のような気分で高揚した口調でアレスの質問に答えた。
不思議と色々話していると目的地までの道程は短く感じるもので
もう太陽は空に上り、見えはじめた神殿の周りをまるで祝福するかのように照らしている。
歩き、進み続けていくと
とある異変にすぐ気付いた。
町の一番高い山と言うこともあり、また
'神殿の鍵が壊れていること'もあってか
空気はどこか、ひんやりと冷たくそして重たく三人の体に乗り掛かってきた。